事故が起きたあと、運送事業者がやることは1つではありません。すべての事故について社内に残す「事故の記録」、決まった型の事故だけ運輸支局へ出す「自動車事故報告書」、そのなかでも特に重いものについて24時間以内に入れる「速報」。この3つは対象も期限も別です。さらに、事故を起こした運転者には特別な指導と適性診断が要ります。
この記事では、まず自分の事故がどこに当たるのかを判定できるようにして、そのうえで何をいつまでにやるのかを順に整理します。条文は折りたたみに入れてあるので、必要なところだけ開いてください。
この記事の要点
- 事故の記録は、すべての事故が対象です。物損だけの軽い事故でも8項目を記録し、営業所で3年間保存します。
- 自動車事故報告書は、決まった型の事故だけです。規則が15の類型を挙げていて、そのどれかに当たったときだけ30日以内に提出します。
- 規則が速報を義務づけているのは、貨物では5つだけです。転覆や火災だけでは速報は要りません。ただし報道されたときなど、告示や通達を根拠に別途求められるものがあります。
- 「重傷者」は条文で決まっています。骨折なら脊柱・上腕・前腕・大腿・下腿、入院なら14日以上、または治療期間30日以上が目安です。
- 死者・重傷者を出した運転者は、次に乗務する前に特別な指導と適性診断が必要です。指導は6つの内容のうち1〜5番について一般貨物で合計6時間以上、記録は運転者等台帳に残します。
まず判定|その事故はどこに当たるか
事故のあとにやることは3段階です。上から順に絞り込まれていくと考えると分かりやすくなります。すべての事故が記録の対象で、そのうち決まった型のものだけ報告書、そして特に重いものや社会的影響が大きいものだけ速報、という関係です。
まず、24時間以内かどうかだけ先に確かめてください
期限がいちばん短いのは、図のいちばん下の速報です。規則が速報を義務づけているのは次の5つで、1つでも当たれば24時間以内です。
- 2人以上の死者を生じたもの
- 5人以上の重傷者を生じたもの
- 10人以上の負傷者を生じたもの
- 危険物等の飛散・漏えい(転覆、転落、火災、鉄道車両・自動車その他の物件との衝突・接触により生じたものに限る)
- 酒気帯び運転があったもの
当たるなら、この記事の続きを読む前に第5章へ進んで、管轄の運輸支局へ電話を入れてください。どれにも当たらない場合でも、報道されるような事故では、告示・通達により別に速報を求められることがあります(同じく第5章)。
次が報告書の30日、記録は保存が3年です。実際に手を動かす順番は、図の下から上へということになります。時間の流れは第6章の図5にまとめました。
速報が図で2つに分かれているのは、根拠が違うからです。速報①は規則が義務づけているもので、絞り込みの続きにあります。速報②は告示・通達によるもので、絞り込みの外にあります。報道されたときのように、報告書が要らない事故でも対象になるため、左の破線で事故の発生から直接つないでいます。
下の段をとばして上の段だけ、ということはありません
報告書を出したから記録はいらない、という関係ではありません。報告書を出す事故でも、事故の記録は別に残します。規則の5つに当たって速報を入れた事故なら、速報・報告書・記録の3つすべてが必要になります。
ただし、報道されたことを理由に速報を入れた事故は事情が違います。その事故が15の類型に当たらなければ、報告書は不要です(記録は必要です)。速報を入れたから必ず報告書も、ということではありません。
すべての事故に必要|事故の記録
まず、いちばん広い網です。事業用自動車で事故が起きたら、その大小にかかわらず記録を残します。相手のいない自損事故でも、物が壊れただけの事故でも対象です。
| 番号 | 記録する事項 |
|---|---|
| 1 | 乗務員等の氏名 |
| 2 | 自動車登録番号または車両番号その他その事業用自動車を識別できる表示 |
| 3 | 事故の発生日時 |
| 4 | 事故の発生場所 |
| 5 | 事故の当事者(乗務員等を除く)の氏名 |
| 6 | 事故の概要(損害の程度を含む) |
| 7 | 事故の原因 |
| 8 | 再発防止対策 |
保存は3年間。場所はその事業用自動車の運行を管理する営業所です。
7番と8番は、あとから埋められません
1番から6番までは事実を書けば済みますが、7番の原因と8番の再発防止対策は考えて書く欄です。ここが空欄か「不注意のため」「注意する」で埋まっている記録簿をよく見かけます。事故の記録は巡回指導で確認される帳票なので、何を原因と見て、何を変えたのかが読み取れる形にしておいてください。
根拠条文を見る(事故の記録)
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の2
「貨物自動車運送事業者は、事業用自動車に係る事故が発生した場合には、次に掲げる事項を記録し、その記録を当該事業用自動車の運行を管理する営業所において三年間保存しなければならない。」として、第1号から第8号までに表1の事項が挙げられています。
条文は「事業用自動車に係る事故」とだけ書いており、報告の対象になる事故に限るという限定はありません。ここが自動車事故報告書との違いです。
報告書が必要な事故|15の類型
ここからが絞り込みです。自動車事故報告規則の第2条が、報告書の提出が必要になる事故を15の類型で挙げています。このどれかに当たったときだけ、30日以内に提出します。
| 号 | どんな事故か |
|---|---|
| 1 | 転覆、転落、火災(積載物品の火災を含む)、鉄道車両との衝突・接触 |
| 2 | 10台以上の自動車の衝突・接触 |
| 3 | 死者または重傷者が生じたもの |
| 4 | 10人以上の負傷者が生じたもの |
| 5 | 積載していた危険物・火薬類・高圧ガス・核燃料物質・放射性同位元素・毒物劇物・可燃物の飛散または漏えい |
| 6 | 積載していたコンテナの落下 |
| 7 | 【旅客のみ】操縦装置または乗降口の扉を開閉する操作装置の不適切な操作により、旅客に一定の傷害(11日以上医師の治療を要するもの)が生じたもの |
