一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の許可を受けた事業者には、毎年欠かさず国へ提出しなければならない報告書があります。それが「事業報告書」と「事業実績報告書」です。名前がよく似ているうえ、提出期限も内容もまったく違うため、「片方だけ出していた」「毎年出す書類だと知らなかった」というケースは決して珍しくありません。この記事では、事業報告書について、対象になる事業者・提出期限・様式の入手方法・書き方・作成手順まで、法令と各運輸局の公表資料をもとに行政書士が整理します。
なお、様式や提出方法の運用は運輸局・時期によって異なることがあり、法令も改正されます。実際に提出される際は、必ず所管の運輸支局・運輸局の最新の案内をご確認ください。この記事でも、断定できない点は「要確認」として率直に書いています。
この記事の要点(先に結論)
- 報告書は2種類あります。決算の内容を報告する「事業報告書」と、輸送実績を報告する「事業実績報告書」です。
- 事業報告書の期限は、毎事業年度の経過後100日以内。決算月によって期限が変わります。
- 事業実績報告書の期限は、決算月に関係なく毎年7月10日まで(前年4月1日〜3月31日の実績)。
- 対象は、事業規模や法人・個人を問わず、一般貨物自動車運送事業を経営しているすべての事業者です。
- 報告をせず、または虚偽の報告をした場合、100万円以下の罰金の対象と定められています(貨物自動車運送事業法75条12号)。
- 2028年6月までに、トラック運送事業の許可は5年ごとの更新制へ移行します(令和7年6月11日公布の改正法)。日ごろの法令遵守が、これまで以上に問われるようになります。
この記事の目次
一般貨物自動車運送事業の事業報告書とは?対象事業者と提出義務を確認
貨物自動車運送事業における事業報告書の目的
事業報告書は、貨物自動車運送事業報告規則にもとづき、運送事業者が毎年、国へ提出することが義務づけられている報告書です。根拠は貨物自動車運送事業法60条1項(報告の徴収)にあり、国が事業の適正な運営状況を把握するために設けられた仕組みです。任意の提出物ではなく、法令上の義務である点をまず押さえてください。
根拠条文の原文を見る(貨物自動車運送事業報告規則2条)
(事業報告書及び事業実績報告書)
第二条 貨物自動車運送事業者(貨物軽自動車運送事業者を除く。)は、次の表の第一欄に掲げる事業者の区分に応じ、同表の第二欄に掲げる国土交通大臣又はその主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局長(以下「所轄地方運輸局長」という。)に、同表の第三欄に掲げる報告書を、同表の第四欄に掲げる時期に提出しなければならない。
2 前項の事業報告書は、事業概況報告書(第一号様式)並びに貸借対照表、損益計算書及び次に掲げる財務計算に関する明細表とする。
一 一般貨物自動車運送事業損益明細表(第二号様式)
二 一般貨物自動車運送事業人件費明細表(第三号様式)
3 第一項の事業実績報告書は、貨物自動車運送事業実績報告書(第四号様式)とする。
貨物自動車運送事業報告規則 第2条(2026年7月時点) ※100日以内・7月10日という提出期限は、条文本体ではなく、条文に付された表の第四欄で定められています。
ここで最初につまずきやすいのが、報告書が2種類あることです。決算の内容(経営状況)を報告するのが「事業報告書」、1年間の輸送実績を報告するのが「事業実績報告書」です。両者は目的も期限も別なので、片方を出しただけでは義務を果たしたことになりません。違いを整理すると次のとおりです。
| 項目 | 事業報告書 | 事業実績報告書 |
|---|---|---|
| 報告する内容 | 決算にもとづく経営状況(損益・人件費など) | 1年間の輸送実績(車両数・走行距離・輸送量・収入など) |
| 対象期間 | 自社の事業年度(決算期) | 毎年4月1日〜翌3月31日 |
| 提出期限 | 毎事業年度の経過後100日以内 | 毎年7月10日まで |
| 期限の決まり方 | 決算月によって事業者ごとに異なる | 決算月に関係なく全事業者共通 |
