運転者台帳は、トラック運送事業で必ず備え置かなければならない帳票のひとつです。ところが「どこまで書けば足りるのか」がはっきりしないまま、協会で配られた様式の空欄を埋めている、という事業者の方は少なくありません。実は、様式にある欄のすべてが法令で求められているわけではありません。この記事では、法令が求める記載事項10項目に番号を振り、1つずつ書き方を確認していきます。
この記事の要点
- 法令上の正式名称は「運転者等台帳」です。運転者だけでなく特定自動運行保安員も対象になります(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5)。
- 法令が求める記載事項は10項目だけです。血液型・家族状況・住居状況などの欄は、法令が求めているものではありません。
- 様式は法令で定められていません。条文は「一定の様式」としか書いておらず、都道府県トラック協会ごとに欄の構成が違います。他県の様式と違っても問題ありません。
- マイナ免許証だけを持つ運転者にも対応できます。条文は「免許情報記録の番号」を認めています。
- 保存期間は、運転者でなくなった日から3年間です。ただし労働者名簿を兼ねている様式では、労働基準法の保存義務が別にかかります。
運転者等台帳とは|正式名称と根拠条文
運転者台帳は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5にもとづき、運転者ごとに作成して営業所に備え置く帳票です。運転者の免許の状況、事故や違反の履歴、健康状態、受けた指導や適性診断の記録を1枚にまとめたもので、監査や巡回指導で必ず確認されます。
実務では「運転者台帳」と呼ばれていますが、条文上の名称は「運転者等台帳」です。「等」が付いているのは、運転者に加えて特定自動運行保安員も対象に含まれるためです。
名称のずれに戸惑わなくて大丈夫です
協会で配られる様式や、社内で使っている呼び名が「運転者台帳」のままでも、それ自体が問題になることはありません。条文が求める内容が記載されていれば足ります。ただし、条文を検索したり、監査で根拠を確認したりするときは「運転者等台帳」で調べないと見つからないことがあります。
条文はどうなっているか
第1項が「作成して営業所に備え置く義務」、第2項と第3項が「対象者でなくなったあとの保存義務」を定めています。第2項が運転者について、第3項が特定自動運行保安員について、それぞれ別に規定されている点が特徴です。
根拠条文を見る(貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5)
第九条の五 一般貨物自動車運送事業者等は、運転者等ごとに、第一号から第九号までに掲げる事項を記載し、かつ、第十号に掲げる写真を貼り付けた一定の様式の運転者等台帳を作成し、これを当該運転者等の属する営業所に備えて置かなければならない。
2 一般貨物自動車運送事業者等は、運転者が転任、退職その他の理由により運転者でなくなった場合には、直ちに、当該運転者に係る前項の運転者等台帳に運転者でなくなった年月日及び理由を記載し、これを三年間保存しなければならない。
3 一般貨物自動車運送事業者等は、特定自動運行保安員が転任、退職その他の理由により特定自動運行保安員でなくなった場合には、直ちに、(…)これを三年間保存しなければならない。
(出典:貨物自動車運送事業輸送安全規則。2026年8月時点の条文。各号の内容は本文の表1を参照)
誰について作成するのか
条文の書き出しは「運転者等ごとに」です。つまり、営業所に所属する運転者と特定自動運行保安員のそれぞれについて、1人1枚を作成します。
輸送安全規則第3条第1項は、事業計画に従い業務を行うに必要な員数の運転者または特定自動運行保安員を、常時選任しておかなければならないと定めています。ここで選任された運転者等が、台帳を作成すべき相手です。
条文の主語は「一般貨物自動車運送事業者等」です
第9条の5の対象は一般貨物自動車運送事業者等であり、貨物軽自動車運送事業者(黒ナンバー)は別の条文で規律されています。軽貨物には第9条の6の「貨物軽自動車運転者等台帳」が用意されており、記載事項が異なります。詳しくは第12章で整理します。
