監査で法令違反が見つかると、運輸局から行政処分を受けます。「何日車」「何点」という言葉は聞いたことがあっても、その数字がどこから出てきて、実際に車が何台、何日止まるのかまで説明できる方は多くありません。この記事では、国土交通省の通達の原文にあたって、処分の種類、日車数から停止台数と期間が決まる計算、違反点数の累計と消滅までを順に整理します。
この記事の要点
- 行政処分は軽い順に、自動車等の使用停止処分(車両停止)、事業停止処分、許可の取消処分の3種類です。これに至らない勧告と警告を含めて「行政処分等」と呼びます。
- 違反ごとに決まった日車数を合計したものが処分日車数です。停止する台数は処分日車数と営業所の車両数の組み合わせで決まり、停止する日数は処分日車数を台数で割って求めます。
- 処分日車数10日車までごとに1点の違反点数が付きます。点数は違反のあった営業所に付され、事業者ごとに、地方運輸局の管轄区域単位で累計されます。
- 累計期間は3年です。4つの条件をすべて満たした場合に限り2年に短縮されます。Gマーク(安全性優良事業所)は、そのうちの1つの選択肢にすぎません。
行政処分は3種類|まず全体像をつかむ
貨物自動車運送事業者に対する行政処分は、貨物自動車運送事業法第33条にもとづいて行われます。処分の種類と基準を定めているのは、国土交通省の通達「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」です。この通達は平成21年9月29日に出され、直近では令和7年2月28日に一部改正されて、令和7年4月1日から施行されています。
通達は、処分の種類を軽微なものから順に3つ挙げています。自動車その他の輸送施設の使用停止処分、事業の全部または一部の停止処分、そして許可の取消処分です。さらに、これに至らないものとして勧告と警告があり、通達はこれらを合わせたものを「行政処分等」と呼んでいます。
勧告・警告も公表の対象になる
勧告と警告は行政処分そのものではありませんが、通達第7項は、行政処分等を受けた事業者の名称と処分内容等を公表するとしています。「処分ではないから記録に残らない」という理解は正確ではありません。
日車数から、止まる台数と日数が決まる
車両停止の重さを表すのが処分日車数です。違反行為ごとに基準となる日車数が別表で決まっており、監査で見つかった違反の日車数を合計したものが、その営業所の処分日車数になります。たとえば運行指示書及び写しの保存義務違反であれば、初違反で20日車、再違反で40日車と定められています。
ただし、処分日車数はそのまま「車が止まる日数」ではありません。ここが誤解されやすいところです。止まる台数がまず決まり、そのあとで日数が決まります。
まず台数が決まる
停止の対象となる台数を処分車両数といいます。処分日車数と、その営業所に所属する事業用自動車の数の組み合わせで、次のように決まります。
| 処分日車数 | 10両まで | 11~20両 | 21~30両 | 31両以上 |
|---|---|---|---|---|
| 10日車まで | 1両 | 1両 | 1両 | 1両 |
| 11~30日車 | 1両 | 2両 | 2両 | 2両 |
| 31~60日車 | 1両 | 2両 | 3両 | 3両 |
| 61~80日車 | 2両 | 3両 | 4両 | 5両 |
| 81日車以上 | Y+(処分日車数-80)÷10(端数切り上げ) | |||
81日車以上の欄にある「Y」は、所属する事業用自動車が31両以上の場合は8とされ、それ以外の場合は61~80日車の欄の台数となります。あわせて通達は、停止する台数は所属する事業用自動車の5割を超えないものとしています。
次に日数が決まる
停止する期間は、処分日車数を処分車両数で割って得た整数の日数です。割り切れずに余りが出たときは、対象となる車のうち1両について、その余りに相当する日数だけさらに停止します。
計算してみる(架空の設定です)
ここに登場する事業者、車両数、違反内容はすべて架空のものです。実在の事業者とは関係ありません。
事業用自動車15両の営業所で、監査により2つの違反が見つかったとします。運行指示書及び写しの保存義務違反(初違反・20日車)と、点呼の記録違反のうち一部記録なし(初違反・警告)です。