つまり、3月決算の会社であれば両方の期限が近い時期に重なりますが、たとえば9月決算・12月決算の会社では、事業報告書の期限と7月10日の実績報告書の期限がまったく別のタイミングで来ることになります。ここが提出漏れの起きやすい理由のひとつです。
一般貨物自動車運送事業・特別積合せ貨物運送事業の対象範囲
近畿運輸局が公表している作成の手引きでは、対象事業者は「一般貨物自動車運送事業を経営している者すべて(事業規模、法人・個人に関係なく)」とされています。車両が少ないから、個人事業だから、という理由で免除されるものではありません。特定貨物自動車運送事業を経営している場合も報告の対象になりますが、事業者の区分によって提出すべき報告書の種類が異なります。条文も「次の表の第一欄に掲げる事業者の区分に応じ」と定めており、実際に各運輸局の様式ページでも、一般貨物用と特定貨物用の様式が分けて掲載されています。自社がどの報告書を出すべきかは、所管の運輸支局または様式ページでご確認ください。
特別積合せ貨物運送を行っている事業者は、提出先の扱いが変わる場合があります。2以上の地方運輸局長の管轄にまたがる100キロメートル以上の運行系統を有する事業者は、国土交通大臣あてに提出することとされています(所轄の運輸局を経由することもできるとされています)。自社がこれに当たるかどうかは、事業計画の内容で判断が分かれるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
貨物利用運送事業の報告書との違い
混同されやすいのが、貨物利用運送事業の報告です。こちらは貨物自動車運送事業法ではなく、貨物利用運送事業法55条1項および同法の報告規則にもとづく別の義務で、「事業概況報告書」と「事業実績報告書」を提出します。期限の考え方は似ており、事業概況報告書は毎事業年度の経過後100日以内、事業実績報告書は毎年7月10日までとされています。
注意したいのは、一般貨物自動車運送事業と第一種貨物利用運送事業を両方行っている場合です。根拠法令が異なるため、報告もそれぞれ必要になり、様式も別に用意されています。各運輸局の様式ページでも、【一般貨物自動車運送事業】と【第一種貨物利用運送事業】が分けて掲載されています。兼業されている場合は、どちらの報告が必要かを最初に整理しておいてください。
一般貨物自動車運送事業の事業報告書の提出期限・提出先
毎年の提出期限は事業年度終了後100日以内
事業報告書は、毎事業年度の経過後100日以内に提出する必要があります。事業年度の終わり、つまり決算日を基準に数えるため、期限は事業者ごとに異なります。たとえば3月31日決算であれば7月上旬ごろが目安になりますが、日数の起算方法によって前後しますので、正確な期限は所管の運輸支局にご確認ください。
一方、事業実績報告書は毎年7月10日までと決まっています。こちらは前年4月1日から3月31日までの期間に係る実績を報告するもので、決算月がいつであっても期限は変わりません。年間の流れを図にすると次のようになります。
管轄の運輸支局・運輸局へ提出する手続き
提出先は、原則として主たる事務所の所在地を管轄する地方運輸局長あてです。近畿運輸局の手引きでも、一般・特定貨物自動車運送事業者は主たる事務所がある地方運輸局長あてとされ、所轄の運輸支局を経由して提出することもできるとされています。実務上は、管轄の運輸支局の窓口へ提出する形が一般的です。
営業所が複数ある場合でも、営業所ごとに提出するものではなく、主たる事務所を基準に考えます。なお、控えに受付印を受けて返却してもらえる取扱いが一般的ですので、提出部数や控えの扱いについては、事前に提出先へ確認しておくとスムーズです。
大阪・近畿運輸局管内で提出する場合の確認ポイント
大阪をはじめとする近畿運輸局管内(大阪・京都・兵庫・奈良・滋賀・和歌山)の事業者は、主たる事務所を管轄する運輸支局が窓口になります。近畿運輸局は公式サイトで、報告書の種類と様式番号を明示しています。具体的には、事業報告書として「事業概況報告書(第1号様式)」「一般貨物自動車運送事業損益明細表(第2号様式)」「一般貨物自動車運送事業人件費明細表(第3号様式)」および貸借対照表・損益計算書、事業実績報告書として「貨物自動車運送事業実績報告書(第4号様式)」が挙げられています。
