点呼記録簿の書き方|記載事項・指示事項の例・保存期間を行政書士が解説

点呼記録簿は、営業所に備える帳票のなかで最も枚数が多く、監査でも巡回指導でも必ず見られる書類です。様式は各地のトラック協会が配布しているので用意すること自体は難しくありませんが、「指示事項の欄に何を書けばいいのか」「業務後の点呼でも同じ項目を埋めるのか」で手が止まることが多いところです。この記事では、条文と通達が求めている記録事項を点呼の種類ごとに整理し、監査で「未実施」「不適切」とされる点呼の中身まで確認していきます。

この記事の要点

  • 記録する項目は、業務前・中間・業務後で違います。同じ様式を3回埋めればよい、という構造ではありません。
  • 指示事項の欄に、通達の模範解答はありません。その運行で確認したこと、伝えたことを具体的に書くことになります。ただし異常気象時に講じる措置だけは、通達が具体的に挙げています。
  • 「実施したのに未実施とされる」場合があります。自己点呼、要件を満たさない者による点呼、業務開始後に行った点呼などです。
  • アルコール検知器は、備えるだけでは足りません。毎日と週1回、それぞれ確認すべき事項が通達で定められています。
  • 記録の改ざん・不実記載は初違反60日車です。作らないことより重く扱われます。
目次

点呼記録簿とは何か

点呼記録簿は、貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第5項にもとづく法定帳票です。条文は、点呼を行い、報告を求め、確認を行い、指示をしたときは、運転者等ごとに点呼を行った旨、報告・確認・指示の内容、そして次の事項を記録し、その記録を1年間保存しなければならないとしています。

表1 条文が挙げる記録事項(第7条第5項)
記録する事項
第1号点呼を行った者及び点呼を受けた運転者等の氏名
第2号点呼を受けた運転者等が従事する運行の業務に係る事業用自動車の自動車登録番号又は車両番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示
第3号点呼の日時
第4号点呼の方法
第5号その他必要な事項

条文の5項目だけでは足りません

条文が号として挙げているのはこの5つですが、その前段に「点呼を行った旨並びに報告、確認及び指示の内容」という記録義務が書かれています。つまり酒気帯びの有無や健康状態の確認結果、運転者へ伝えた指示の内容も記録の対象です。号だけを見て様式を作ると、必要な欄が足りなくなります。

記録する項目は点呼の種類で違う

解釈通達は、点呼記録簿に記録しておくべき事項を業務前・中間・業務後の3つに分けて示しています。同じ内容を3回書くのではなく、点呼ごとに項目が違います。

図1 点呼の種類ごとの記録項目 記録する項目 業務前 中間 業務後 点呼執行者名・運転者等の氏名 車両番号・点呼日時・点呼方法 運転者の酒気帯びの有無 疾病・疲労・睡眠不足等の状況 日常点検の状況 指示事項 自動車・道路・運行の状況/交替の通告 網かけの4行が、点呼によって有無の分かれる項目です

業務後の点呼に「指示事項」の欄はありません

通達が業務後点呼の記録事項として挙げているのは、点呼執行者名・運転者等の氏名・車両番号等・点呼日時・点呼方法・自動車、道路及び運行の状況交替運転者等に対する通告・酒気帯びの有無・その他必要な事項です。指示事項も、疾病・疲労等の状況も、日常点検の状況も含まれていません。業務後は「これから運転する人」ではなく「運転を終えた人」への点呼だからです。

中間点呼では、点呼の方法を必ず具体的に書きます

点呼方法として記録するのは、業務前と業務後では「アルコール検知器を使ったかどうか」と「対面でなかった場合はその具体的な方法」の2つです。対面で行ったのであれば、具体的な方法まで書く必要はありません。

ところが中間点呼には、この「対面でなかった場合は」という条件が付いていません。中間点呼は、そもそも対面できない業務について行うものだからです。したがって、電話なのか遠隔点呼なのかを必ず記録することになります。