特定自動運行保安員とは
特定自動運行保安員は、運転者が乗車しない自動運転(特定自動運行)で貨物運送を行う場合に選任する担当者です。現時点で該当する事業者は限られますが、条文はすでに台帳の対象として書かれています。該当しない事業者は、この部分を読み飛ばして問題ありません。
法令が求める記載事項は10項目
ここがこの記事の中心です。運転者等台帳に法令が求めている記載事項は、次の10項目だけです。お手元の様式にこれ以外の欄があっても、それは法令の要求ではありません。
第1号から第9号までが「記載する事項」、第10号だけが「貼り付ける写真」と、条文上も書き分けられています。また⑤と⑨には「運転者にあっては」という限定が付いており、特定自動運行保安員には求められません。
| 番号 | 記載事項 | 対象 |
|---|---|---|
| ① | 作成番号及び作成年月日 | 運転者等 |
| ② | 事業者の氏名又は名称 | 運転者等 |
| ③ | 運転者等の氏名、生年月日及び住所 | 運転者等 |
| ④ | 雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日 | 運転者等 |
| ⑤ | 運転免許に関する事項(番号・有効期限・年月日・種類・条件) | 運転者のみ |
| ⑥ | 事故を引き起こした場合は、その概要 | 運転者等 |
| ⑦ | 道路交通法第108条の34の通知を受けた場合は、その概要 | 運転者等 |
| ⑧ | 運転者等の健康状態 | 運転者等 |
| ⑨ | 指導の実施及び適性診断の受診の状況 | 運転者のみ |
| ⑩ | 作成前6月以内に撮影した写真 | 運転者等 |
様式は法令で決まっていません
条文は「一定の様式の運転者等台帳」と書いているだけで、様式そのものは定めていません。そのため、都道府県のトラック協会が配布している様式は、県によって欄の構成が違います。家族状況や住居状況の欄がある様式もあれば、ない様式もあります。
次章からは、この10項目を1つずつ見ていきます。様式にあって条文にない欄をどう扱うかは、第9章でまとめて整理します。
①〜④の書き方|作成番号から選任年月日まで
最初の4項目は、台帳そのものを特定するための情報と、運転者等の基本情報です。難しい判断は必要ありませんが、④だけは注意点があります。
①作成番号及び作成年月日
台帳を1枚ずつ管理するための通し番号と、作成した日付です。番号の付け方について、条文は何も定めていません。営業所ごとの連番でも、入社順でも、社内で管理できる方式であれば差し支えありません。
②事業者の氏名又は名称
法人であれば商号、個人事業であれば事業主の氏名を記載します。営業所名の欄は条文にはありません。ただし台帳は「当該運転者等の属する営業所に備えて置く」ものなので、複数営業所がある事業者では、どの営業所の台帳かが分かるようにしておくほうが実務上は確実です。
③運転者等の氏名、生年月日及び住所
条文が求めているのはこの3つです。ふりがな・性別・電話番号の欄がある様式もありますが、これらは第9条の5が求めるものではありません。
④雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日
この2つは別の日付です。条文が2つを並べて書いているのは、両者がずれる場合があるためです。
2つの日付がずれる例
入社時は事務職として雇用し、その後に運転者として選任した場合、雇入れの年月日は入社日、選任された年月日は運転者になった日です。両方が同じ日になることも多いですが、同じ日だからといって片方を空欄にしてよいわけではありません。
なお、運転者の選任については、運行管理者や整備管理者の選任届のような運輸支局への届出は求められていません。台帳に記載して営業所に備え置くことが、選任を記録する方法になります。
記載事項が変わったときの訂正
第9条の5には、記載内容を更新する時期についての定めはありません。ただし、労働者名簿を兼ねた様式を使っている場合は、労働基準法第107条第2項により「記入すべき事項に変更があった場合においては、遅滞なく訂正しなければならない」とされています。住所変更や免許の更新があったときは、そのつど直しておくのが安全です。