兵庫県については、運輸支局ではなく兵庫陸運部が窓口とされているなど、府県ごとに窓口の名称が異なる場合があります。提出前に、自社の主たる事務所を管轄する窓口を確認しておいてください。
提出漏れ・記載ミスを防ぐための注意点
未提出・虚偽の報告に定められている罰則
事業報告書・事業実績報告書は、貨物自動車運送事業法60条1項にもとづく報告に当たります。同法75条12号では、この報告をせず、または虚偽の報告をした者は100万円以下の罰金に処すると定められています。さらに同法80条には両罰規定があり、従業者が違反行為をした場合には、法人に対しても罰金刑が科されうるとされています。
また、未提出の状態は、適正化事業実施機関による巡回指導や監査の場面で確認を求められることがあります。行政処分の具体的な内容は「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準」によって定められていますので、詳細は所管の運輸支局にご確認ください。いずれにしても、「出していない」状態を続けるメリットは何ひとつありません。
様式の旧版使用や記入漏れが起こりやすい項目
意外に多いのが、手元に保存していた古い様式をそのまま使ってしまうミスです。様式は改正されることがあるため、作成のたびに国土交通省または所管の運輸局のサイトから最新版をダウンロードするのが確実です。
記入面で漏れやすいのは、次のような箇所です。許可番号や事業年度など表紙の基本情報、兼業がある場合の売上構成比、車両数や従業員数の基準日、そして押印や日付です。特に、決算書から転記する数値と明細表の数値が食い違っていると、窓口で確認を求められる原因になります。
実績がない場合・休止中の場合の報告方法
「今年はほとんど動いていないから提出しなくてよい」と考えてしまうのは危険です。報告義務は、許可を受けて事業を経営していること自体に対して課されているためです。実績が少ない場合でも、その実態を報告するのが基本になります。
一方で、運輸開始前の新規許可事業者の取扱いや、事業を休止している期間の報告方法については、運輸局ごとに案内が異なる場合があります。この点は一律に「こうすればよい」と断定できないため、自社が該当しそうなときは、所管の運輸支局に確認したうえで対応してください。
期限に間に合わないときに管轄運輸支局へ確認すべきこと
決算が確定せず、100日以内の提出が難しくなることもあります。そのようなときに最も避けたいのは、連絡をしないまま期限を過ぎてしまうことです。まずは所管の運輸支局へ早めに連絡し、状況を説明したうえで、いつまでに何を提出すればよいかを確認してください。
過去に提出していなかった年度がある場合も、遡って整理して提出する方法について相談できます。放置するほど資料の収集が難しくなりますので、気づいた時点で動くのが結果的にいちばん負担が軽くなります。
事業報告書・事業実績報告書は、決算書と日々の運行記録を突き合わせる作業が中心で、本業の合間に片づけるには負担の大きい書類です。そら行政書士事務所では、この2つの報告書の作成・提出代行を承っています。必要な資料や費用、進め方は下記のページでご確認いただけます。
事業報告書・事業実績報告書の代行を見る2028年までに導入される「5年更新制」で、報告書の重要性はさらに高まります
令和7年6月公布の改正法で、トラック運送事業の許可が5年ごとの更新制に
ここまで「毎年の義務」として説明してきた報告書ですが、今後はその重みがさらに増します。令和7年6月11日に公布された貨物自動車運送事業法の改正により、トラック運送事業の許可に5年ごとの更新制が導入されることが決まったためです。国土交通省近畿運輸局が公表している資料でも、「トラック運送事業の許可は、5年ごとに更新を受けなければ、効力を失う」と明記されています。
施行時期は公布後3年以内、つまり2028年(令和10年)6月までとされています。あわせて、許可基準に「法令の規定を遵守して事業を遂行することが見込まれること」が新たに追加されます。同資料では、輸送の安全確保、社会保険料の納付、適正原価の収受をはじめ、法令の規定を遵守しない場合は事業許可の更新がなされない、という考え方が示されています。労働者の適切な処遇の確保も、更新の要件に含まれるとされています。