中間点呼が必要になる運行の判断は運行指示書の記事で整理しています。

各項目に何を書くか

点呼執行者名

実際に点呼を行った人の氏名を書きます。運行管理者と補助者のどちらが行ったかが分かる形にしてください。後述する3分の1のルールは、この記録から確認されます。

車両番号その他の識別できる表示

条文は「自動車登録番号又は車両番号その他の当該事業用自動車を識別できる表示」としています。通達は、この「その他の当該事業用自動車を識別できる表示」について、事業者が定めた当該事業用自動車の車番又は車号等と説明しています。社内の管理番号でも差し支えありませんが、どの車両か特定できることが必要です。

点呼の日時

日付だけでなく時刻まで書きます。業務の開始前に行ったこと、終了後に行ったことが、この時刻から確認されます。第8章で扱いますが、順序が逆になっている記録は「未実施」として扱われます。

点呼の方法

アルコール検知器を使用したかどうかと、対面でない場合はその具体的な方法を書きます。電話、遠隔点呼、業務前自動点呼といった区分です。

酒気帯びの有無

条文の「酒気帯びの有無」は、道路交通法施行令に規定する血液中0.3mg/mL、呼気中0.15mg/L以上であるかどうかを問いません。通達が明記しています。基準値未満だから「無し」と記録してよい、という趣旨ではありません。

疾病、疲労、睡眠不足等の状況

通達は「その他の理由」について、覚せい剤等の薬物の服用、異常な感情の高ぶり等としています。体調だけでなく、精神的な状態も確認の対象です。

日常点検の状況

道路運送車両法第47条の2による点検を実施したか、またはその確認をしたかを記録します。業務前点呼だけの項目です。

指示事項の欄をどう埋めるか

点呼記録簿でいちばん手が止まるのが、この欄です。条文が求めているのは「事業用自動車の運行の安全を確保するために必要な指示」で、これ以上の限定はありません。

第7条関係に、指示事項の例示はありません

解釈通達は、記録事項として「指示事項」を挙げていますが、第7条関係には何を書けばよいかの例示がありません。「この文言を書けば適正」という模範解答は、一次情報の範囲には存在しないということです。ただし異常気象時に限れば、同じ通達の第11条関係が具体的な内容を挙げています(後述)。以下は、それ以外の場面について、条文の構造から導ける考え方としてお読みください。

その日の点呼で確認したことが出発点になります

第7条第1項は、報告を求め確認を行う事項として、酒気帯びの有無、疾病・疲労・睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無、日常点検の実施またはその確認を挙げています。確認した結果、気になる点があれば、それに対応した指示が生じるはずです。

たとえば睡眠時間が短いと報告があったなら、休憩の取り方についての指示が自然に出てきます。日常点検で不具合の兆候があったなら、その扱いについての指示になります。

近畿運輸局は、業務前点呼の内容をこう説明しています

近畿運輸局が公表している「運行管理業務について」(自動車技術安全部保安・環境課)は、業務前点呼で行うこととして安全運行上の必要な指示を与えることを挙げ、その内容として道路や気象状況に関する指示伝達、運転免許証等の有無の確認、業務記録の用紙や運行記録紙の手渡しなどを挙げています。通達ではなく運輸局の説明資料ですので、これを書けば適正という基準ではありません。ただし、運輸局が業務前点呼の中身として何を想定しているかの手がかりにはなります。

その日の運行に固有の事情

安全規則第11条は、異常気象その他の理由により輸送の安全の確保に支障を生ずるおそれがあるときは、乗務員等に対する適切な指示その他輸送の安全を確保するために必要な措置を講じなければならないとしています。大雨、降雪、路面凍結、強風といった条件は、その日の指示事項になります。