⑤運転免許に関する事項|マイナ免許証の場合
条文は、運転免許について次の3つをイ・ロ・ハに分けて求めています。この項目は運転者だけが対象で、特定自動運行保安員には求められません。
- イ 運転免許証(又は免許情報記録)の番号及び有効期限
- ロ 運転免許の年月日及び種類
- ハ 運転免許に条件が付されている場合は、当該条件
ハの「条件」は、免許証に記載される眼鏡等・AT車限定といった条件のことです。条件が付いていない運転者については、記載する事項がありません。
マイナ免許証だけを持つ運転者はどう書くか
ここが近年で最も変わった点です。イの条文は「運転免許証又は道路交通法第95条の2第2項第1号に規定する免許情報記録の番号及び有効期限」となっており、マイナ免許証(特定免許情報を記録した個人番号カード)にも対応しています。
道路交通法第95条の2は、免許証の交付を受ける際に交付を希望しない旨を申し出ることを認めており(第6項)、また免許証とマイナ免許証の両方を持つ人が免許証を返納することも認めています(第4項)。つまり免許証を持たない運転者が現実に生じます。
| 条文 | 免許証を持つ場合 | マイナ免許証のみの場合 |
|---|---|---|
| イ 番号 | 免許証の番号 | 免許情報記録の番号 |
| イ 有効期限 | 免許証の有効期限 | 免許情報記録の有効期間の末日 |
| ロ 年月日・種類 | 免許証の記載 | 免許の年月日・免許の種類 |
| ハ 条件 | 免許証の記載 | 道路交通法第93条第2項の条件に係る事項 |
様式が追いついていない場合があります
協会が配布している様式には、欄の名称が「免許証番号」のままのものがあります。条文が求めているのは「免許証の番号又は免許情報記録の番号」なので、その欄に免許情報記録の番号を記載すれば、条文上の要求は満たせます。ただし様式の改訂状況は協会によって異なるため、最新の様式が出ていないかは各協会にご確認ください。
⑥⑦事故と道路交通法の通知
この2つは、書くかどうかの判断が必要になる項目です。国土交通省の解釈通達に、判断の基準が示されています。
⑥事故を引き起こした場合は、その概要
通達は、「事故を引き起こした場合」を原則としてその運転者等が事故の発生に最も大きな責任を有する場合、いわゆる第1当事者である場合と解しています。明らかに第2当事者以下であることが分かる場合は、記載しなくてよいとされています。
第1当事者かどうか、すぐに判断できないとき
通達は、判断を保留する旨を付して記載するという扱いを示しています。そのうえで、後に自動車保険の支払査定・示談・裁判等の結果によって判断できたときに、その旨を記載し、判断の根拠とした資料の写しを添付させることとされています。「分からないから空欄」ではなく、「保留と書いて後で確定させる」が正しい手順です。
記載する内容は、事故の発生日時・発生場所・概要(損害の程度を含む)です。これは輸送安全規則第9条の2にもとづく事故の記録の作成に併せて行います。事故の記録の写しを台帳に添付するか、発生日時と損害の程度だけを台帳に記載し、それ以外は事故の記録の作成番号等で参照できるようにする方法でも構いません。
⑦道路交通法第108条の34の通知を受けた場合は、その概要
これは、運転者が事業用自動車の運行中に交通違反等を行った場合に、公安委員会から使用者に対して行われる通知です。通達は、通知の内容にもとづき、違反の種別・年月日・場所を記載するとしています。
さらに通達は、通知がない場合であっても、運転者が事業用自動車の運行中に道路交通法の規定に違反して処分された場合には、極力自主的に運転者から報告させ、報告があったときには同様に概要を記載するよう指導するとしています。通知が来た分だけ書けばよい、という運用ではありません。
⑧健康状態と⑨指導・適性診断
⑧運転者等の健康状態
「健康状態」と言われると何をどこまで書くのか迷いますが、通達が答えを示しています。労働安全衛生規則第51条の規定にもとづいて作成された健康診断個人票、または同令第51条の4にもとづく健康診断の結果の通知の写しを添付することで足りるとされています。
所見を文章で書く必要はありません