これまでの一般貨物自動車運送事業の許可は、一度取得すれば期限のないものでした。それが、5年ごとに「法令を守って事業を続けてきたか」を確認される仕組みへ変わる、ということです。なお、更新事務の一部は独立行政法人が担うことができるとされていますが、その詳細や具体的な審査方法は今後3年以内を目途に決定されるとされており、現時点では確定していません。
事業報告書の提出状況は、巡回指導の指導項目に入っている
では、日ごろの法令遵守はどこで確認されているのでしょうか。その中心にあるのが、貨物自動車運送適正化事業実施機関(各都道府県のトラック協会)が行う巡回指導です。これは貨物自動車運送事業法38条・39条にもとづく指導で、運輸支局が行う監査とは別のものです。
この巡回指導の指導項目には、「事業報告書及び事業実績報告書を提出しているか」という項目が含まれています(本社の巡回指導で確認されます)。つまり報告書の未提出は、罰則の対象になりうるというだけでなく、日常的な確認の場ではっきりと記録に残るということです。
巡回指導の結果は、A〜Eの5段階で総合評価されるとされています。評価の低い事業者には重点的に再度の指導が行われ、悪質な場合には運輸局へ報告されて監査の端緒になることもあります。適正化事業実施機関そのものに行政処分の権限はありませんが、そこから監査・行政処分へつながる経路があるという点は押さえておく必要があります。評価区分の詳しい運用は、所属されているトラック協会にご確認ください。
先行導入された貸切バスでは、行政処分歴が更新に直接影響しています
更新制は、トラックが初めてではありません。貸切バス(一般貸切旅客自動車運送事業)では、2016年の軽井沢スキーバス事故を受けた道路運送法の改正により、平成29年(2017年)4月1日から5年ごとの更新制がすでに導入されています。先行事例として参考になります。
貸切バスの更新で実際に効いているのが、行政処分の履歴です。国土交通省の通達では、更新許可が受けられない条件の一つとして、前回許可時から更新申請時までの間に法令違反による輸送施設の使用停止処分以上または使用制限(禁止)の処分を受け、かつ更新許可申請時までに認定された事業者による運輸安全マネジメント評価を受けていない場合、が挙げられています。
ここで見逃せないのが、この処分には貨物自動車運送事業法の違反による処分も含まれるという点です。独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)の案内でも、貸切バスを兼業している事業者に対して、貨物・乗合・乗用における処分も該当するとして注意が促されています。日ごろの法令遵守が、後の更新の可否に直結する構図になっているわけです。
なお、貸切バスの巡回指導を行う適正化機関にも、行政処分の権限はありません。ただし、悪質な違反が確認された場合は運輸局へ通報・速報され、監査、そして行政処分へとつながります。その処分が更新に影響する、という流れです。また、貸切バス事業者安全性評価認定制度(セーフティバス)で一定の評価を得ている事業者は、更新時の法令試験が免除される取扱いがあるとされており、日ごろの評価が手続きの負担を軽くする例にもなっています。
ひとつ正確にお伝えしておきます。「巡回指導の評価が一定以上なら更新できる」という形で、巡回指導の評価そのものが更新審査の基準として公表されているわけではありません。公表資料から確認できるのは、行政処分の履歴が更新の可否に直接効くこと、そして巡回指導がその処分につながる経路にあることです。トラックの更新制についても、具体的な審査方法は今後の政省令等で定まるため、現時点で断定できる段階にはありません。
更新制に向けて、いまから積み上げておきたいこと
詳細が固まるのを待つ必要はありません。求められる方向性ははっきりしているからです。輸送の安全確保、社会保険料の納付、労働者の適切な処遇、そして法令にもとづく報告義務の履行。いずれも、今日から積み上げられるものばかりです。
いまから積み上げておきたいこと
- 事業報告書・事業実績報告書を毎年、期限内に提出する
- 受付印のある控えを、年度ごとに整理して保管する
- 過去に未提出の年度があれば、運輸支局に相談して整理しておく