そして同じ通達の第11条関係が、この「必要な措置」の中身を具体的に挙げています。「異常気象その他の理由」を大雨、大雪、暴風等の異常気象、土砂崩壊、路肩軟弱等の道路障害等とし、「必要な措置」を暴風警報等の伝達、避難箇所の指定、運行の中止等の指示のほか、雪道を走行するおそれがある場合には、日常点検の際に冬用タイヤの溝の深さがタイヤ製作者の推奨する使用限度を超えていないこと等を確認するなど、滑り止めの措置が講じられていることの確認としています。

荒天の日は、書く内容が通達から決まります

これらは第11条が事業者に求めている措置であって、点呼記録簿の記載例として示されているものではありません。ただし、点呼の場でその伝達や確認を行ったのであれば、行った内容がそのまま指示事項の欄に書けることになります。暴風警報を伝達した、避難できる場所を指定した、運行の中止を判断して伝えた、滑り止めの措置ができていることを確認した——いずれもその日の運行に固有の内容で、定型文にはなりません。国土交通省が公開している貨物軽自動車運送事業者向けの点呼記録簿の例でも、業務前点呼のこの欄の名称は「その他必要な指示事項(天候等)」で、天候が括弧書きで示されています。

ほかにも、初めて走る経路、工事や規制の情報、荷主先での注意点など、その運行に固有の事情が該当します。

協会が公表している指示事項の例

通達や運輸局の資料とは別に、トラック協会が指示事項の例を一覧にして公表しているものがあります。公益社団法人福岡県トラック協会が公表している「点呼の実施・記録について」には「指示事項例」の項があり、44の項目が挙げられています。手引きは、事業者または運行管理者がその日の天候・道路・運行状況その他必要に応じて安全運行に関する指示を与え、指示を与えた場合は点呼記録簿の指示事項欄にその旨を記録するとしています。

44項目を、当事務所で内容ごとに分けると次のようになります(すべてではなく、区分がわかる範囲で抜き出しています)。

  • 速度・車間・進路 法定速度遵守/車間距離の保持/追い越し注意/通行区分厳守
  • 場所ごとの注意 踏切注意/カーブ・交差点注意/横断歩道注意/路肩注意
  • 歩行者・自転車 歩行者・自転車に注意/老人と子供に注意/発進時の前後左右の確認
  • 積載 過積載運行禁止/積載状況の確認と記録/積荷の確実な固縛固定
  • 体調と時間 居眠り運転防止/疲労・過労運転禁止/連続運転・無理な運行の禁止/適時適切な休憩・休息
  • してはいけない運転 飲酒・酒気帯び運転厳禁/無免許(免許停止中含む)運転厳禁/運転中の携帯電話使用厳禁/脇見運転禁止
  • 点検と報告 日常(運行前)点検の確行/適時適切な報告の実施
  • 異常気象時(災害時等) 雨天・霧発生時のライト点灯/警報等の伝達/状況報告の実施/運行中止の指示/避難箇所の指定

異常気象時の項目は、通達が挙げている措置と重なります

手引きが異常気象時(災害時等)の指示として挙げている警報等の伝達・運行中止の指示・避難箇所の指定は、解釈通達の第11条関係が「必要な措置」として挙げているものと同じです。協会の例示のうち、この部分には通達の裏づけがあります。荒天の日に何を書くか迷ったときは、ここから選べば根拠のある記録になります。

一覧から順に書き写す使い方は想定されていません

手引き自身が「その日の天候・道路・運行状況その他必要に応じて」と書いています。一覧は、その日の状況に当てはまるものを選ぶための材料であって、順番に書き写すためのものではありません。なお、この手引きは平成23年5月1日施行の改正に対応した内容で、「乗務員」「乗務前点呼」など、現在は「運転者等」「業務前点呼」に改められた用語が使われています。項目そのものは古びていませんが、手続きの説明は最新の条文で確認してください。