健康診断の結果を要約したり、所見を書き写したりする必要はなく、結果の写しを添付すれば条文上の要求は満たせます。様式に「健康状態」の記入欄があっても、受診日と「結果の写しを添付」と記載する運用で差し支えありません。
⑨指導の実施及び適性診断の受診の状況
条文は「第十条第二項の規定に基づく指導の実施及び適性診断の受診の状況」と限定しています。すべての指導ではなく、特定の運転者に対する特別な指導と適性診断が対象です。この項目も運転者だけが対象です。
| 区分 | 該当する運転者 |
|---|---|
| 事故惹起運転者 | 事故を引き起こした者(⑥と同じく第1当事者の考え方による) |
| 初任運転者 | 運転者として新たに雇い入れた者、初めて事業用自動車に乗務する者 |
| 高齢運転者 | 65才以上の運転者 |
診断が重なるときの扱い(通達で明示されています)
新たに雇い入れた運転者が事故惹起者にも高齢運転者にも該当すると、診断が重複します。通達はこの場合の扱いを次のとおり定めています。
- 事故惹起者に該当する場合は、特定診断Ⅰ又はⅡの受診をもって初任診断を受診させたものとみなして差し支えない
- 65才以上である場合は、適齢診断の受診をもって初任診断を受診させたものとみなして差し支えない
- 両方に該当する場合は、特定診断Ⅰ又はⅡの受診をもって初任診断及び適齢診断を受診させたものとみなして差し支えない
台帳には、実際に受診した診断の種類と受診年月日を記載します。
⑩写真の要件
第10号だけは「記載する事項」ではなく「貼り付ける写真」です。条文が求めている要件は次の5つです。
- 台帳の作成前6月以内に撮影したもの
- 単独(本人だけが写っている)
- 上三分身
- 無帽
- 正面・無背景
写真の寸法は法令で定められていません
「運転者台帳の写真は何センチか」という質問をよくいただきますが、条文は寸法を定めていません。上の5つの要件を満たし、使用している様式の写真枠に収まっていれば足ります。様式によって枠の大きさは異なるため、他社と違うサイズであっても、それ自体が問題になるわけではありません。
なお「上三分身」については、条文はこれ以上の定義を置いていません。言葉の解釈が問題になる場面が想定される場合は、あらかじめ運輸支局にご確認ください。また、条文が求めているのは「作成前6月以内に撮影した写真」で、作成後に貼り替えを求める規定はありません。
様式にあって条文にない欄
協会が配布している様式を開くと、第3章で見た10項目よりもずっと多くの欄が並んでいます。血液型、家族状況、住居や通勤の方法、保険関係——これらは何なのか。ここを整理しておくと、台帳を書くときの迷いがなくなります。
様式の欄は、大きく3つの層に分かれています。
②労働者名簿を兼ねている様式が多い
様式の名称が「運転者台帳(労働者名簿)」となっているものがあります。これは運送法令の台帳と、労働基準法の労働者名簿を1枚で兼ねるという趣旨です。
労働者名簿は、労働基準法第107条第1項により、事業場ごとに労働者について調製し、氏名・生年月日・履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入するものとされています。厚生労働省令で定める事項は、労働基準法施行規則第53条に置かれています。
| 記載事項 | 根拠 |
|---|---|
| 氏名 | 労働基準法第107条第1項 |
| 生年月日 | 労働基準法第107条第1項 |
| 履歴 | 労働基準法第107条第1項 |
| 性別 | 労働基準法施行規則第53条第1号 |
| 住所 | 同第2号 |
| 従事する業務の種類 | 同第3号(常時30人未満の事業は不要) |
| 雇入の年月日 | 同第4号 |
| 退職の年月日及びその事由(解雇の場合は理由を含む) | 同第5号 |
| 死亡の年月日及びその原因 | 同第6号 |
「従事する業務の種類」は30人未満なら記入不要です
労働基準法施行規則第53条第2項は、常時30人未満の労働者を使用する事業においては、従事する業務の種類を記入することを要しないと定めています。様式に「※常時30人未満の労働者を使用する事業場においては、記入不要」という注記が入っているのは、この規定によるものです。