- 巡回指導で指摘された事項は放置せず、改善して報告する
- 社会保険・労働保険の加入状況を確認しておく
- 点呼記録・日報・運転者台帳など、日々の帳票を整える
特に報告書は、「毎年きちんと提出してきた」という事実が、受付印のある控えとして年数分積み上がっていく、数少ない客観的な記録です。更新制が始まってから慌てて過去を取り繕うことはできません。逆にいえば、いま提出を続けておくことが、そのまま将来の備えになります。
5年更新制の導入により、毎年の報告を確実に積み重ねておくことの意味は、これまで以上に大きくなります。そら行政書士事務所では、事業報告書・事業実績報告書の作成と提出の代行に対応しています。過去に提出できていない年度の整理についてもご相談ください。
報告書の作成・提出代行を見る事業報告書の様式を入手する方法|国土交通省・運輸局・トラック協会
事業報告書の最新様式を確認する重要性
様式は、国土交通省および各地方運輸局の公式サイトで公表されており、PDF版とExcel版の両方が用意されています。前述のとおり、様式は改正されることがあるため、作成のたびに最新版を取得してください。参考として、公式の配布ページを挙げます。
- 国土交通省「一般貨物自動車運送事業」(事業報告書・事業実績報告書のPDF版/Excel版)
- 近畿運輸局「公示・通達・各申請書の様式等のダウンロードコーナー」
- 関東運輸局「事業報告書、事業実績報告書の提出について」
掲載場所や内容は各運輸局の運用によって変わることがあります。提出先が上記以外の運輸局の場合は、その運輸局の公式サイトをご確認ください。
エクセル様式を使って作成する際の注意点
Excel版は、計算式が入っている箇所があり、手入力より集計ミスを減らせるのが利点です。ただし、いくつか注意点があります。まず、セルの計算式を上書きしてしまうと合計が合わなくなること。次に、単位(千円単位か円単位か、キロメートルかなど)を取り違えると全体の数値がずれること。そして、印刷して提出する場合にレイアウトが崩れていないかを必ず確認することです。
作成後は、画面上だけでなく印刷イメージで見直すことをおすすめします。合計欄が空欄のまま、桁が1つずれている、といったミスは、印刷して初めて気づくことが少なくありません。
トラック協会が提供する書式・作成支援の活用方法
各地のトラック協会では、様式のひな形や記入例を掲載していたり、会員事業者向けに協会経由での提出を受け付けていたりする場合があります。協会経由の場合、支局への提出期限より早い締切が設定されていることもあるため、利用される場合は所属協会の案内を必ず確認してください。
協会の記入例は実務的で参考になりますが、あくまで補助資料です。最終的な様式と期限は、所管の運輸局・運輸支局の案内が基準になります。
一般貨物自動車運送事業の事業報告書の記載内容と記載のポイント
表紙に記載する事業者情報・許可番号・事業年度
まず整理するのが基本情報です。事業者の氏名または名称、住所、代表者名、そして許可書に記載された許可番号を記入します。あわせて、どの事業年度についての報告なのかを明記します。提出先の区分(国土交通大臣あてか、地方運輸局長あてか)を選ぶ欄がある様式もありますので、自社がどちらに当たるかを確認して記入してください。
許可番号が分からない場合は、許可書のほか、管轄の運輸支局や適正化事業実施機関に問い合わせることで確認できます。毎年使う情報なので、社内で分かる場所に控えておくと以後が楽になります。
事業概況・輸送実績・事業実績の書き方
事業概況報告書(第1号様式)では、会社の基本的な情報に加え、経営している事業の内訳を記載します。一般貨物自動車運送事業とそれ以外の事業を分け、全体を100とした場合の売上構成比を示す形が基本です。運送業のほかに倉庫業や利用運送などを兼業している場合は、この区分が後の明細表とも連動します。
事業実績報告書(第4号様式)では、1年間の輸送実績を記載します。車両数や走行距離、実車距離、輸送量、営業収入、交通事故件数といった項目が並びます。これらは決算書からは出てこない数値で、日々の運行記録や日報から集計する必要があるため、作成の負担が大きいのはむしろこちら側です。
トラックの車両数・運行状況・従業員数を記載するポイント