| 8 | 酒気帯び運転、無免許運転、大型自動車等無資格運転、麻薬等運転を伴うもの |
| 9 | 運転者または特定自動運行保安員の疾病により、事業用自動車の運行を継続することができなくなったもの |
| 10 | 救護義務違反があったもの |
| 11 | 自動車の装置の故障により、自動車が運行できなくなったもの(運行を再開できなかったもの、または乗務員以外の者の修理等により再開したもの) |
| 12 | 車輪の脱落、被牽引自動車の分離(故障によるものに限る) |
| 13 | 鉄道施設を損傷し、3時間以上本線において鉄道車両の運転を休止させたもの |
| 14 | 高速自動車国道または自動車専用道路において、3時間以上自動車の通行を禁止させたもの |
| 15 | 上記のほか、国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示したもの |
15番は、国土交通大臣から報告の指示が来て初めて該当する受け皿の規定です。自分の事故を照らすときは、1番から14番までを見てください(15と14の数え方については、この章の終わりに補足しました)。
提出は事故があった日から30日以内、3通を、その自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長または運輸支局長を経由して、国土交通大臣に提出します。
3通の意味
なぜ3通なのか。取扱要領によると、運輸支局長が1通を控えて2通を15日以内に地方運輸局長へ、地方運輸局長が1通を控えて1通を10日以内に国土交通大臣へ進達します。行政の各段階で1通ずつ持つ数です。
なお運輸支局によっては、事業者控えを含めて部数を多めに案内していることがあります。規則上は3通ですが、実際に何部持参するかは管轄にご確認ください。
30日を過ぎたら終わり、ではありません
ここでいう「該当する」は、その事故が表2の15の類型のどれかに当たるようになるという意味です。通達は「事故の発生当時に規則に該当しない事故であっても、当該事故があった日から30日を超えた日において、当該事故が原因となって規則に該当することとなった場合には、その時点において遅滞なく報告書を提出させること」としています。
たとえば、事故のときは軽傷だった方が、その後に重傷者に当たると分かったり、亡くなられたりした場合です。事故の直後は表2のどれにも当たらず報告不要だったものが、あとから3番に当たることになります。
あわせて、やむを得ない事由により、けがをされた方が重傷者(表2の3番)や旅客の傷害(同7番)に当たることを知ることができず、30日を超えてから新たに知った場合も、その時点において遅滞なく提出することとされています。
30日は「それまでに出す期限」であって、「それを過ぎたら出さなくてよい期限」ではありません。
2つだけ、30日の数え始めが違います
原則は事故があった日からですが、条文に括弧書きの例外があります。
10番の救護義務違反は、事業者が「救護義務違反があったことを知った日」から30日以内。ひき逃げなどは、あとから警察の捜査で判明することがあるためです。
15番の大臣の指示によるものは、「その指示があった日」から30日以内です。
この2つは、事故の発生日から数えると期限を取り違えます。
表2を読むときの補足
「14の基準」と説明されることもあります
解説記事によって15と書かれていたり14と書かれていたりします。どちらかが誤りというより、数え方の違いです。
15番は「国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示したもの」という受け皿の規定で、事業者が自分で当てはめて判断する基準ではありません。指示が来て初めて該当します。条文の号として数えれば15、事業者が自分でチェックできる基準として数えれば14、ということになります。
この記事では条文の号にそろえて15としています。実務で自分の事故を照らすときは、1番から14番までを見てください。
11番と12番は、書類が増えます
装置の故障で運行できなくなった場合(11番)と、車輪の脱落や被牽引自動車の分離(12番)は、報告書に加えて「車両故障事故報告書添付票」(通達の別表3)を添えることが求められます。車検証の有効期間、使用開始後の総走行距離、最近の大規模な改造の内容・施行期日・施行者、破損または脱落した部品名、その部品を取り付けてから事故発生までの走行キロ、その部品を含む装置の整備・改造の状況、破損・脱落の状況の略図または写真、部品の製作者、疲労か急進破損かの別まで書く様式です。整備記録をさかのぼる作業が発生するので、早めに着手してください。
ただしタイヤのパンク、バッテリーの不具合、灯火装置の不点灯(ヒューズ切れを含む)の場合は、この添付を要しないとされています。
また、9番の健康起因の事故には「運転者の健康状態に起因する事故の調査事項」(通達の別表2)があります。健康診断の受診状況、要注意事項の精密診断の状況、加療の状況、最近1か月間の勤務状況、乗務調整など勤務上の配慮の状況、当日の点呼執行者の所見、さらに事業者としての健康管理の指導状況や要注意者の管理状況まで調査して提出することになります。運転者個人の話にとどまらない点にご注意ください。
根拠条文を見る(報告を要する事故と提出期限)
自動車事故報告規則 第2条は「この省令で『事故』とは、次の各号のいずれかに該当する自動車の事故をいう。」として、第1号から第15号までを掲げています。
第3号は「死者又は重傷者(自動車損害賠償保障法施行令(昭和三十年政令第二百八十六号)第五条第二号又は第三号に掲げる傷害を受けた者をいう。以下同じ。)を生じたもの」と定めており、重傷者の意味は自賠法施行令に委ねられています。
第15号は「前各号に掲げるもののほか、自動車事故の発生の防止を図るために国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示したもの」です。