なお「履歴」については、条文はその範囲を定めていません。様式に最終学歴や職歴の欄があるのは、この履歴を記入するためのものと考えられますが、どこまで書けば足りるかを条文から一義的に決めることはできません。
③法令の義務ではない欄
血液型、家族状況、住居の種類や通勤方法、家族などへの連絡方法、保険関係、運転経験——これらは運送法令にも労働基準法にも根拠がありません。事業者や協会が、実務上の必要から設けている欄です。
たとえば緊急連絡先や血液型は、事故や急病が起きたときに使う情報です。運転経験の欄は、その運転者にどの車種をどれだけ任せられるかを判断する材料になります。法令の要求ではありませんが、それぞれ用途があって置かれている欄です。
「条文にないから書かなくてよい」という整理はしていません
この記事で3層に分けているのは、どこまでが法令上の義務かを明確にするためであって、③の欄を省略することを勧める趣旨ではありません。監査や巡回指導で問われるのは①(と、労働基準監督署の調査では②)ですが、③には③の役割があります。自社でどう使うかを決めたうえで運用してください。
保存期間は3年|労働者名簿との違い
「運転者台帳は何年保存するのか」は、よく調べられている項目です。答えは3年ですが、正確には「在職中の備え置き」と「退職後の保存」は別の話です。
在職中は「備え置く」義務
第9条の5第1項が求めているのは、台帳を作成して営業所に備えて置くことです。ここには期間の定めがありません。運転者等である間は、ずっと営業所に置いておくことになります。
運転者等でなくなったら3年間の保存
期間が出てくるのは第2項と第3項です。運転者が転任・退職その他の理由により運転者でなくなった場合には、直ちに、その年月日と理由を台帳に記載し、これを3年間保存しなければなりません。特定自動運行保安員についても、第3項に同じ規定が置かれています。
「直ちに」記載するのは、退職時の日付と理由です
3年の起算点は、運転者等でなくなった日です。記載を後回しにすると、いつから3年なのかが台帳から読み取れなくなります。退職手続きと同時に処理しておくのが確実です。
労働者名簿を兼ねている場合は、労働基準法の保存義務が別にかかる
ここが見落とされやすいところです。労働者名簿の保存期間は、労働基準法第109条により5年間と定められています。ただし同法附則第143条第1項により、当分の間は3年間と読み替えられています。
起算点は、労働基準法施行規則第56条第1号により労働者の死亡、退職又は解雇の日です。
いま同じ3年でも、根拠は別々です
現時点ではどちらも3年なので、結果として同じ扱いになります。ただし労働者名簿の3年は「当分の間」の経過措置であり、法律の本文は5年です。経過措置が終われば、労働者名簿の保存期間だけが5年になります。兼用の様式を使っている場合、そのときは長いほうに合わせることになります。
3年たったら破棄してよいか
運転者等台帳としての保存義務は、運転者等でなくなった日から3年で終わります。ただし、その台帳が労働者名簿を兼ねている場合は、労働基準法側の保存義務が終わっているかも併せて確認してください。また、台帳に添付した健康診断結果の写しなど、別の保存義務がかかる書類が挟まっていることもあります。
電子データで作成・保存できるか
紙の台帳をファイルに綴じている事業者が多いと思いますが、電子データで作成し、保存することもできます。これは解釈通達に明記されています。
国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則の第3条第1項及び第5条第1項により、書面の作成・保存に代えて、運転者等台帳に係る電磁的記録の作成・保存を行うことができるとされています。
表計算ソフトや管理システムで運用できます
「原本は紙でなければならない」という決まりはありません。エクセルで作成して保存する運用も、市販の管理システムを使う運用も、この規定にもとづいて認められます。ただし電子化しても、記載すべき事項が10項目そろっている必要があることは変わりません。
写真の扱いは確認をおすすめします
条文は写真について「貼り付けた」と書いています。電磁的記録で作成する場合に写真をどう扱うかについて、通達は具体的な方法を示していません。画像データを台帳に埋め込む方法で問題ないかは、運用を始める前に管轄の運輸支局にご確認いただくのが確実です。