車両数や従業員数は「いつ時点の数か」という基準日の考え方が重要です。年度末時点の数を書くのか、期間中の延べ数を書くのかで、記入すべき数値がまったく変わります。様式の各欄には注記が付いていますので、思い込みで埋めず、欄ごとの定義を確認しながら記入してください。
運行状況の欄は、車両が実際に稼働した日数の集計が求められます。集計の考え方に迷ったときは、自己流で処理せず、記入要領や所管の運輸支局に確認するほうが確実です。ここを誤ると、後述する経営分析にも使えない数字になってしまいます。
損益計算書・貸借対照表など経営状況の記載
事業報告書には、損益明細表・人件費明細表とあわせて、貸借対照表と損益計算書を添えます。これらは決算で作成したものを用いるため、税理士に依頼している場合は決算書一式を手元に用意すれば足りることが多いでしょう。
手間がかかるのは兼業がある場合です。運送事業とそれ以外の事業で費用を按分し、運送事業分としていくらなのかを整理する必要があります。按分の基準(売上比、車両比、人員比など)は、合理的な説明ができる形で一貫させることが大切です。毎年基準が変わると、数値の推移が比較できなくなってしまいます。
事業報告書を作成する手順|必要書類から提出まで
作成前に集めるべき経営・運送実績の資料
作成に入る前に、必要な資料をそろえておくと一気に進みます。具体的には、決算書一式(貸借対照表・損益計算書・勘定科目内訳明細書など)、給与や人件費が分かる資料、車両の一覧(年度末時点の保有状況が分かるもの)、運行記録や日報などの輸送実績が分かる資料、そして前年提出した報告書の控えです。
特に前年の控えは価値があります。記載方法の前例が分かるうえ、数値の前年比を確認することで、桁違いなどの単純ミスに気づきやすくなるためです。控えが手元にない場合、これを機に保管方法を決めておくことをおすすめします。
明細表と決算書を照合して数値を整理する方法
作成の中心になるのが、決算書の数値を様式の区分に置き換える作業です。損益計算書の科目と、様式が求める区分は完全に一致していないことが多いため、どの科目をどの欄に入れるかを整理する必要があります。
進め方としては、まず運送事業に係る収入と費用を切り分け、次に様式の区分ごとに集計し、最後に合計欄が決算書の数値と整合するかを確認する、という順番が確実です。合計が合わない場合は、按分の漏れか、二重計上か、区分の取り違えのいずれかであることがほとんどです。
事業を開始した年度の報告で注意したい点
許可を取得して事業を開始した最初の年度は、特に注意が必要です。事業年度の途中から運輸を開始しているため、期間の取り方や実績の集計方法で迷いやすく、そもそも「初年度から報告が必要なのか」という点に確信が持てないまま時期を逃してしまうことがあります。
この点は運用に関わる部分ですので、初年度の取扱いについては所管の運輸支局に確認するのが確実です。許可取得直後は他の手続きも重なる時期ですから、年間スケジュールに報告書の期限を書き込んでおくと安心です。運送業を経営されている方向けの手続き全般については、運送業を経営している方向けのご案内もあわせてご覧ください。
提出前に確認するチェックリスト
提出前の最終確認
- 最新の様式を使っているか(保存していた古い様式ではないか)
- 対象となる事業年度・対象期間が正しいか
- 許可番号・事業者名・代表者名に誤りがないか
- 合計欄が決算書の数値と整合しているか
- 単位(千円・円・キロメートルなど)を取り違えていないか
- 車両数・従業員数の基準日が様式の定義どおりか
- 貸借対照表・損益計算書など添付書類がそろっているか
- 控え用の部数を用意したか(受付印をもらう分)
- 提出先(運輸支局・運輸局)と提出方法を確認したか
兼業がある場合の按分や、日報からの輸送実績の集計は、慣れていないと想像以上に時間がかかります。そら行政書士事務所では、決算書と運行記録をお預かりして、事業報告書・事業実績報告書の作成から提出までを代行しています。対応内容・費用・必要な資料は下記のページに明記しています。
代行サービスの詳細を見る一般貨物運送業の経営に事業報告書を活かす方法
輸送実績から売上・実車率・車両稼働率を見直す