毎日同じ文言が並ぶ記録簿は、確認されたときに説明が難しくなります

「安全運転」「速度厳守」だけが1年分続いている記録簿は、実際に点呼で何を確認し何を伝えたのかが読み取れません。条文が求めているのは指示を行うことと、その内容を記録することです。定型文だけを書くことが直ちに違反となるわけではありませんが、その日の運行に即した内容が残っているほうが、点呼を実施したことの説明になります。

運転者から報告を受けた内容も記録します

第7条第5項は「点呼を行った旨並びに報告、確認及び指示の内容」を記録するとしています。指示だけでなく、運転者から受けた報告も記録の対象です。体調に問題がないという報告も、報告のうちです。

誰が点呼を行うか|補助者の3分の1

点呼は運行管理者が行うのが原則ですが、補助者を選任して一部を行わせることができます。ただしすべてを補助者に任せることはできません。

図2 運行管理者が行う点呼の下限 1か月の点呼の総回数 運行管理者 3分の1以上 補助者 3分の2まで ここが下限 補助者が行った点呼だけで1か月が埋まると、この下限を割ります

解釈通達は、補助者を選任して点呼の一部を行わせる場合であっても、運行管理者が行う点呼は総回数の少なくとも3分の1以上でなければならないとしています。

点呼執行者名を書き分けていないと、確認できません

3分の1を満たしているかどうかは、点呼記録簿の点呼執行者名から数えることになります。押印だけで氏名が読み取れない、あるいは常に同じ欄が空欄という状態では、割合を示せません。誰が行ったのかが分かる書き方にしてください。

補助者が確認したときの扱い

通達は、補助者が点呼の一部を行った場合に、酒気帯び、疾病・疲労・睡眠不足等、無免許運転・酒気帯び運転、過積載運行、最高速度違反行為に関して所定の事項に該当する状況を確認したときは、直ちに運行管理者に報告を行い、指示を仰いで運転者等に伝達することとしています。

また通達は、補助者について運行管理者の代理業務を行える者ではないと明記しています。補助者は運行管理者の業務を代行する立場ではなく、その履行を補助する立場です。選任できる人の要件や届出の要否は、運行管理者の補助者とはで整理しています。

アルコール検知器の確認と記録

第7条第4項は、アルコール検知器を営業所ごとに備え、常時有効に保持すること、そして酒気帯びの有無を確認するときは運転者の状態を目視等で確認するほか、当該運転者の属する営業所に備えられたアルコール検知器を用いて行うことを求めています。

「常時有効に保持」のためにすること

通達は、確認すべき事項と頻度を具体的に示しています。

表2 アルコール検知器について確認する事項
頻度確認する事項
毎日電源が確実に入ること/損傷がないこと
毎日行うことが望ましく、少なくとも1週間に1回以上確実に酒気を帯びていない者が使用したときにアルコールを検知しないこと/洗口液等をスプレーで口内に噴霧したうえで使用したときにアルコールを検知すること

週1回の確認は2方向です

「反応しないこと」の確認だけでは足りません。洗口液を使って「反応すること」も確認します。検知器が壊れて何も検知しなくなっている状態を見つけるための手順です。この確認を行った記録を残しておくと、監査や巡回指導で説明できます。

目視等の確認も必要です

条文は、検知器を用いることに加えて運転者の状態を目視等で確認することを求めています。通達は「目視等で確認」について、運転者の顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等を確認することとしています。

検知器の数値が出ていれば足りる、という構造ではありません。

対面でない点呼を記録するとき

点呼は対面が原則ですが、対面と同等の効果を有する方法や、限られた場合の電話その他の方法も認められています。この場合は記録の書き方が変わります。

「運行上やむを得ない場合」は狭く解釈されています

第7条第1項の括弧書きは「運行上やむを得ない場合は電話その他の方法。次項において同じ」となっており、業務前と業務後の両方に及びます。ただし通達は、この場合を次のように限定しています。