軽貨物の台帳との違い
ここまでは一般貨物自動車運送事業者等の話でした。貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)には、輸送安全規則第9条の6に「貨物軽自動車運転者等台帳」という別の規定が置かれています。
対象は四輪以上の軽自動車を使う事業者に限られます
第9条の6は、「四輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業者に限る」と明記しています。二輪の自動車(バイク便など)だけで事業を行っている場合は、この条文の対象になりません。
記載事項は5項目だけです
一般貨物の10項目に対して、貨物軽自動車運転者等台帳は5項目です。写真も、免許に関する事項も、事故や健康状態も求められていません。
| 項目 | 一般貨物(第9条の5) | 軽貨物(第9条の6) |
|---|---|---|
| 作成番号及び作成年月日 | 必要 | 必要 |
| 事業者の氏名又は名称 | 必要 | 必要 |
| 氏名・生年月日・住所 | 必要 | 必要 |
| 日付の記載 | 雇入れの年月日と選任された年月日 | 初めて運行の業務に従事した年月日 |
| 運転免許に関する事項 | 必要 | 規定なし |
| 事故の概要 | 必要 | 規定なし |
| 道路交通法の通知の概要 | 必要 | 規定なし |
| 健康状態 | 必要 | 規定なし |
| 指導の実施・適性診断の受診状況 | 必要(運転者のみ) | 必要(運転者のみ) |
| 写真 | 必要 | 規定なし |
| 保存期間 | 運転者等でなくなった日から3年 | 運転者等でなくなった日から3年 |
日付の項目が違う点にご注意ください。一般貨物が「雇入れの年月日及び運転者等に選任された年月日」であるのに対し、軽貨物は「運転者等が初めて運行の業務に従事した年月日」です。
台帳を作るのは貨物軽自動車安全管理者の業務です
解釈通達は、貨物軽自動車安全管理者が行う業務のひとつとして、第9条の6の規定により貨物軽自動車運転者等台帳を作成し、営業所に備え置くことを挙げています。一人で事業を行っている場合も、自らこの業務を行うこととされています。
巡回指導ではどう確認されるか
運転者等台帳は、適正化事業実施機関の巡回指導で確認される帳票のひとつです。帳票類の整備状況は評価の対象になっており、当日は実物を提示することになります。
当日までに見ておくとよいところ
- 在籍している運転者全員分の台帳がそろっているか
- 免許の有効期限が切れたままになっていないか
- 事故や違反があった運転者の欄が空欄のままになっていないか
- 適性診断・特別な指導を受けた運転者の記録が反映されているか
- 退職者の台帳に、退職年月日と理由が記載されているか
事業の譲渡・分割で台帳を引き継いだ場合
あまり知られていませんが、解釈通達には次の取扱いが示されています。
法人の分割や事業の全部・一部の譲渡により事業の承継があった場合において、承継前の事業者で運転者として常時選任されていた者が、引き続き承継後の事業者で運転者として常時選任される者となる場合は、初めて事業用自動車に乗務する者に該当しない者として取り扱って差し支えないとされています。
ただし台帳を引き継いでいることが条件です
この取扱いが認められるのは、承継前の事業者から、その運転者についての運転者等台帳と、これに添付する書面またはその写しを承継後の事業者が引き継いだ者に限られます。台帳を引き継がなければ、初任運転者として特別な指導と初任診断が必要になります。事業承継の場面では、台帳の引継ぎを忘れないようにしてください。
よくある質問
Q. 運転者台帳と運転者等台帳は違うものですか。
A. 同じものです。貨物自動車運送事業輸送安全規則第9条の5の条文上の名称が「運転者等台帳」で、運転者だけでなく特定自動運行保安員も対象に含まれるため「等」が付いています。実務で「運転者台帳」と呼んでいることや、様式の名称が「運転者台帳」であること自体は問題になりません。
Q. 運転者台帳の様式に決まりはありますか。