報告書は「出して終わり」の書類と思われがちですが、集計した数値は経営を見直す材料になります。たとえば、走行距離に対する実車距離の割合を見れば、空車で走っている割合が把握できます。保有車両数に対して実際に稼働した日数の割合を見れば、遊んでいる車両がないかが見えてきます。
これらは、毎年同じ様式で集計するからこそ、前年と比較できる指標になります。1年分では単なる数字ですが、3年分並べると自社の傾向が見えてきます。
経営概況を可視化して事業計画と資金繰りに役立てる
損益明細表や人件費明細表は、運送事業に絞った収支を整理したものです。決算書全体では見えにくい「運送事業単体での利益構造」が把握できるため、車両の増減や人員計画、運賃交渉の検討材料になります。
燃料費や人件費が売上に占める割合の推移を追うだけでも、値上げ交渉や配車の見直しを判断する根拠になります。せっかく手間をかけて作る書類ですので、提出後に一度、自社の数字として読み返してみてください。
巡回指導・監査・将来の更新に備えて控えを保管する
提出した報告書の控えは、義務を果たしてきたことを示す記録そのものです。前述のとおり、巡回指導では報告書の提出状況が指導項目に含まれていますので、受付印のある控えが年度ごとに整理されていれば、確認もスムーズに進みます。
加えて、2028年6月までに導入される5年更新制を見据えると、控えの保管はこれまで以上に意味を持ちます。事業を譲渡・承継する場面でも、過去の報告内容は重要な資料になります。紙のファイルに綴じるだけでなく、スキャンして保存しておくと安心です。
一般貨物自動車運送事業の事業報告書に関するよくある質問
事業報告書は電子申請・郵送・持参のどれで提出できる?
従来は、管轄の運輸支局の窓口へ持参する方法と、郵送による方法が一般的でした(郵送の場合、控えの返送用封筒を求められることがあります)。加えて、国土交通省は自動車運送事業に関する手続のオンライン化を進めており、令和7年12月1日から本格的な運用が始まり、令和8年4月1日開始分を含めて140手続がe-Gov電子申請の対象とされています。
ご自身の提出しようとしている報告書がオンライン申請の対象に含まれるかは、国土交通省が公表している「オンライン申請対象手続一覧」で確認できます。運用は今後も変わりうるため、最新の取扱いは所管の運輸支局にご確認ください。
個人事業主の運送事業者も提出が必要?
必要です。近畿運輸局の手引きでは、対象事業者は「事業規模、法人・個人に関係なく」一般貨物自動車運送事業を経営している者すべてとされています。法人と比べて決算書類の形式が異なるため、どの資料を添付すべきかで迷う場合は、所管の運輸支局に確認してから作成すると確実です。
一般貨物と利用運送事業を兼業している場合はどう報告する?
根拠となる法令が異なるため、それぞれについて報告が必要になります。一般貨物自動車運送事業は貨物自動車運送事業報告規則にもとづく報告、貨物利用運送事業は貨物利用運送事業法にもとづく報告で、様式も別に用意されています。あわせて、費用や収入を事業ごとに按分する作業が発生しますので、決算段階から区分を意識しておくと作成が楽になります。
2028年からの更新制で、過去の報告書の提出状況は影響しますか?
更新の具体的な審査方法は今後の政省令等によって定まるため、現時点では明らかにされていません。ただし改正法では、許可基準に「法令の規定を遵守して事業を遂行することが見込まれること」が追加され、法令の規定を遵守しない場合は更新がなされないという考え方が示されています。報告書の提出は法令上の義務であり、巡回指導の指導項目にも含まれていますので、日ごろから期限内に提出しておくことが確実な備えになります。
記載例や相談先はどこで確認できる?
まずは所管の運輸局・運輸支局が公表している様式と記入要領、次に所属されているトラック協会の記入例が参考になります。判断に迷う点は、窓口に直接確認するのが最も確実です。作成そのものを外部に任せたい場合は、運送業を扱う行政書士に相談する方法もあります。
大阪府箕面市を拠点に、運送業許可と許可後の各種手続きを扱う行政書士事務所です。事業報告書・事業実績報告書の作成と提出の代行に対応しています。「期限が迫っている」「何年か提出できていない」といったご相談も承ります。
報告書の作成・提出代行を見るお問い合わせはこちら / お電話:070-8556-0921