人手が足りないことは理由になりません

通達は「運行上やむを得ない場合」を遠隔地で業務を開始または終了するため、業務前点呼または業務後点呼を運転者等が所属する営業所において対面で実施できない場合等としたうえで、車庫と営業所が離れている場合や、早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は該当しないと明記しています。この場合の電話点呼は、第8章のとおり「未実施」として扱われます。

点呼を行った場所も記録します

通達は、点呼告示にもとづきあらかじめ定めた点呼実施場所について記録するよう指導するとしており、記録の例として都道府県名・市町村名・地点名に加えて、実施地点の概要(車内、宿泊施設名等)を挙げています。

遠隔点呼や自動点呼は、運転者等が事業用自動車内・待合所・宿泊施設等にいる場合でも実施できます。どこで受けたのかを記録に残すことが求められます。

記録の前に、届出が済んでいる必要があります

IT点呼・遠隔地IT点呼・遠隔点呼・業務前自動点呼・業務後自動点呼は、それぞれ運輸支局への報告や届出が必要で、期限も違います。運行管理規程への記載も要ります。手続きを済ませずに実施した点呼は、記録があっても認められません。手続きの一覧は運行管理規程と整備管理規程の記事で整理しています。

「未実施」「不適切」とされる点呼

行政処分の基準を定めた別表は、点呼の実施義務違反についてどのような点呼を「未実施」とし、どのような点呼を「不適切」とするかを注記で明示しています。実施したつもりでも該当することがあるため、内容を確認しておいてください。

図3 「未実施」「不適切」の判定 行った1回の点呼 「未実施」として扱われる点呼 点呼事項が全く実施されていない 対面によらない電話その他の方法による (運行上やむを得ない場合を除く) 補助者の要件を満たさない者が行った 運行管理者・補助者の自己による点呼 業務の開始後、または終了前に行った 当たらなければ 「不適切」として扱われる点呼 点呼事項のうち一部が実施されていない アルコール検知器による酒気帯びの 有無の確認をしていない 当たらなければ 適正に実施した点呼 量定の決まり方は第11章の表7のとおりです

「未実施」として扱われる点呼

表3 未実施とされる点呼
内容
省令に規定される点呼事項が全く実施されていない点呼
対面によらず電話その他の方法で実施した点呼(運行上やむを得ない場合を除く)
補助者の要件を満たしていない者が実施した点呼
運行管理者、補助者の自己による点呼
業務の開始前に点呼を行わず、開始後に行った点呼
業務の終了後に点呼を行わず、終了前に行った点呼

自己点呼は実施したことになりません

運行管理者や補助者が運転者を兼ねている場合に、自分で自分に点呼を行っても未実施として扱われます。小規模の営業所で起こりやすい形です。誰が誰に点呼を行うのかを、あらかじめ決めておく必要があります。

順序が逆になっている記録に注意してください

業務の開始後に行った点呼、終了前に行った点呼は未実施です。点呼記録簿の点呼時刻と、業務の記録(運転日報)の開始・終了時刻を突き合わせると、逆転していないかを確認できます。まとめて記入する運用をしていると、ここがずれやすくなります。

「不適切」として扱われる点呼

表4 不適切とされる点呼
内容
省令に規定される点呼事項のうち一部が実施されていない点呼
アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認をしていない点呼

別表が明示しているのはこの2つですが、1つ目の「点呼事項のうち一部が実施されていない点呼」には幅があります。条文が定める点呼事項に照らすと、たとえば次のような場合が考えられます。

表5 「一部が実施されていない」に当たりうる例
点呼実施していない事項
業務前疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転をすることができないおそれの有無について報告を求めていない
業務前日常点検の実施またはその確認をしていない
業務前運行の安全を確保するために必要な指示を与えていない
業務後事業用自動車、道路及び運行の状況について報告を求めていない
業務後運転者等が交替した場合に、交替した運転者等へ行った通告について報告を求めていない
中間酒気帯びの有無、または疾病・疲労・睡眠不足等の有無について確認をしていない