A. 条文は「一定の様式」と書いているだけで、様式そのものを定めていません。そのため都道府県のトラック協会が配布している様式は、県によって欄の構成が異なります。家族状況や住居状況の欄がある様式もあれば、ない様式もあります。
Q. 写真のサイズに決まりはありますか。
A. 条文は寸法を定めていません。作成前6月以内に撮影した、単独・上三分身・無帽・正面・無背景の写真であることが求められているだけです。使用している様式の写真枠に収まっていれば足ります。
Q. マイナ免許証しか持っていない運転者は、免許欄をどう書きますか。
A. 条文は「運転免許証又は道路交通法第95条の2第2項第1号に規定する免許情報記録の番号及び有効期限」と定めており、免許情報記録の番号を記載すれば足ります。様式の欄の名称が「免許証番号」のままであっても、その欄に記載することで条文上の要求は満たせます。
Q. 運転者台帳の保存期間は何年ですか。
A. 運転者が転任、退職その他の理由により運転者でなくなった場合には、その年月日と理由を記載したうえで3年間保存します。在職中は保存期間の問題ではなく、営業所に備えて置く義務がかかります。なお労働者名簿を兼ねた様式では、労働基準法にもとづく保存義務が別にかかります。
Q. 事故を起こしたとき、どの事故を台帳に書きますか。
A. 解釈通達は、原則としてその運転者等が事故の発生に最も大きな責任を有する場合、いわゆる第1当事者である場合を指すとしています。明らかに第2当事者以下である場合は記載しなくてよく、直ちに判断できない場合は判断を保留する旨を付して記載し、後に判断できたときにその旨を記載することとされています。
Q. 運転者台帳はパソコンで作成・保存してもよいですか。
A. できます。解釈通達は、国土交通省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則第3条第1項及び第5条第1項により、書面の作成・保存に代えて電磁的記録の作成・保存を行うことができるとしています。
Q. 軽貨物(黒ナンバー)でも運転者台帳は必要ですか。
A. 四輪以上の軽自動車を使用して貨物を運送する事業者には、輸送安全規則第9条の6により貨物軽自動車運転者等台帳の作成と備置きが求められます。記載事項は5項目で、写真や免許に関する事項は含まれません。二輪の自動車だけで事業を行っている場合は、この条文の対象になりません。
参照した根拠・出典を見る
法令
- 貨物自動車運送事業輸送安全規則 第9条の5(運転者等台帳)、第9条の6(貨物軽自動車運転者等台帳)、第9条の2(事故の記録)、第3条第1項、第10条第2項
- 道路交通法 第93条第2項、第95条の2(特定免許情報の記録等)、第108条の34
- 労働基準法 第107条(労働者名簿)、第109条(記録の保存)、附則第143条第1項
- 労働基準法施行規則 第53条(労働者名簿の記載事項)、第56条(保存期間の起算日)
- 労働安全衛生規則 第51条、第51条の4
通達
- 貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について(平成15年3月10日付け国自総第510号、国自貨第118号、国自整第211号。令和8年6月26日最終改正)のうち、第9条の5、第9条の6、第9条の2、第10条、第33条の2
様式
- 大阪府トラック協会「事業法関連帳票サンプル」に掲載の運転者台帳(労働者名簿)。様式の欄の構成を確認するために参照(2026年8月時点)
この記事で確認しきれなかった点
- 電磁的記録で台帳を作成する場合の写真の具体的な扱い。通達に明示がないため、運用前に運輸支局への確認をおすすめします
- 条文にある「上三分身」の定義。条文にも通達にも定義は置かれていません
- 労働者名簿の記載事項である「履歴」の範囲。条文は範囲を定めていません
条文・通達は2026年8月時点で確認したものです。制度は改正されることがあります。本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を保証するものではありません。
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