処分日車数は20日車です。警告は日車数を持たないので加算されません。15両の営業所で20日車ですから、表1の「11~30日車」と「11~20両」が交わる欄を見て、処分車両数は2両となります。停止期間は20÷2で10日です。つまり、2両を10日間止めることになります。
ここで、もし同じ20日車が5両の営業所で出たとすると、処分車両数は1両ですから、1両を20日間止めることになります。同じ日車数でも、営業所の規模によって止まり方が変わります。
止める車は選べない
細部取扱いを定めた課長通達は、停止の対象とする車両を①違反営業所等の違反車両、②その違反車両と初度登録年月および最大積載量が同等の車両、③処分の実効性が確保できるものとして地方運輸局の行政処分審査委員会が決定した車両、の順に指定するとしています。手が空いている車や古い車を差し出すという選び方はできません。
ナンバープレートも預けることになる
通達4(4)は、車両停止を行うときは自動車検査証の返納と自動車登録番号標の領置を併せて行うとしています。領置が特に困難と認められる場合は、総走行距離計による確認や臨店による監視など、停止を確認するための措置で代えることができるとされていますが、原則はナンバーを外して預ける扱いです。
10日車で1点|違反点数はどこに、いつまで付くのか
車両停止と並行して、違反点数が付きます。通達3(1)は、処分日車数10日車までごとに1点とすると定めています。先ほどの20日車の例であれば2点です。
「10日車までごとに」という書き方が示すとおり、端数は切り上げます。細部取扱いを定めた課長通達は、51日車であれば60日車として6点を付与する、という例を挙げています。1日車でも超えれば1点増えるということです。
この点数について、押さえておきたいことが3つあります。付く先、累計の単位、そして消えるまでの期間です。
点数は営業所に付く
点数が付くのは事業者そのものではなく、違反のあった営業所です。営業所が複数ある事業者であれば、監査で違反が見つかった営業所にだけ点数が付きます。
ただし、営業所をたたんでも点数から逃れられるわけではありません。通達1(3)は、処分を受ける前に違反営業所の車を別の営業所へ移して車両数を減らした場合、その違反は違反営業所と移動先の営業所の両方に係るものとして扱うとしています。
違反営業所が廃止された場合は、付け替え先が3段階で決まります。まず同じ運輸支局の管轄区域にある最寄りの営業所、それがなければ同じ地方運輸局の管轄区域にある最寄りの営業所、それもなければ単に最寄りの営業所です。どこかに必ず付きます。
累計は運輸局の管轄区域単位
通達3(3)は、付された違反点数を事業者ごとに管轄区域単位で累計し、その営業所を管轄する地方運輸局において管理するとしています。ここでいう管轄区域は地方運輸局の管轄区域ですから、たとえば大阪の営業所と京都の営業所は、どちらも近畿運輸局の管内として同じ枠で累計されることになります。
近畿運輸局が公表している個別の処分内容に「営業所点数」と「事業者点数」の2つが並んでいるのは、この構造によるものです。
点数が2年で消える4つの条件
通達3(4)は、違反点数の累計期間を3年とし、行政処分を行った日から3年を経過する日をもって点数は消滅するとしています。ここでいう行政処分を行った日とは、行政処分を行うべく決裁等を行った日を指します。
そのうえで、同項にはただし書があります。行政処分を受けた営業所が次の4つの条件のいずれにも該当する場合に限り、2年を経過する日で点数が消滅するというものです。
| 条件 | 内容 | いつを見るか |
|---|---|---|
| ① | 行政処分を行った日以前の2年間に行政処分を受けていない、または違反行為を行った日において安全性優良事業所に認定されていること | 処分より前 |
| ② | その行政処分に係る所要の措置が履行されており、処分の日から2年間、行政処分を受けていないこと | 処分より後 |
| ③ | 処分の日から2年間、自動車事故報告規則第2条第3号に規定する事故(運転者等が第一当事者と推定されるものに限る)を引き起こしていないこと | 処分より後 |