アルコール検知器についても、条文の求めるところと照らすと問題になる場面があります。第7条第4項は、目視等の確認に加えて当該運転者の属する営業所に備えられた検知器を用いることを求めています。したがって、目視だけで済ませた点呼、他の営業所の検知器を用いた点呼は、この規定に沿っていないことになります。

上の表は条文から整理したもので、別表の列挙ではありません

別表が「不適切」として明示しているのは、点呼事項のうち一部が実施されていない点呼と、アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認をしていない点呼の2つです。表5は、条文が定める点呼事項のどれが欠けると前者に当たりうるかを整理したものです。個別の判断は監査を行う運輸支局によりますので、目安としてお読みください。

そして未実施を含めた実施不適切な点呼が、点呼が必要な回数100回に対して一部である場合は「一部実施不適切」、全部である場合は「全て実施不適切」として量定が分かれます。

保存期間と保存の方法

第7条第5項は、記録を1年間保存しなければならないとしています。

表6 保存の要点
項目内容
保存期間1年間
保存する場所点呼を行った営業所
保存の方法書面によることも、電磁的方法によることも差し支えない

通達は、記録と保存について書面又は電磁的方法のいずれの方法によっても差し支えないとしています。パソコンで入力し、そのまま電子データとして保存する運用も可能です。

改ざん・不実記載は、記録しないことより重く扱われます

行政処分の基準では、記録が全くない場合が初違反30日車であるのに対し、記録の改ざん・不実記載は初違反60日車、再違反120日車です。点呼をしていない日の欄をあとから埋める、実際とは違う時刻を書くといった処理は、最も重い量定に当たります。

軽貨物にも点呼が義務づけられました

令和7年4月から、貨物軽自動車運送事業者にも安全対策が強化され、点呼と記録の保存が義務となりました。黒ナンバーで事業を行っている方も対象です。

解釈通達は、貨物軽自動車安全管理者が行うべき業務として、第7条の規定により運転者に対して点呼を行い、報告を求め、確認を行い、必要な指示を与え、記録し、その記録を保存することを挙げています。

一人で事業を行っている場合の扱い

通達は「対面による点呼と同等の効果を有する方法」の一つとして、一人で事業を行っている場合に、アルコール検知器を使った酒気帯びの有無の確認や車両の日常点検等、条文が定める事項を自ら確認し、運行の可否を判断する方法を挙げています。行政処分の基準が「未実施」としているのは運行管理者・補助者の自己による点呼で、そもそも運行管理者を置かない一人の事業とは前提が異なります。

国土交通省は、貨物軽自動車運送事業者向けに点呼記録簿の例を公開しています。届出や安全管理者については黒ナンバー届出の記事貨物軽自動車安全管理者の記事をご覧ください。

行政処分の基準

点呼に関する量定は、公表されている別表(令和7年2月改正・令和7年4月施行)に定められています。点呼が必要な回数100回に対して何件かで判断されます。

表7 点呼の実施義務違反(第7条第1項〜第3項)
違反行為初違反再違反
未実施 19件以下警告10日車
未実施 20件以上1日車×未実施件数2日車×未実施件数
一部実施不適切警告10日車
全て実施不適切10日車20日車
飲酒運転防止に係る点呼実施義務違反100日車200日車
表8 点呼の記録義務違反(第7条第5項)
違反行為初違反再違反
記録 一部記録なし警告10日車
記録 全て記録なし30日車60日車
記載事項等の不備警告10日車
記録の改ざん・不実記載60日車120日車
保存 一部保存なし警告10日車
保存 全て保存なし30日車60日車

未実施が20件を超えると、件数がそのまま日車数になります

19件以下であれば初違反は警告ですが、20件以上になると1件につき1日車が加算されます。50件なら50日車です。件数が増えるほど量定が急に重くなる構造なので、日々の記録を欠かさないことが結果的に最も確実な対策になります。