同規則 第3条第1項は「…その使用する自動車…について前条各号の事故があつた場合には、当該事故があつた日(前条第十号に掲げる事故にあつては事業者等が当該救護義務違反があつたことを知つた日、同条第十五号に掲げる事故にあつては当該指示があつた日)から三十日以内に、当該事故ごとに自動車事故報告書…三通を…国土交通大臣に提出しなければならない。」と定めています。第10号と第15号については、起算日が事故の発生日ではありません。
迷いやすい「死者・重傷者」の線引き
15の類型のうち、実務でいちばん判断に迷うのが3番の「死者または重傷者」です。骨折した、入院した、というだけでは決まりません。
「死亡」は事故発生後24時間以内です
通達は、報告書の「損害の程度」欄の書き方として「死亡については、当該事故の発生後24時間以内に死亡したものとすること」としています。事故から日をおいて亡くなられた場合は、この欄に「死亡」とは書かないということです。
これは欄の書き方の話で、報告書が要るかどうかの話ではありません。亡くなるほどの傷害であれば、その方は事故の時点で重傷者に当たっていることが多く、その場合は表2の3番に当たるので報告書は必要です。仮に事故の時点では表2のどれにも当たらなかったとしても、第3章の「30日を過ぎたら終わり、ではありません」のとおり、あとから該当することになった時点で遅滞なく提出します。「24時間を過ぎたから提出しなくてよい」ということにはなりません。
規則は重傷者の意味を自動車損害賠償保障法施行令の第5条第2号・第3号に委ねていて、そこには具体的な部位と日数が並んでいます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 骨折 | 脊柱の骨折/上腕または前腕の骨折/大腿または下腿の骨折 |
| 内臓 | 内臓の破裂 |
| 入院 | 14日以上の入院を要する傷害/入院を要し、医師の治療を要する期間が30日以上のもの |
骨折は部位が限定されています
条文が挙げているのは脊柱、上腕、前腕、大腿、下腿です。手足の指の骨折や肋骨の骨折は、この列挙に含まれていません。「骨折したから重傷者だ」と決めてしまう前に、どこを折ったのかを確かめてください。
入院も同じで、14日以上という線が引かれています。数日の入院で退院した場合は、医師の治療を要する期間が30日以上あるかどうかで見ることになります。
判断に迷ったら、出す前に管轄の運輸支局へ
診断書の書きぶりや治療の見通しによっては、重傷者に当たるかどうかがはっきりしないことがあります。30日という期限があるので、迷ったまま日数を使うより、早い段階で管轄の運輸支局に事実を伝えて確認するほうが安全です。結果として提出不要だったとしても、確認したこと自体が不利益になることはありません。
根拠条文を見る(重傷者の定義)
自動車損害賠償保障法施行令 第5条(保険会社の仮渡金の金額)
第2号「次の傷害を受けた者 四十万円 イ 脊柱の骨折で脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの ロ 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの ハ 大腿又は下腿の骨折 ニ 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの ホ 十四日以上病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの」
第3号「次の傷害(前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者 二十万円 イ 脊柱の骨折 ロ 上腕又は前腕の骨折 ハ 内臓の破裂 ニ 病院に入院することを要する傷害で、医師の治療を要する期間が三十日以上のもの ホ 十四日以上病院に入院することを要する傷害」
この第5条はもともと保険会社の仮渡金の額を定めた条文です。自動車事故報告規則が、その区分を借りて重傷者を定義しているという作りになっています。
速報|24時間以内の第一報
報告書の対象になった事故のうち、さらに重いものは24時間以内に速報を入れます。ここで注意が要るのは、速報の範囲が規則だけでは決まらないことです。規則が義務づけているものに加えて、告示や通達を根拠に求められているものがあります。そして両者は義務の強さも、時間の定めも、対象の範囲も違います。
とくに告示による速報は、報告書が必要な15の類型に当たる事故に限られません。告示は「その使用する自動車の事故」としか書いていないので、報告書の対象にならない事故でも、報道されれば速報の対象になります。
規則が義務づけている5つ
| 速報が必要な場合 | 表2の号 |
|---|---|
| 2人以上の死者を生じたもの | 第3号 |
| 5人以上の重傷者を生じたもの | 第3号 |
| 10人以上の負傷者を生じたもの | 第4号 |
| 危険物等の飛散・漏えい(転覆、転落、火災、鉄道車両・自動車その他の物件との衝突・接触により生じたものに限る) | 第5号 |
| 酒気帯び運転があったもの | 第8号 |
転覆や火災だけでは、貨物に速報の義務はありません
速報の規定は、転覆・転落・火災(表2の1番)を挙げていますが、そこには「旅客自動車運送事業者等が使用する自動車が引き起こしたものに限る」という括弧書きが付いています。トラックが横転しただけ、荷台が燃えただけ、という場合は、報告書は必要でも速報は要りません。
死者の人数も業態で違います。貨物は2人以上ですが、旅客は1人以上で速報の対象です。バスやタクシーの解説記事をそのまま当てはめると、必要のない速報を入れることになります。
これに加えて、速報を求められるもの
規則の5つがすべてではありません。運輸支局が事業者向けに配っている緊急時対応マニュアルには、規則以外を根拠とする速報対象が並んでいます。
| 速報が求められる場合 | 根拠 | 強さ |
|---|---|---|
| 報道機関による報道があったとき、取材を受けたとき、その他その事故の社会的影響が大きいと認められるとき | 社会的影響が大きい事故の速報に関する告示(平成21年国土交通省告示第1224号)第1項 | 努力義務 |