| ④ | 処分の日から2年間、救護義務違反、酒酔い運転、薬物等使用運転、妨害運転、無免許運転、酒気帯び運転、過労運転、大型自動車等無資格運転がないこと | 処分より後 |
「Gマークがあれば2年」ではありません
安全性優良事業所(Gマーク)の認定が出てくるのは、表2の①だけです。しかも①は「過去2年間に行政処分を受けていない」との選択肢の一方であって、Gマークがなくても①を満たすことはあります。
逆にGマークがあっても、②から④までを満たさなければ2年にはなりません。通達は「次の①から④までのいずれにも該当する場合」と書いています。Gマークは4つのうちの1つの入口を開けるだけで、残りの3つは処分後の2年間をどう過ごすかにかかっています。
もうひとつ、通達3(5)に短い規定があります。行政処分を受けた営業所の廃止があったときは、この2年のただし書は適用しないというものです。処分を受けた営業所をたたんでも、点数は3年間残ります。
なお、Gマークが関わる場面はもう一つあります。日車数を定めた通達の記7は、初違反であって基準日車が10日車以下・勧告・警告とされている輸送の安全確保義務違反について、指導の実施状況や安全性優良事業所への認定の有無その他の事実関係から総合的に判断して、運行管理と車両管理を概ね適切に行っていたと認められる場合は日車数等を軽減できるとしています。Gマークの利点としてはあまり語られませんが、軽減の判断材料の一つです。
事業停止と許可取消はどこから始まるか
車両停止より重い処分が2つあります。事業停止と許可取消です。事業停止には性格の異なる2つの入口があり、これを分けて理解しておくと見通しがよくなります。
入口1 該当すれば30日間
通達5(1)は、次の8つのいずれかに該当する場合、該当する各号ごとに30日間の事業停止処分を行うとしています。日車数の積み上げとは関係なく、当てはまれば発動します。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| ① | 勤務時間等基準告示が著しく遵守されていない場合 |
| ② | 全運転者等に対して点呼を全く実施していない場合 |
| ③ | 営業所に配置している全ての事業用自動車について、定期点検整備を全く実施していない場合 |
| ④ | 整備管理者が全く不在(選任なし)の場合 |
| ⑤ | 運行管理者が全く不在(選任なし)の場合 |
| ⑥ | 名義を他人に利用させていた場合 |
| ⑦ | 事業の貸渡し等を行っていた場合 |
| ⑧ | 検査を拒み、妨げ、もしくは忌避し、または質問に対して陳述をせず、もしくは虚偽の陳述を行った場合 |
この8つには、点数の面でも重い扱いが用意されています。通達3(2)は、5(1)による事業停止処分を行う事業者には、日車数から計算される点数のほかに、各号ごとに30点の違反点数を付すとしています。累計が81点以上で許可取消ですから、30点というのはその3分の1を1回で消費する重さです。
「各号ごとに」ですから、2つに当たれば60日間・60点になります。ただし例外が1つあります。⑤(運行管理者が全く不在)に該当したことに伴って②(点呼を全く実施していない)に該当する場合は、停止期間も点数も合わせて30日間・30点とされています。運行管理者がいないから点呼も行われていない、という状態を二重に数えない趣旨の定めです。
「全く」の一語が効いている
②③④⑤には「全く」という語が入っています。点呼を一部の運転者に実施していなかった、一部の車両で定期点検を落としていたという状態は、この8つには当たらず、日車数による車両停止の側で処理されます。逆に言えば、選任が完全に切れている、点呼項目が全く実施されていないといった状態になると、量の問題ではなく質の問題として扱われます。
なお②は点呼の実施の話であって、記録の話ではありません。細部取扱いは、②の「点呼を全く実施していない」を、日常点検の実施または確認の報告、酒気帯びの有無および健康状態の確認、睡眠不足の確認、事業用自動車・道路・運行状況の報告等について、実施すべき点呼項目が全く実施されていない場合と定義しています。点呼記録が全く残っていないという状態は、別表の点呼の記録違反として扱われます。
