一般貨物自動車運送事業(運送業許可)とは?要件・流れ・費用を行政書士が解説

「運送業を始めたいが、何から手をつければいいのか」——トラックで荷物を運ぶ事業(一般貨物自動車運送事業)を始めるには、国土交通大臣の許可が必要です。この記事では、許可とは何か、どんな要件があり、どのくらいの費用と期間がかかるのか、そして許可を取った後に何をするのかまでを、法令や公示などの一次情報にもとづいて整理します。個別の各要件の詳しい解説は別記事にゆずり、ここでは全体像をつかんでいただくことを目的としています。

この記事の要点(先に結論)

  • 他人の荷物を、有償で、自動車を使って運ぶ事業には、国土交通大臣の許可が必要です(貨物自動車運送事業法第3条)。
  • 無許可で経営した場合、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と定められています(併科あり)。法人にも罰金が科されます。
  • 許可の要件は「人」「物(車両・施設)」「資金」「法令遵守」の4区分で整理できます。車両は原則5両以上です。
  • 許可までの標準処理期間は、補正や再試験の期間を除いておおむね3〜5か月です(近畿運輸局の案内)。
  • 登録免許税は12万円。このほか、事業を続けるための自己資金を申請日から許可日まで常時確保しておく必要があります。
  • 許可を受けた後も、毎年の事業報告書(事業年度経過後100日以内)と事業実績報告書(毎年7月10日まで)の提出が必要です。
  • 現行では許可の定期的な更新はありませんが、5年ごとの更新制が導入される予定です(遅くとも2028年6月11日まで/政令は2026年7月時点で未公表)。
目次

一般貨物自動車運送事業(運送業許可)とは

「運送業許可」と呼ばれるものの正式名称は、一般貨物自動車運送事業の許可です。他人からの依頼を受け、有償で(運賃をもらって)トラックなどの自動車で貨物を運ぶ事業がこれにあたります。こうした事業を経営しようとする者は、貨物自動車運送事業法(以下「法」といいます)第3条により、あらかじめ国土交通大臣の許可を受けなければなりません。

根拠条文を見る(法第3条・許可)

第三条 一般貨物自動車運送事業を経営しようとする者は、国土交通大臣の許可を受けなければならない。

出典:貨物自動車運送事業法 第3条(国土交通省「一般貨物自動車運送事業等に係る法令試験条文集」/令和6年5月15日法律第23号改正後)

許可が必要になる3つの条件

ある運送が許可の対象になるかどうかは、次の3つをすべて満たすかで考えると整理しやすくなります。

  • 他人の需要に応じるものか(自社の荷物を自分で運ぶだけなら、原則として許可は不要です)
  • 有償か(運賃・料金を受け取って運ぶか)
  • 自動車(三輪以上の軽自動車・二輪車を除く)を使うか

この3つがそろう運送を反復・継続して行うと、許可が必要な「一般貨物自動車運送事業」に該当します。自分の荷物を運ぶだけの自家用(いわゆる白ナンバー)との違いは、判断を誤りやすいところです。詳しくは白ナンバーと緑ナンバーの違いを解説した記事で扱っています。

無許可で始めるとどうなるか

許可を受けずに一般貨物自動車運送事業を経営した場合、法第70条第1号により3年以下の拘禁刑(改正前の「懲役」)または300万円以下の罰金の対象となり、両方が科されること(併科)もあります。さらに、違反行為をしたのが法人の従業員などであるときは、行為者だけでなくその法人にも罰金刑が科されます(両罰規定・法第80条)。「知らなかった」では済まされないため、該当するかどうかの見極めは慎重に行う必要があります。

許可の主な要件【概要】

許可の基準は法第6条に定められ、その具体的な内容は各地方運輸局が示す「公示基準」で明らかにされています。実務では、これらを人・物・資金・法令遵守の4つの視点で整理すると理解しやすくなります。ここでは要点だけを示します。

区分主に確認されること
人(人的・人員)役員などに欠格事由がないこと、必要な人数の運転者の確保、運行管理者・整備管理者の選任、役員の法令試験 など
物(施設・車両)営業所・休憩睡眠施設・車庫の確保、原則5両以上の事業用自動車 など
資金事業を続けるために必要な資金の計画と、自己資金の確保
法令遵守・賠償社会保険等への加入、損害賠償能力の確保 など
根拠条文を見る(法第6条・許可の基準/抜粋)

第六条 国土交通大臣は、第三条の許可の申請が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、同条の許可をしてはならない。

一 その事業の計画が過労運転の防止、事業用自動車の安全性その他輸送の安全を確保するため適切なものであること。

三 その事業を自ら適確に、かつ、継続して遂行するに足る経済的基礎及びその他の能力を有するものであること。

出典:貨物自動車運送事業法 第6条(抜粋・第2号ほかは省略)/令和6年改正後

この記事では概要にとどめます人・物・資金それぞれの要件は、実際に準備を進めると細かな判断が必要になります。各要件を掘り下げた解説は、別途「要件の詳細記事」で扱う予定です。準備の全体像を先に知りたい方は、運送業をこれから始めたい方向けのページもあわせてご覧ください。

許可申請から交付までの流れ

近畿運輸局管内を例にすると、申請から事業開始までは、おおむね次のように進みます。

  1. 営業所を置く府県の運輸支局へ、新規許可申請書を提出する
  2. 役員の法令試験を受験する(不合格の場合、原則として2か月後に再試験)
  3. 運輸局による審査(書類に不備があれば、申請から約2か月前後で補正の指示があります)
  4. 許可処分(許可書の発行)
  5. 登録免許税の納付
  6. 運送約款の認可(標準運送約款を使う場合は申請不要)/事業開始前の確認
  7. 事業を開始(許可から1年以内に開始する必要があります)→ 運輸開始届・運賃料金設定届(それぞれ30日以内)