| 運転者の脳疾患、心臓疾患、意識喪失により運転を継続することができなくなったもの | 取扱要領(規則第4条に準じて速報させるよう運輸支局を通じて指導) | 指導 |
| 自然災害に起因する可能性のある事故 | 運輸支局の緊急時対応マニュアル固有 | 要請 |
| 放射性輸送物の自動車輸送時における事故・紛失・盗難 | 同マニュアル。報告先は運輸支局ではなく国土交通省の担当課(直接) | 要請 |
告示は「努めなければならない」——義務の強さが違います
規則第4条は「速報しなければならない」と定めていますが、告示第1224号は「速報するよう努めなければならない」です。努力義務であって、規則の速報義務とは強さが違います。
時間の定めも違います。規則第4条は「24時間以内においてできる限り速やかに」ですが、告示は「できる限り速やかに」だけで、24時間という区切りがありません。この章の見出しに掲げた24時間は、規則第4条の話です。
方法は告示が「電話、ファクシミリ装置その他適当な方法により」としています。相手は規則と同じく、使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長または運輸支局長です。
軽貨物は、告示の対象から外れています
告示第1項は対象を「旅客自動車運送事業者、貨物自動車運送事業者(貨物軽自動車運送事業者を除く。)、特定第二種貨物利用運送事業者及び自家用有償旅客運送者」としています。括弧書きは「貨物自動車運送事業者」の直後に付いていて、そこから軽貨物を外す形です。
つまり黒ナンバーの事業者は、報道があっても告示による速報の努力義務を負いません。ただし規則第4条による速報義務と、規則第3条による報告書の提出義務は、軽貨物にも及びます。黒ナンバー全体の義務は黒ナンバー届出の完全ガイドで整理しています。
この表は運輸支局によって中身が変わります
表5に挙げたもののうち、「自然災害に起因する可能性のある事故」はマニュアル固有の項目だと明記されており、規則にも告示にもありません。実際、別の運輸局の資料には自然災害の項目がなく、かわりに脳疾患の項目が入っている、といった違いがあります。
管轄の運輸支局が配っている緊急時対応マニュアルを、一度手元に置いてください。この記事の表4は全国共通ですが、表5は地域差があります。
報道されたら速報、というのは見落とされます
けが人が出ていなくても、報道機関から取材や問い合わせがあった時点で速報の対象になります。「報道があったとき」だけでなく「取材・問い合わせがあったとき」も含まれている点に注意してください。事故の重さではなく、社会的な影響で線が引かれています。
どうやって入れるか
速報は書類を作って郵送するものではありません。電話で第一報を入れ、そのあとFAXの様式で送るという流れです。相手は原則として管轄の運輸支局(保安担当)で、報告書のように国土交通大臣へ経由するものではありません。ただし表5の放射性輸送物の事故だけは、報告先が国土交通省の担当課です。
情報が揃っていなくても、第一報を入れます
マニュアルには「当該事故に関する情報内容が十分に把握できていない場合であっても、把握している範囲で結構ですので、速やかに第1報を報告してください」とあります。全部分かってから連絡する、ではありません。
第一報のあとに分かったことも、追加情報として速やかに報告します。FAXの様式が「事故報告(第 報)」となっているのは、第2報・第3報が続く前提だからです。
| 番号 | 伝える内容 |
|---|---|
| 1 | 事業者名 |
| 2 | 発生日時 |
| 3 | 発生場所 |
| 4 | 事故車の登録番号 |
| 5 | 死者数、重傷者数、重傷・軽傷を含めた負傷者数(危険物等の事故では、危険物等の種類・積載量・漏えいの状況) |
| 6 | 事故概要 |
| 7 | 情報入手先 |
| 8 | その他判明している事項 |
| 9 | 緊急連絡担当者名および連絡先 |
緊急連絡担当者は、代わりの方まで決めておきます
マニュアルは、速報を入れる緊急連絡担当者を社内であらかじめ選任するよう求めています。そのうえで、担当者が不在でも支障なく連絡が行われるよう、担当者に代わる方を2名以上選任してほしいとしています。担当者本人とあわせて3名以上ということになります。
事故は休日や夜間にも起きます。24時間以内という期限は、担当者が出社するまで待ってくれません。ここは事故が起きる前にしか準備できない部分です。
根拠条文を見る(速報)
自動車事故報告規則 第4条第1項は、次の場合に「二十四時間以内においてできる限り速やかに、その事故の概要を運輸監理部長又は運輸支局長に速報しなければならない」と定めています。
第1号「第二条第一号に該当する事故(旅客自動車運送事業者及び自家用有償旅客運送者(以下「旅客自動車運送事業者等」という。)が使用する自動車が引き起こしたものに限る。)」
第2号「第二条第三号に該当する事故であつて次に掲げるもの イ 二人(旅客自動車運送事業者等が使用する自動車が引き起こした事故にあつては、一人)以上の死者を生じたもの ロ 五人以上の重傷者を生じたもの ハ 旅客に一人以上の重傷者を生じたもの」
第3号「第二条第四号に該当する事故」
第4号「第二条第五号に該当する事故(自動車が転覆し、転落し、火災を起こし、又は鉄道車両、自動車その他の物件と衝突し、若しくは接触したことにより生じたものに限る。)」
第5号「第二条第八号に該当する事故(酒気帯び運転があつたものに限る。)」
第1号と第2号イの括弧書きにより、貨物自動車運送事業者に第1号の適用はなく、死者の人数も2人以上となります。第2号ハは旅客を前提とした規定です。
表5は、運輸支局が貨物自動車運送事業者向けに配布している「緊急時対応マニュアル」および「自動車事故報告書等の取扱要領」(平成元年3月29日 地車第44号・地備第57号、最終改正 令和6年10月1日 国自安第77号・国自整第146号)によります。マニュアルは速報対象ごとに根拠を示しており、報道・取材については「自動車運送事業者等が引き起こした社会的影響が大きい事故の速報に関する告示」(平成21年11月20日 国土交通省告示第1224号)第1項、自然災害については「マニュアル固有」と明記されています。脳疾患等については取扱要領が「規則第4条第1項の規定に準じ、速報させるよう事業者等を指導すること」としています。