入口2 点数と日車数の組み合わせ
もう一つの入口が、通達5(2)です。累積点数と、その回の処分日車数の組み合わせで判定します。
| 累積点数 | その回の処分日車数 | 停止の対象 |
|---|---|---|
| 30点以下 | 270日車以上 | 当該違反営業所等 |
| 31点以上 | 180日車以上 | 当該違反営業所等 |
| 点数の付与により累積が51点以上80点以下となった場合 | 管轄区域内の全ての営業所 | |
3行目に注意してください。ここまで来ると、違反のあった営業所だけでなく、同じ管轄区域内の全ての営業所が止まります(表3の各号や、表4の①②で既に処分対象となる営業所は除かれます)。点数が営業所ごとに付きながら、事業者ごとに管轄区域単位で累計される仕組みが、ここで効いてきます。
なお①と②の日車数の見方には、注が付いています。処分日車数の合計をそのまま見るのではなく、輸送の安全確保義務違反(法第15条第1項から第4項まで、第16条第1項、第20条第2項・第3項の違反)に係る日車数の和と、それ以外の違反に係る日車数の和を比べ、そのいずれかが基準を満たした場合に発動するとされています。
停止の日数は、処分日車数に応じて次のとおり定められています。
| 処分対象営業所 | 179日車以下 | 180〜269日車 | 270〜359日車 | 360〜499日車 | 500日車以上 |
|---|---|---|---|---|---|
| 表4の① | - | - | 3日 | 7日 | 14日 |
| 表4の② | - | 3日 | 7日 | 14日 | - |
| 表4の③ | 3日 | ||||
①は270日車以上、②は180日車以上でなければそもそも発動しませんから、それより左の欄は起こらない組み合わせです。同じ日車数でも、累積点数が31点以上あると1段階重い日数になることが読み取れます。
なお、事業停止期間が3日間となる場合について、細部取扱いは、原則として土曜日、日曜日、祝日その他その事業者が通常事業活動を行っていない日を含まないように期間を設定するとしています。3日間という短い期間が、休業日と重なって形だけのものにならないようにする定めです。
このほか、運転者が酒酔い運転などを行い、事業者または運行管理者がそれを命じ、もしくは容認していたとして公安委員会から通知等があった場合には、日車数による処分に加えて14日間の事業停止が付加されます。過労運転や無免許運転などでは7日間、指導監督を明らかに実施していない場合の類型ではさらに別の日数が定められています。
許可取消になる場合
通達6(1)は、許可の取消処分を行う場合を11号にわたって挙げています。運送事業者にとって関わりの深いものを抜き出すと次のとおりです。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| ① | 事業停止処分を過去2年間に3回受けていた事業者が、表4のいずれかに該当することとなった場合 |
| ② | 違反点数の付与により、一の管轄区域に係る累積点数が81点以上となった場合 |
| ③ | 使用停止処分もしくは事業停止処分、または自動車検査証の返納命令もしくは登録番号標の領置命令に違反した場合 |
| ④ | 表3による事業停止処分を受けた事業者が、処分を受けた日から3年以内に同一の違反をした場合(表3の①から⑤までについては、同一営業所における違反の場合に限る) |
| ⑧ | 所在不明事業者であって、相当の期間事業を行っていないと認められる場合 |
| ⑨ | 法第5条第1号、第2号、第7号または第8号に該当するに至った場合 |
名義貸しがしばしば「一発で許可取消」と語られますが、通達の建て付けは少し違います。名義貸しは表3の⑥として30日間の事業停止と30点の対象であり、そのうえで、3年以内に同じ違反を繰り返した場合に表6の④によって取消に至ります。もちろん、1回で事業が30日間止まり30点が付く時点で十分に重い処分です。
初違反・再違反・累違反は、3年で数える