巡回指導では、点呼は38項目のうちの重点項目として扱われます。全体の流れと準備は巡回指導38項目の記事で整理しています。

よくある質問

Q. 点呼記録簿の保存期間は何年ですか。

A. 1年間です。貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条第5項が、記録を1年間保存しなければならないと定めています。点呼を行った営業所で保存します。

Q. 業務前と業務後で、書く項目は同じですか。

A. 違います。解釈通達は記録事項を業務前・中間・業務後に分けて示しており、業務後の点呼には指示事項、疾病・疲労等の状況、日常点検の状況が含まれていません。かわりに自動車、道路及び運行の状況と、交替運転者等に対する通告が記録事項となります。

Q. 指示事項の欄には何を書けばよいですか。

A. 条文が求めているのは運行の安全を確保するために必要な指示で、解釈通達の第7条関係に例示はありません。ただし異常気象時については、同じ通達の第11条関係が、暴風警報等の伝達、避難箇所の指定、運行の中止等の指示、雪道での滑り止めの措置の確認を挙げています。それ以外の場面では、その日の点呼で確認した内容に対応した指示や、経路・荷主先の事情などその運行に固有の事項を書くことになります。トラック協会が指示事項の例を一覧にして公表しているものもありますが、これはその日の状況に当てはまるものを選ぶための材料です。毎日同じ定型文だけが並んでいると、点呼で何を確認し何を伝えたのかを説明しにくくなります。

Q. 点呼記録簿は手書きでなければいけませんか。

A. いいえ。解釈通達は、記録と保存について書面によることも電磁的方法によることも差し支えないとしています。パソコンで入力して電子データのまま保存する運用も可能です。

Q. 点呼はすべて補助者に行わせてもよいですか。

A. できません。解釈通達は、補助者を選任して点呼の一部を行わせる場合であっても、運行管理者が行う点呼は総回数の少なくとも3分の1以上でなければならないとしています。

Q. 運行管理者が運転者を兼ねている場合、自分で点呼をしてよいですか。

A. 一般貨物自動車運送事業の営業所では、運行管理者や補助者の自己による点呼は行政処分の基準上「未実施」として扱われます。誰が誰に点呼を行うのかを、あらかじめ決めておく必要があります。

Q. 早朝や深夜で運行管理者が出勤していないため、電話で点呼をしています。

A. 解釈通達は、早朝・深夜等において点呼執行者が営業所に出勤していない場合等は「運行上やむを得ない場合」に該当しないとしています。この場合の電話による点呼は「未実施」として扱われます。体制を見直すか、遠隔点呼等の導入を検討することになります。

Q. アルコール検知器は備えていれば足りますか。

A. 条文は営業所ごとに備えたうえで常時有効に保持することを求めています。通達は、毎日、電源が確実に入ることと損傷がないことを確認し、少なくとも1週間に1回以上、酒気を帯びていない者が使用したときに検知しないことと、洗口液等を口内に噴霧して使用したときに検知することを確認するとしています。

Q. 検知器の数値を記録していれば、目視の確認は不要ですか。

A. 必要です。条文は運転者の状態を目視等で確認するほか検知器を用いると定めており、通達は目視等の内容として顔色、呼気の臭い、応答の声の調子等を挙げています。

Q. 黒ナンバー(貨物軽自動車運送事業)でも点呼記録簿は必要ですか。

A. 必要です。令和7年4月から貨物軽自動車運送事業者にも点呼と記録の保存が義務づけられました。一人で事業を行っている場合は、アルコール検知器による確認や日常点検など条文が定める事項を自ら確認し、運行の可否を判断する方法が認められています。

Q. 記入が漏れていた日を、あとから書き足してもよいですか。

A. 実際に行った点呼の記録が漏れていたのであれば補うことになりますが、行っていない点呼を記録として作成することは改ざん・不実記載に当たります。行政処分の基準では初違反60日車、再違反120日車とされており、記録が全くない場合よりも重い量定です。