報告事項および緊急連絡担当者の選任は、同マニュアルによります。マニュアルには「本マニュアルによる速報をもって報告規則又は告示に基づく速報に代えることができます」「本マニュアルによる速報後は、報告規則第2条に該当する事故にあっては、報告規則第3条に基づき、同条に規定する期限以内に自動車事故報告書を提出して下さい」と記載されています。
※本記事が参照したマニュアルは特定の運輸支局が配布しているものです。連絡先および表5の項目には地域差があるため、管轄の運輸支局にご確認ください。
期限と保存を一覧にする
ここまでに出てきた期限を並べます。数え方の起点がそれぞれ違うので、まとめて覚えるより表で確認するほうが確実です。
| やること | 期限・保存 | 相手 |
|---|---|---|
| 速報 | 24時間以内にできる限り速やかに(第一報は把握している範囲で) | 管轄の運輸支局(保安担当)へ電話とFAX(放射性輸送物は国土交通省の担当課へ直接) |
| 自動車事故報告書 | 原則として事故があった日から30日以内(3通)※10番・15番は起算日が別 | 運輸支局を経由して国土交通大臣 |
| 事故の記録 | 3年間保存 | 営業所で保存(提出なし) |
| 特別な指導 | 再度乗務する前(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内) | 社内または外部の専門的機関で実施 |
| 適性診断 | 再度乗務する前(やむを得ない場合は乗務開始後1か月以内) | 国土交通大臣の認定を受けた適性診断 |
| 特別な指導・適性診断の記録 | 台帳を備え置く(運転者でなくなった日から3年間保存) | 運転者等台帳に記載または書面を添付 |
帳票ごとの保存期間を横断して見たい場合は、運送業の法定帳票一覧|17の帳票の作成者・保存期間・根拠法令を行政書士が整理にまとめてあります。
報告書を出したあとに続くこと
なお、事故の届出を怠ることは、それ自体が行政処分の対象として基準に定められています。報告書の提出は、事故の後始末であると同時に法令上の義務です。
事故の対応は、書類を出したら終わりではありません。その運転者を再び乗務させる前に、やることが2つあります。
特別な指導
対象になるのは次の運転者です。
| 区分 | 対象 |
|---|---|
| 1 | 死者または重傷者を生じた交通事故を引き起こした運転者 |
| 2 | 軽傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、その事故の前3年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者 |
「けが人が出たら全部」ではありません
安全規則の条文は「死者又は負傷者が生じた事故を引き起こした者」と書いていますが、その負傷者にはかっこ書きの定義が付いていて、自賠令第5条第2号・第3号・第4号の傷害を受けた方に限られます。さらに条文は具体的な範囲を「国土交通大臣が告示で定めるところにより」と委ねていて、告示が表8のとおり、軽傷者だけの事故は過去3年間に事故歴がある場合に絞っています。
表の重傷者は、第4章で見た自賠令第5条第2号・第3号の傷害を受けた方です。軽傷者は同条第4号、つまり11日以上医師の治療を要する傷害を受けた方をいいます。告示はこの2つの言葉を、いずれも同じ条文から借りています。
治療が10日以内で終わった場合
自賠令第5条第4号は「十一日以上医師の治療を要する傷害」です。したがって治療が10日以内で終わる程度のけがだけであれば、告示のいう軽傷者には当たりません。この場合、その運転者は事故惹起運転者にならず、特別な指導と適性診断の対象にもなりません。ただし、けがの程度は後から重くなることもあります。診断書が出そろうまでは判断を確定させないでください。
実施する時期はその事故を起こした後、再び事業用自動車に乗務する前です。やむを得ない事情がある場合に限り、乗務を開始した後1か月以内とされています。
外部の講習を受ける予定があるときの例外
告示は実施時期の定めに続けて、「なお、外部の専門的機関における指導講習を受講する予定である場合は、この限りでない。」と書いています。トラック協会などが行う指導講習を予約してあり、受講日が先になる場合を想定した一文です。
ただし告示は、この場合にいつまでに受講すればよいのかを書いていません。特別な指導そのものが不要になるわけではないので、講習の日程を先に押さえたうえで、その運転者を乗務させてよいかを管轄の運輸支局に確認しておくのが安全です。
またこの但書は特別な指導についてのもので、適性診断には同じ定めがありません。適性診断は、再び乗務する前(やむを得ない事情があるときは乗務開始後1か月以内)に受診させます。
内容は次の6つです。時間の定めが付いているのは1番から5番までで、一般貨物自動車運送事業者等は合計6時間以上、貨物軽自動車運送事業者は合計5時間以上と告示が定めています。6番の安全運転の実技には時間の定めがなく、「可能な限り実施するもの」とされています。
| 項目 |
|---|
| 事業用自動車の運行の安全の確保に関する法令等 |
| 交通事故の事例の分析に基づく再発防止対策 |
| 交通事故に関わる生理的および心理的要因と対処方法 |
| 交通事故を防止するために留意すべき事項 |
| 危険の予測および回避 |
| 安全運転の実技(時間の定めなし。可能な限り実施するもの) |
適性診断
特別な指導とあわせて、国土交通大臣の認定を受けた適性診断を受けさせます。時期は特別な指導と同じで、再び乗務する前。やむを得ない事情がある場合は乗務開始後1か月以内です。
事故惹起運転者が受けるものは特定診断Ⅰと特定診断Ⅱの2種類あり、告示が次のように振り分けています。予約するときにどちらかを指定するので、事故の内容と過去の事故歴を先に確認しておいてください。
| 区分 | 受ける運転者 |
|---|---|