別表に並んでいる基準日車には、初違反と再違反の2つの欄があります。どちらが適用されるかで日車数は2倍変わりますから、この数え方は実務上とても重要です。定義を置いているのは、日車数を定めた通達の記1(1)です。
初違反とは、その違反を確認した日から過去3年以内に、同一営業所において同一の違反による行政処分等がない場合をいいます。再違反は同じ条件で1度受けている場合、累違反は2度以上受けている場合です。
別表には累違反の欄がありません。日車数通達の記4が、累違反の基準日車は、再違反が警告とされている事項では警告、それ以外では再違反の2倍として扱うと定めているためです。運行指示書及び写しの保存義務違反であれば、初違反20日車、再違反40日車、累違反80日車という並びになります。
同一の違反かどうかは、別表の「事項」の単位で見る
日車数通達の記2は、行政処分等を行うべき違反行為は別表に定める違反行為の事項ごととし、同一の事項における違反については、違反の多寡にかかわらず同一の違反とするとしています。件数が増えても事項が同じなら1つの違反として扱う、という考え方です。
営業所が違っても再違反になるものがある
初違反・再違反・累違反は原則として同一営業所で判定しますが、日車数通達の記1(2)は、次の違反については同一営業所におけるものかどうかを問わないとしています。事業計画に従うべき命令や安全管理規程の変更命令などの命令違反、名義貸しと事業の貸渡し、そして検査の拒否または虚偽の陳述です。会社としての姿勢が問われる違反は、営業所をまたいで数えられます。
加重されるとき、軽減されるとき
別表の基準日車は出発点であって、そこから増えることも減ることもあります。どちらも日車数を定めた通達に規定があります。なお、どの帳票にどの保存義務があるかは法定帳票の一覧にまとめています。
加重
記5は、違反の内容や、違反に伴って引き起こした事故の内容が次のいずれかに当たる場合には、日車数等を加重することができるとしています。
| 号 | 内容 |
|---|---|
| ① | 違反行為もしくはこれを証するものを隠滅し、または隠滅したと疑うに足りる相当の理由が認められる場合 |
| ② | 違反行為が救護義務違反、酒酔い運転、薬物等使用運転、妨害運転、無免許運転、酒気帯び運転、過労運転、大型自動車等無資格運転、無車検運行その他悪質と認められる行為に係るもの |
| ③ | 違反事実または違反に伴い引き起こした事故等が社会的影響のあるものである場合 |
加重の幅は記6にあります。日車数はその2倍を上回らない日車数に、勧告は警告に、警告は10日車に加重するとされています。
記録を取り繕う行為が、最も重く扱われる
表7の①は、違反そのものではなく、違反を隠す行為を加重の対象にしています。監査の連絡を受けてから帳票をつくり直す、日付をさかのぼって記入するといった対応は、元の違反の日車数を2倍まで引き上げる理由になります。別表でも、点呼記録・業務の記録・運行記録計の記録について、改ざんや不実記載は初違反60日車・再違反120日車と、記録が全くない場合よりも重い量定が置かれています。
軽減
記7による軽減は、対象が絞られています。輸送の安全確保義務違反のうち、初違反であって、基準日車等が10日車以下、勧告または警告とされているものに限られます。もともと軽い違反をさらに軽くする方向の規定です。
そのうえで、違反行為を防止するために相当の注意および監督が尽くされたことの証明があった場合か、乗務員に対する輸送の安全に関する訓示や関係法令の遵守に関する指導の実施状況、安全性優良事業所への認定の有無その他の事実関係から総合的に判断して、運行管理と車両管理を概ね適切に行っていたと認められる場合に、軽減することができるとされています。
軽減の幅は記8にあり、10日車は警告に、警告は勧告に下がります。日頃の指導の記録が残っているかどうかが、ここで効いてきます。
なお、加重または軽減を行う場合その他必要と認められる場合は、地方運輸局に置かれる貨物自動車運送事業関係行政処分審査委員会の議に付すものとされています。
処分を受けたあとに続くこと
行政処分は、車が動き出せば終わりというものではありません。処分のあとに続く手続と、会社とは別に個人へ向かう処分があります。
呼び出しと、3か月以内の報告