許可までの標準処理期間は、補正や再試験の期間を除いておおむね3〜5か月とされています(近畿運輸局の案内ベース。補正が必要になったり、2回目の法令試験を受けることになった場合は、その分だけ期間が延びます)。手続きの管轄や進め方は運輸局によって異なる部分があるため、実際の申請前に管轄運輸局の最新案内を確認してください。

法令試験について申請の途中には、役員が受ける法令試験があります。これは運行管理者になるための「運行管理者試験」とは別のものです。出題範囲や準備の進め方は、役員法令試験対策のご案内と、法令試験の解説記事で扱っています。

許可取得にかかる費用

費用は大きく、国などに納める法定費用と、専門家に依頼する場合の報酬に分かれます。

  • 登録免許税:新規許可時に12万円(許可の連絡を受けてから納付します。申請自体の手数料はかかりません)
  • 資金要件として確保が必要な自己資金:車両費・人件費・施設費・保険料などを見込んだ、事業を続けるための資金です。金額は事業規模によって変わります。考え方は資金要件の解説ページで整理しています。
  • 行政書士へ依頼する場合の報酬:書類作成や申請の代行にかかる費用です。

なお、運賃・料金のルールは制度改正が進んでいる分野です。国が定める「適正原価」の導入にあわせて、従来の「標準的運賃」を廃止することが国土交通省の資料に示されています。運賃の設定を考える際は、最新の制度動向にも目を向けておくと安心です。

許可を取った後に必要な手続き

許可は「取って終わり」ではありません。事業を始めてからも、継続的な手続きと管理が必要になります。

  • 運輸開始届・車両登録・緑ナンバーの取得:事業用として運行を始めるまでの手続きです。
  • 毎年の報告:事業報告書(毎事業年度の経過後100日以内)と、事業実績報告書(毎年7月10日まで)の提出が義務づけられています。詳しくは事業報告書の解説記事で扱っています。
  • 事業内容を変えるときの手続き:営業所の移転や車両の増減などは、内容に応じて認可・届出が必要です。事業計画変更の解説記事で区分を整理しています。

許可後の各種手続き全般については、既に運送業を営んでいる方向けのページもご用意しています。

個人事業主・事業の譲渡で始める場合

「個人でも許可を取れるのか」というご相談は少なくありません。結論として、個人事業主でも要件を満たせば許可を受けられます。ただし、運転者や運行管理者の確保など、満たすべき要件は法人の場合と基本的に同じです。個人で始める場合の考え方は、個人事業主と運送業許可を扱った記事もご参照ください。

また、既に許可を持つ事業を引き継ぐ「譲渡・譲受」や、法人化に伴う手続きには、それぞれ認可が必要です。営業所・車庫・車両を変更する場合の届出とあわせて、事前に確認しておくとスムーズです。

よくある質問

運送業の許可に更新は必要ですか?

現行の制度では、一般貨物自動車運送事業の許可に定期的な更新はありません。ただし、2025年6月11日に公布された改正法(通称・トラック新法)により、5年ごとの許可更新制が導入される予定です。施行時期は「公布から3年以内」とされ、遅くとも2028年6月11日までに始まる見込みですが、具体的な施行日を定める政令は、2026年7月時点でまだ公表されていません。更新の審査で何をどこまで確認するのかも、この時点では未確定です。今後の国土交通省の公表を注視する必要があります。

この項目は制度改正の途中です「2028年6月11日までに施行」は施行の期限であって、確定した施行日ではありません。年度替わり(4月)での施行も見込まれていますが、確定情報ではありません。最新の状況は国土交通省の公表でご確認ください。
出典・基準日:改正貨物自動車運送事業法(令和7年6月11日公布)/2026年7月時点

許可を受けた事業者を調べる方法はありますか?

許可を受けた一般貨物自動車運送事業者は、原則として管轄の運輸局・運輸支局を通じて確認できます。取引先の確認などで事業者情報を調べたい場合は、管轄運輸局の案内を確認するのが確実です。

行政書士に依頼するメリットは?

運送業の許可申請は、要件の確認、事業計画・資金計画の作成、多数の添付書類の準備など、手続きが多岐にわたります。行政書士に依頼することで、要件を満たしているかの事前確認や、補正への対応を含めて、開業準備を進めやすくなります。ご自身で進める場合も、着手前に一度、要件の見通しを立てておくことをおすすめします。

運送業の許可について相談したい方へ

営業所・車庫の要件や資金の見通しなど、個別の状況に応じたご相談を承っています。まずはお問い合わせください。これから始めたい方は運送業を始めたい方向けのページもあわせてご覧ください。

この記事の著者
そら行政書士事務所 行政書士 田丸 浩史(日本行政書士会連合会 登録番号 26261852)
一般貨物自動車運送事業(運送業)の許可申請、および役員法令試験対策を専門としています。本記事は、貨物自動車運送事業法および国土交通省・各地方運輸局の公表資料など、一次情報にもとづいて作成しています(2026年7月時点)。制度は改正が進んでいるため、実際の手続きの際は最新の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

田丸 浩史のアバター 田丸 浩史 行政書士

大阪府箕面市を拠点とする行政書士。運送業を専門とし、新規許可から各種変更届出・法令試験対策まで大阪府全域に対応。

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