| 特定診断Ⅰ | 死者または重傷者を生じた事故を引き起こし、かつ、その事故の前1年間に交通事故を引き起こしたことがない運転者 軽傷者を生じた事故を引き起こし、かつ、その事故の前3年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者 |
| 特定診断Ⅱ | 死者または重傷者を生じた事故を引き起こし、かつ、その事故の前1年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者 |
「3年」と「1年」を取り違えないでください
過去の事故歴をさかのぼる期間が、場面によって違います。特別な指導の対象かどうかを決めるとき(軽傷者の事故)は3年、特定診断ⅠとⅡのどちらを受けるかを決めるとき(死者・重傷者の事故)は1年です。同じ「事故歴」でも数える年数が違うので、表8と表10を分けて確認してください。
記録は運転者等台帳に残します
ここは間違えやすいところです。毎年行う一般的な指導・監督の記録は、日時・場所・内容・行った者と受けた者を記録して営業所で3年間保存します(安全規則第10条第1項)。一方、事故を起こした運転者に対する特別な指導と適性診断は、この3年保存の定めではなく、運転者等台帳に残すのが告示の求めている形です。
| 対象 | 残し方 |
|---|---|
| 毎年の一般的な指導・監督 | 日時・場所・内容・行った者と受けた者を記録し、営業所で3年間保存 |
| 特別な指導(事故惹起運転者) | 実施した年月日と具体的な内容を運転者等台帳に記載する。または、年月日を台帳に記載したうえで、内容を記録した書面を台帳に添付する |
| 適性診断(特定診断Ⅰ・Ⅱ) | 受診年月日と結果を記録した書面を運転者等台帳に添付する |
運転者等台帳そのものにも、「事故を引き起こした場合は、その概要」と「第10条第2項の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診の状況」という記載欄があります(安全規則第9条の5第1項第6号・第9号)。事故を起こした運転者については、台帳を開けば事故の概要・特別な指導・適性診断の3つが揃っている状態にしておくのが、巡回指導でも見られる形です。台帳の記載事項は運送業の運転者台帳の書き方|記載事項10項目・写真・保存期間を行政書士が整理で整理しています。
別ファイルにまとめただけでは足りません
特別な指導の記録を教育記録のファイルにとじているだけで、運転者等台帳に何も書いていない・何も添付していないという状態は、告示が求める形になっていません。台帳に年月日を書いたうえで書面を添付する、という形にしておいてください。
黒ナンバー(貨物軽)には、みなしの定めがあります
貨物軽自動車運送事業者の運転者が事故惹起運転者に当たる場合、告示は「交通事故を引き起こした後に貨物軽自動車安全管理者講習を受講した場合、特別な指導を実施したものとみなすことができる」としています。事故のあとにこの講習を受けたのであれば、あらためて特別な指導を行わなくてもよいという意味です。一般貨物自動車運送事業者には、この定めはありません。
根拠条文を見る(特別な指導と適性診断)
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第10条第2項
「貨物自動車運送事業者は、国土交通大臣が告示で定めるところにより、次に掲げる運転者に対して、事業用自動車の運行の安全を確保するために遵守すべき事項について特別な指導を行い、かつ、国土交通大臣が告示で定める適性診断であつて第十二条の三第一項の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを受けさせなければならない。」として、第1号「死者又は負傷者(自動車損害賠償保障法施行令(昭和三十年政令第二百八十六号)第五条第二号、第三号又は第四号に掲げる傷害を受けた者をいう。)が生じた事故を引き起こした者」、第2号「運転者として新たに雇い入れた者(貨物軽自動車運送事業者にあつては、運転者として初めて事業用自動車に乗務する者)」、第3号「高齢者(六十五才以上の者をいう。)」を挙げています。
同条第1項は、毎年の一般的な指導および監督について「その日時、場所及び内容並びに指導及び監督を行つた者及び受けた者を記録し、かつ、その記録を営業所において三年間保存しなければならない。」と定めています。この3年間保存は第1項の指導・監督についての定めで、第2項の特別な指導・適性診断の記録先は、次の告示が運転者等台帳としています。
自動車損害賠償保障法施行令 第5条第4号
「十一日以上医師の治療を要する傷害(第二号イからホまで及び前号イからホまでに掲げる傷害を除く。)を受けた者 五万円」
貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針(平成13年8月20日 国土交通省告示第1366号)第二章
柱書「安全規則第9条の5第1項又は第9条の6第1項に基づき、指導を実施した年月日及び指導の具体的内容を運転者等台帳若しくは貨物軽自動車運転者等台帳(以下「運転者等台帳等」という。)に記載するか、又は、指導を実施した年月日を運転者等台帳等に記載したうえで指導の具体的内容を記録した書面を運転者等台帳等に添付するものとする。また、4の各号に掲げる運転者に対し、当該各号に掲げる方法により適性診断を受診させ、受診年月日及び適性診断の結果を記録した書面を同項に基づき運転者等台帳等に添付するものとする。」
2⑴は事故惹起運転者を「死者又は重傷者(自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)第5条第2号又は第3号に掲げる傷害を受けた者をいう。)を生じた交通事故を引き起こした運転者及び軽傷者(同条第4号に掲げる傷害を受けた者をいう。)を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の3年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者」と定義しています。