通達1(6)は、許可の取消処分を除く行政処分等を行う場合、原則として事業者を運輸支局または地方運輸局に呼び出して事業の改善について指導するとともに、その状況について、処分を行った日から原則3か月以内に報告を行うよう措置するとしています。細部取扱いは、この呼び出しに際して、原則として違反行為に係る営業所の所長を同席させ、事業の改善状況について報告するよう指導するとしています。
輸送の安全確保命令
処分と併せて、貨物自動車運送事業法第22条にもとづく輸送の安全確保命令が出されることがあります。発動基準を定めた通達は10の場合を挙げていますが、事業者が意識しておきたいものを拾うと次のようになります。
累積点数が20点を超える事業者が、その処分の日から3年以内に、同じ地方運輸局の管轄区域内の営業所で、輸送の安全確保に係る違反行為に伴い死亡事故または重傷事故を引き起こした場合。運行管理者が選任すべき数を満たしていない場合、または選任している運行管理者が1か月以上不在となっている場合。整備管理者が選任されていない場合。そして、監査において表3の①から⑤までのいずれかに該当する違反が確認された場合です。
この命令の重さは、従わなかったときに現れます。同通達は、命令の実施状況を原則3か月以内に報告させ、報告がなければ命令違反として扱い、行政処分を行うとともに再度命令を出し、再度従わなかった場合は許可の取消処分を行うとしています。さらに、巡回指導の総合評価がEと判定された営業所に関する項目や、表3の①から⑤に該当する違反による場合については、再度の命令を出すことなく許可の取消処分を行うとされています。
運行管理者資格者証の返納命令
処分の相手は会社だけではありません。貨物自動車運送事業法第18条にもとづき、運行管理者の資格者証そのものの返納が命じられることがあります。
発令基準を定めた通達によれば、表3の①または②に該当した場合、または運行管理者の運行の安全確保に関する違反の基準日車等の総和が120日車以上となった場合に、運行管理者に対して返納が命じられます。総和が30日車以上120日車未満であれば警告です。複数の運行管理者が選任されている場合、返納命令も警告も統括運行管理者に対して行われます。なお、補助者である資格者についても、別に返納命令の定めがあります。
また、実際には運行管理業務を行っていないのに名義を事業者に使わせていた場合も、返納命令の対象です。選任の届出をした場合を含むと明記されています。
返納命令を受けると5年間は再交付されない
同通達は、返納命令処分を受けた資格者に対しては、処分の日から5年を経過しなければ運行管理者資格者証の交付を行わないとしています。返納命令に違反した場合も同様です。会社の処分が終わっても、その人が運行管理者に戻れるのは5年後ということになります。
処分は5年間、誰でも見られる場所に残る
通達第7項は、行政処分等を受けた事業者の名称と処分内容等を公表するとしています。何をどこまで公表するかは、細部取扱いを定めた課長通達の第7項に具体的に書かれています。
| 番号 | 公表される内容 |
|---|---|
| ① | 行政処分等または命令の年月日 |
| ② | 事業者の氏名または名称および主たる事務所の位置(番地まで) |
| ③ | その行政処分等または命令に係る営業所の名称および位置(番地まで) |
| ④ | 行政処分等または命令の内容 |
| ⑤ | 主な違反条項 |
| ⑥ | 監査実施の端緒および違反行為の概要 |
| ⑦ | その行政処分により付された違反点数および当該管轄区域に係る事業者の累積点数 |
番地まで出ます。監査のきっかけが何であったかという端緒も出ます。運輸局の公表資料で、事業者名の横に違反行為が並び、末尾に営業所点数と事業者点数が置かれているのは、この①から⑦までをそのまま並べているためです。
掲載は5年間続く
細部取扱いは、本省が毎月、その前月に行った行政処分等について①から⑦までをホームページで公表し、各運輸局等もこれをリンクして公表するとしています。そして、ホームページへの掲載は、掲載を行った月から5年間継続して行うとしています。