参照した根拠・出典を見る

本記事は、次の法令・通達・告示および国土交通省の公表資料にもとづいて整理しています(2026年8月時点で確認できた内容です)。

法令

  • 貨物自動車運送事業輸送安全規則(平成2年運輸省令第22号)第7条第1項・第4項・第5項、第11条
  • 道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第47条の2

通達・告示

  • 貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について(制定 平成15年3月10日 国自総第510号・国自貨第118号・国自整第211号/最終改正 令和8年6月26日 国自貨第106号・国自安第68号・国自整第77号)
    記録事項の業務前・中間・業務後の区分、車両を識別できる表示の説明、疾病・疲労等の「その他の理由」、補助者が行う点呼と運行管理者が行う点呼の3分の1、補助者からの報告、「運行上やむを得ない場合」の限定、点呼を行った場所の記録、目視等で確認する内容、アルコール検知器を常時有効に保持するための確認事項と頻度、記録および保存の方法は、いずれも第7条関係の記載によります。異常気象その他の理由の内容と、そのときに講じる措置(暴風警報等の伝達、避難箇所の指定、運行の中止等の指示、雪道での滑り止めの措置の確認)は第11条関係によります。
  • 対面による点呼と同等の効果を有するものとして国土交通大臣が定める方法を定める告示(令和5年3月31日 国土交通省告示第266号)
  • 貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について(平成21年9月29日 国自安第75号・国自貨第79号・国自整第69号/令和7年2月28日一部改正・令和7年4月1日施行)と、その別表
    点呼の実施義務違反を「未実施」「不適切」に分ける注記、点呼が必要な回数100回を基準とする数え方、記録および保存に関する量定は、この別表によります。通達の一覧は国土交通省の行政処分の基準のページにあります。

運輸局の公表資料

  • 運行管理業務について(近畿運輸局自動車技術安全部保安・環境課)
    業務前点呼で与える指示の内容として、道路や気象状況に関する指示伝達、運転免許証等の有無の確認、業務記録の用紙や運行記録紙の手渡しなどを挙げています。通達ではなく運輸局の説明資料です。

国土交通省の公表資料

業界団体の公表資料

  • 点呼の実施・記録について(公益社団法人福岡県トラック協会)
    「指示事項例」として44の項目を挙げています。本記事では区分がわかる範囲で抜き出し、当事務所で内容ごとに整理して紹介しています。通達ではなく協会の手引きであり、平成23年5月1日施行の改正に対応した内容のため、用語は当時のものが使われています。

条文および通達の引用は、根拠として必要な範囲にとどめ、省略した部分は「…」で示しています。制度改正により内容が変わることがありますので、実際の手続きにあたっては原典と管轄の運輸支局でご確認ください。

点呼の体制でお困りの方へ

そら行政書士事務所では、点呼記録簿をはじめとする法定帳票の整備、巡回指導に向けた書類の確認、点呼の方式を変えるときの規程の見直しと届出をお受けしています。許可を取ったあとの手続き全般は運送業を営んでいる方向けのページをご覧ください。

ご相談はお問い合わせフォームから承っています。

この記事を書いた人

行政書士 田丸浩史(登録番号 26261852)/そら行政書士事務所
〒562-0014 大阪府箕面市萱野2-6-8-203
TEL 070-8556-0921/Email tamaru@sora-gyosei.com

大阪府箕面市を拠点に、一般貨物自動車運送事業の許可申請と、変更届・認可申請・各種報告書といった許可後の手続、役員法令試験対策に取り組んでいます。事業報告書・事業実績報告書の作成と、役員法令試験対策は全国に対応しています。

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田丸 浩史のアバター 田丸 浩史 行政書士

大阪府箕面市を拠点とする行政書士。運送業を専門とし、新規許可から各種変更届出・法令試験対策まで大阪府全域に対応。

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