同2⑴の備考「貨物軽自動車運送事業者の運転者である事故惹起運転者が交通事故を引き起こした後に貨物軽自動車安全管理者講習を受講した場合、貨物軽自動車運送事業者が当該事故惹起運転者に対する特別な指導を実施したものとみなすことができる。」
同3⑴①(実施時期)「当該交通事故を引き起こした後再度事業用自動車に乗務する前に実施する。ただし、やむを得ない事情がある場合には、再度乗務を開始した後1か月以内に実施する。なお、外部の専門的機関における指導講習を受講する予定である場合は、この限りでない。」
同4⑴(適性診断)「当該交通事故を引き起こした後再度事業用自動車に乗務する前に次に掲げる事故惹起運転者の区分ごとにそれぞれ特定診断Ⅰ(①に掲げる者のための適性診断として国土交通大臣が認定したものをいう。)又は特定診断Ⅱ(②に掲げる者のための適性診断として国土交通大臣が認定したものをいう。)を受診させる。ただし、やむを得ない事情がある場合には、乗務を開始した後1か月以内に受診させる。」として、①「死者又は重傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の1年間に交通事故を引き起こしたことがない者及び軽傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の3年間に交通事故を引き起こしたことがある者」、②「死者又は重傷者を生じた交通事故を引き起こし、かつ、当該事故前の1年間に交通事故を引き起こしたことがある者」を挙げています。
貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の5第1項は、運転者等台帳の記載事項として、第6号「事故を引き起こした場合は、その概要」、第9号「運転者にあつては、第十条第二項の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診の状況」を挙げています。
よくある質問
Q. 物損だけの軽い事故でも記録は必要ですか。
A. 必要です。事故の記録は「事業用自動車に係る事故が発生した場合」が対象で、けが人の有無や損害の大きさによる限定がありません。8項目を記録し、営業所で3年間保存します。運輸支局への提出は不要です。
Q. 自動車事故報告書は、どんな事故でも出すのですか。
A. いいえ。自動車事故報告規則の第2条が挙げる15の類型に当たったときだけです。転覆や火災、10台以上の衝突、死者または重傷者、酒気帯び運転などが該当します。当たらない事故は、社内の記録だけで足ります。
Q. 報告が必要な事故は15ですか、14ですか。
A. 条文の号としては15です。ただし15番は国土交通大臣が特に必要と認めて報告を指示したものという受け皿の規定で、事業者が自分で当てはめる基準ではありません。自分でチェックできる基準として数えれば14になります。どちらの説明も誤りではありません。
Q. 骨折したら重傷者になりますか。
A. 部位で決まる場合と、入院日数で決まる場合があります。条文が挙げているのは脊柱、上腕、前腕、大腿、下腿の骨折です。手足の指や肋骨の骨折は列挙に含まれていません。骨折の有無だけで判断せず、どこを折ったのかを確認してください。ただし列挙にない部位でも、14日以上の入院を要する場合など、入院日数のほうで重傷者に当たることがあります。
Q. 入院した場合はどうですか。
A. 14日以上の入院を要する傷害、または入院を要し医師の治療を要する期間が30日以上のものが重傷者に当たります。数日で退院した場合は、治療期間が30日以上あるかどうかで見ることになります。
Q. トラックが横転したら速報は必要ですか。
A. 規則による速報は、貨物では必要ありません。速報の規定で転覆や火災を挙げた号には、旅客自動車運送事業者等が使用する自動車が引き起こしたものに限るという括弧書きが付いています。ただし30日以内の報告書は必要です。また、その事故が報道されたり取材を受けたりした場合は、告示により速報するよう努めなければならないとされています。
Q. 速報が必要になるのはどんな場合ですか。
A. 2つの層があります。規則が義務づけているのは貨物では5つで、2人以上の死者、5人以上の重傷者、10人以上の負傷者、危険物等の飛散・漏えい(転覆や衝突などにより生じたものに限る)、酒気帯び運転があったものです。これは24時間以内にできる限り速やかに、運輸監理部長または運輸支局長に入れます。これに加えて、報道機関による報道があったときや取材を受けたときなど社会的影響が大きいと認められるときは、告示により速報するよう努めなければならないとされています。こちらは努力義務で、24時間という区切りはありません。さらに運輸支局によっては、運転者の脳疾患等や自然災害に起因する可能性のある事故についても速報を求めています。
Q. 30日を過ぎたら、もう報告書は出さなくてよいですか。
A. 出します。通達は、事故当時は規則に該当しなかった事故でも、30日を超えた日にその事故が原因で該当することになった場合は、その時点において遅滞なく提出させることとしています。やむを得ない事由で重傷者に該当することを知ることができず、あとから知った場合も同じです。30日は「それまでに出す期限」であって、過ぎたら出さなくてよい期限ではありません。
Q. 速報はどうやって入れるのですか。
A. 管轄の運輸支局の保安担当へ電話で第一報を入れ、そのあとFAXの様式で送ります。伝えるのは事業者名、発生日時、発生場所、事故車の登録番号、死者数と重傷者数と負傷者数、事故概要、情報入手先、その他判明している事項、緊急連絡担当者名と連絡先です。情報が十分に把握できていなくても、把握している範囲で速やかに第一報を入れることとされています。
Q. けが人がいなくても速報が必要になることはありますか。
A. あります。その事故について報道機関による報道があったとき、取材を受けたとき、その他社会的影響が大きいと認められるときは、告示により速報するよう努めなければならないとされています。ただしこれは努力義務で、規則第4条の速報義務とは強さが違い、24時間という区切りもありません。また告示は貨物軽自動車運送事業者を対象から除いています。ほかに自然災害に起因する可能性のある事故なども挙げられていますが、この範囲は運輸支局によって違うため、管轄が配布している緊急時対応マニュアルをご確認ください。