実際、国土交通省の事業者の行政処分情報検索では、過去5年間の行政処分の状況を検索できます。荷主も、求職者も、取引先も見ることができます。車両停止そのものは日数が過ぎれば終わりますが、記録は5年残ります。
21点以上になると、別枠の一覧に載る
もう一つ、節目があります。細部取扱いは、地方運輸局は3か月ごとに、その管轄区域に係る累積点数が21点以上の事業者について、事業者名、累積点数および主な違反行為を、報道機関等への資料提供と局報・ホームページへの掲載により公表するとしています。
近畿運輸局や関東運輸局が、月別の処分一覧とは別に「20点超え事業者」の一覧を出しているのは、この規定によるものです。81点で許可取消という遠い数字の手前に、21点という線が引かれていることになります。s8で触れた輸送の安全確保命令の発動基準にある「累積点数が20点を超える事業者」も、指しているのは同じ範囲です。
あわせて、本省は6か月ごとに、累積点数が21点以上の事業者について、管轄区域別に、累積点数ごとの事業者数を公表するとされています。
よくある質問
処分日車数が30日車なら、車は30日間止まるのですか。
いいえ。処分日車数は止まる日数そのものではありません。まず営業所の車両数と処分日車数から止める台数が決まり、その台数で処分日車数を割った日数だけ停止します。たとえば15両の営業所で30日車なら2両を15日間、5両の営業所で30日車なら1両を30日間となります。
止める車は自分で選べますか。
選べません。細部取扱いを定めた通達は、違反営業所等の違反車両、その違反車両と初度登録年月および最大積載量が同等の車両、処分の実効性が確保できるものとして地方運輸局の行政処分審査委員会が決定した車両、の順に指定するとしています。
違反点数はいつ消えますか。
原則として、行政処分を行った日から3年を経過する日に消滅します。行政処分を行った日とは、処分を行うべく決裁等を行った日を指します。一定の条件をすべて満たす場合に限り、2年に短縮されます。
安全性優良事業所に認定されていれば、点数は2年で消えますか。
それだけでは足りません。通達は4つの条件のいずれにも該当する場合としており、認定が出てくるのはそのうちの1つ、しかも過去2年間に行政処分を受けていないこととの選択肢の一方です。残りの3つは、所要の措置の履行と2年間処分を受けないこと、2年間一定の事故を起こしていないこと、2年間一定の悪質な運転がないことです。
処分を受けた営業所を廃止すれば、点数は早く消えますか。
早く消えるどころか、2年に短縮する規定が使えなくなります。通達は、行政処分を受けた営業所の廃止があったときは2年のただし書を適用しないとしています。処分前に車両を他の営業所へ移した場合も、その違反は移動先の営業所に係るものとしても扱われます。
違反点数は会社全体で合計されるのですか。
点数が付くのは違反のあった営業所ですが、累計は事業者ごとに管轄区域単位で行われ、その営業所を管轄する地方運輸局が管理します。同じ地方運輸局の管内にある営業所は、同じ枠で累計されることになります。
監査で同じ違反が何件も見つかると、その分だけ点数が増えますか。
違反行為は別表に定める事項ごとに見るのが原則で、同一の事項における違反は、違反の多寡にかかわらず同一の違反として扱われます。ただし、点呼の未実施のように件数に応じて日車数が決まる事項もあり、その場合は件数が日車数に反映されます。
名義貸しは一度で許可取消になりますか。
通達の建て付けは、まず各号ごとに30日間の事業停止と30点の違反点数です。そのうえで、事業停止処分を受けた日から3年以内に同一の違反をした場合に許可の取消処分となります。一度目でも、事業が30日間止まり、許可取消の基準である81点の3分の1にあたる点数が付きます。
初違反か再違反かは、どのように判断されますか。
違反を確認した日から過去3年以内に、同一営業所において同一の違反による行政処分等を受けているかどうかで判断されます。1度受けていれば再違反、2度以上受けていれば累違反です。ただし命令違反、名義貸しと事業の貸渡し、検査の拒否または虚偽の陳述については、同一営業所かどうかを問いません。
監査の連絡を受けてから帳票を整えるのは問題がありますか。