Q. 事故を起こした運転者は、すぐに乗務させてよいですか。
A. 対象は死者または重傷者を生じた事故を引き起こした運転者と、軽傷者を生じた事故を引き起こしその前3年間に事故歴がある運転者です。この場合、特別な指導と適性診断を受けさせてからになります。時期は再度乗務する前とされており、やむを得ない事情がある場合に限って乗務開始後1か月以内です。指導は6つの項目のうち1番から5番までについて、一般貨物で合計6時間以上、貨物軽自動車で合計5時間以上と定められています。
Q. 軽いけがの事故でも特別な指導は必要ですか。
A. 告示のいう軽傷者は、自賠令第5条第4号の「11日以上医師の治療を要する傷害」を受けた方です。治療が10日以内で終わる程度のけがだけであれば、その運転者は事故惹起運転者に当たりません。軽傷者を生じた事故の場合は、その事故の前3年間に交通事故を引き起こしたことがある運転者が対象です。死者または重傷者が生じた事故の場合は、事故歴にかかわらず対象になります。
Q. 30日はいつから数えますか。
A. 原則は事故があった日からです。ただし例外が2つあり、救護義務違反があった事故は事業者がその違反を知った日から、国土交通大臣の指示による報告はその指示があった日から30日以内です。この2つを事故の発生日から数えると、期限を取り違えます。
Q. 事故の記録と自動車事故報告書は、どちらか一方でよいですか。
A. 両方必要です。報告書を提出する事故であっても、事故の記録は別に作成して営業所で3年間保存します。規則の5つに当たって速報を入れた事故なら、速報・報告書・記録の3つがそろいます。ただし報道されたことを理由に告示の速報を入れた事故は、15の類型に当たらなければ報告書は不要です(記録は必要です)。
Q. 特別な指導の記録は、どこに残せばよいですか。
A. 運転者等台帳です。実施した年月日と具体的な内容を台帳に記載するか、年月日を台帳に記載したうえで内容を記録した書面を台帳に添付します。適性診断は、受診年月日と結果を記録した書面を台帳に添付します。営業所で3年間保存するのは毎年の一般的な指導・監督の記録で、特別な指導はこれとは別の残し方になります。
Q. 特定診断Ⅰと特定診断Ⅱは何が違いますか。
A. 事故の前1年間に交通事故を引き起こしたことがあるかどうかで分かれます。死者または重傷者を生じた事故で、その前1年間に事故歴がない場合は特定診断Ⅰ、事故歴がある場合は特定診断Ⅱです。軽傷者を生じた事故で前3年間に事故歴がある場合は特定診断Ⅰです。
参照した資料と基準日
自動車事故報告規則(昭和26年運輸省令第104号)第2条、第3条、第4条。条文はe-Gov法令検索で確認し、国土交通省が公開している規則のPDFと照合しました。
自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)第5条。重傷者の定義はこの第2号・第3号、軽傷者の定義は第4号によります。
貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)第9条の2、第9条の5、第10条。特別な指導と適性診断の記録先(運転者等台帳)は第9条の5第1項によります。
貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針(平成13年8月20日 国土交通省告示第1366号)。国土交通省が公開している告示本文と新旧対照表で確認しました。事故惹起運転者に対する特別な指導の対象、時期、内容、時間数、記録先、特定診断Ⅰ・Ⅱの区分、貨物軽自動車運送事業者に関する備考によりました。
自動車事故報告書等の取扱要領(平成元年3月29日 地車第44号・地備第57号、最終改正 令和6年10月1日 国自安第77号・国自整第146号)。報告書の受理と進達の流れ、別表2・別表3、脳疾患等の速報の指導、規則第2条第11号の解釈によりました。
自動車事故報告書の記入等の取扱いについて(平成元年3月29日 地車第45号・地備第58号、最終改正 平成25年9月20日 国自安第153号・国自整第176号)。死亡の意味(事故発生後24時間以内)、再発防止対策の「原因究明結果待ち」、30日を超えた場合の取扱いによりました。
自動車運送事業者等が引き起こした社会的影響が大きい事故の速報に関する告示(平成21年国土交通省告示第1224号)。第1項は「旅客自動車運送事業者、貨物自動車運送事業者(貨物軽自動車運送事業者を除く。)、特定第二種貨物利用運送事業者及び自家用有償旅客運送者は、その使用する自動車の事故に関し、報道機関による報道があつたとき又は取材を受けたときその他当該事故の社会的影響が大きいと認められるときは、電話、ファクシミリ装置その他適当な方法により、できる限り速やかに、その事故の概要を当該自動車の使用の本拠の位置を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長に速報するよう努めなければならない。」と定めています。努力義務であり、24時間という時間の定めはありません。
運輸支局が貨物自動車運送事業者向けに配布している「緊急時対応マニュアル」および別表2・別表3の様式。速報の対象・手順・報告事項・緊急連絡担当者の選任によりました。連絡先および速報の範囲には地域差があります。
本記事は2026年8月時点の法令等にもとづいて整理しています。制度は改正されることがありますので、実際の手続の前には原典または管轄運輸支局でご確認ください。個別の事故が報告の対象に当たるかどうかの判断に迷う場合は、期限があるため早めに管轄の運輸支局へご確認ください。
事故のあとの手続きでお困りの方へ
報告の対象に当たるかどうかの判断、自動車事故報告書の作成と提出、事故の記録や指導監督の記録の整備をお受けしています。許可を取ったあとの手続き全般は運送業を経営されている方へをご覧ください。
ご相談はお問い合わせフォームから承っています。