日車数を定めた通達は、違反行為やこれを証するものを隠滅した場合、または隠滅したと疑うに足りる相当の理由が認められる場合を加重の対象としています。加重されると日車数は2倍を上回らない範囲で引き上げられます。記録の改ざんや不実記載は、別表でも記録が全くない場合より重い量定が置かれています。
事業停止の間は、何もできなくなるのですか。
処分対象営業所は、期間中その営業所に所属する全ての事業用自動車の使用を停止し、貨物自動車利用運送などの関係行為も停止させられます。ただし、住民生活または経済活動に著しい支障を及ぼすと認められる場合は、必要最小限の車両に限り使用が認められることがあります。その場合、認められた分に相当する使用停止処分が別途行われます。
処分を受けたあとに、こちらから何かする必要はありますか。
許可の取消処分を除き、原則として運輸支局または地方運輸局に呼び出され、事業の改善について指導を受けます。そのうえで、改善の状況について、処分を行った日から原則3か月以内に報告するよう措置されます。呼び出しには、原則として違反行為に係る営業所の所長も同席させるとされています。
運行管理者個人が処分を受けることはありますか。
あります。運行管理者の運行の安全確保に関する違反の基準日車等の総和が120日車以上となった場合などに、運行管理者資格者証の返納が命じられます。30日車以上120日車未満であれば警告です。返納命令を受けると、処分の日から5年を経過しなければ資格者証の交付を受けられません。
行政処分の記録は、いつまで公表されますか。
細部取扱いを定めた通達は、ホームページへの掲載を、掲載を行った月から5年間継続して行うとしています。公表される内容には、事業者名と主たる事務所の位置、営業所の名称と位置が番地まで含まれ、監査実施の端緒や違反行為の概要、付された違反点数と累積点数も含まれます。
累積点数が21点を超えると、何か起こりますか。
地方運輸局は3か月ごとに、管轄区域に係る累積点数が21点以上の事業者について、事業者名、累積点数および主な違反行為を、報道機関等への資料提供と局報およびホームページへの掲載により公表するとされています。月ごとの処分一覧とは別枠の一覧に載ることになります。
参照した根拠・出典を見る
本記事は次の一次情報にもとづいて作成しています。いずれも原文を確認したうえで記述しました。基準日は令和7年4月1日施行の内容です。
- 貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について(平成21年9月29日付け国自安第73号、国自貨第77号、国自整第67号。令和7年2月28日一部改正、令和7年4月1日施行)
- 貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準の細部取扱いについて(平成21年9月29日付け国自安第74号、国自貨第78号、国自整第68号。令和7年2月28日一部改正、令和7年4月1日施行)
- 貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について(平成21年9月29日付け国自安第75号、国自貨第79号、国自整第69号。令和7年2月28日一部改正、令和7年4月1日施行)および同別表
- 貨物自動車運送事業法に基づく輸送の安全確保命令の発動基準について(平成16年6月30日付け国自総第120号、国自貨第29号。令和7年2月28日一部改正、令和7年4月1日施行)
- 貨物自動車運送事業法に基づく運行管理者資格者証の返納命令発令基準等について(平成8年11月1日付け自貨第104号、自環第245号。令和7年2月28日一部改正、令和7年4月1日施行)
- 貨物自動車運送事業法(平成元年法律第83号)第18条、第22条、第33条、第34条
- 国土交通省 事業者の行政処分情報検索
- 近畿運輸局 貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の状況
本文中の計算例は、制度の説明のために設けた架空の設定です。実在の事業者とは関係ありません。
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