運送業の許可が下りた直後、あるいは担当者が交代したとき、必ず出すことになるのが選任届です。ところがこの手続きには「運行管理者」と「整備管理者」の2種類があり、根拠となる法律も、提出期限も、提出先も違います。同じ日にまとめて出す場面が多いだけに、片方の作法でもう片方を処理して差し戻される、ということが起きやすいところです。この記事では、2つの届出の違いを整理したうえで、選任すべき人数の数え方、様式の欄ごとの書き方、添付する書類、変更・解任のときの扱いまでを、近畿運輸局が公表している様式・記入例と現行の条文にもとづいて解説します。
この記事の要点(先に結論)
- 選任届は運行管理者と整備管理者の2種類。根拠法も期限も提出先も違います。
- 期限は、運行管理者が「遅滞なく」、整備管理者が「15日以内」です。
- 提出先も違います。近畿運輸局の様式では、運行管理者は運輸支局長あて、整備管理者は運輸局長あてです。
- 運行管理者の必要数は車両数÷30(端数切捨)+1。29両までなら1人です。
- 複数選任する営業所では統括運行管理者の選任が必要です。
- 貨物の補助者に選任届は要りません。旅客とは様式が違います。
- どちらも巡回指導の重点指導項目であり、Gマークの認定要件にも入っています。
選任届は2種類あります|運行管理者と整備管理者の違い
一般貨物自動車運送事業の許可を受けたら、運行管理者と整備管理者の両方を選任し、それぞれ届け出ることになります。名前が似ていて同時に手続きすることが多いため一括りに考えられがちですが、根拠となる法律からして別のものです。
| 項目 | 運行管理者 | 整備管理者 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 貨物自動車運送事業法 第16条 | 道路運送車両法 第52条 |
| 届出の期限 | 遅滞なく | その日から15日以内 |
| 様式の宛先 | 近畿運輸局 ○○運輸支局長 | 近畿運輸局長 |
| 様式の区分 | 選任・変更・解任 | 選任・変更・廃止(解職は別様式) |
| 1枚あたり | 複数人をまとめて記載できる | 1名ごとに1枚 |
| 選任の単位 | 営業所ごと | 自動車の使用の本拠ごと |
| 人数の基準 | 車両数÷30(端数切捨)+1 | 原則1名 |
| 変更時の囲み | 変更事項を赤で囲む | 変更事項を朱色で囲む |
出典・基準日:近畿運輸局「貨物自動車運送事業運行管理者選任・変更・解任届出書」および「整備管理者(選任・変更・廃止)届出」の様式・記入見本/2026年8月時点。宛先・様式・運用は運輸局によって異なります。たとえば関東運輸局は「運行・整備管理者選任等届出書」という1枚の様式に両方をまとめており、近畿のように2枚に分かれていません。他の運輸局で手続きされる場合は、必ず管轄の運輸局・運輸支局の様式をご確認ください。
宛名が違うのには理由があります
近畿運輸局の様式を見ると、運行管理者の届出書は「運輸支局長 殿」、整備管理者の届出は「近畿運輸局長 殿」と宛名が異なります。書き分けの根拠は、それぞれの法令にある権限の委任規定です。
- 運行管理者:法第16条第3項の届出を受理する権限は、まず地方運輸局長に委任され、さらに運輸監理部長または運輸支局長へ委任されています(貨物自動車運送事業法施行規則第42条第1項第10号・第2項第2号)。だから宛名が運輸支局長になります。
- 整備管理者:道路運送車両法第52条が「地方運輸局長に届け出る」と定めています。だから宛名が運輸局長になります。
なお、地方運輸局長に提出すべき届出書は、管轄の運輸監理部長または運輸支局長を経由して提出するとされています(同施行規則第45条第2項)。宛名が運輸局長でも、書類を持っていく先が運輸支局であることは変わりません。同じ日に2つ出すときこそ、宛名の欄を見比べてください。
期限の性質が違います
もうひとつ混同されやすいのが期限です。運行管理者は「遅滞なく」、整備管理者は「15日以内」。数字が書いてあるかどうかで、性格がまったく違います。
「遅滞なく」は日数が明示されていませんが、期限がないという意味ではありません。正当な理由なく引き延ばせば違反になります。一方の「15日以内」は日数が定まっているぶん、うっかり過ぎてしまいやすい。数字のある整備管理者のほうを先に片づけると考えておくと、取りこぼしにくくなります。
根拠条文を見る(運行管理者の届出/貨物自動車運送事業法 第16条第3項)
第十六条 一般貨物自動車運送事業者は、第三条の許可を受けた後、速やかに、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、国土交通省令で定めるところにより、運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければならない。
3 一般貨物自動車運送事業者は、第一項の規定により運行管理者を選任したときは、国土交通省令で定めるところにより、遅滞なく、その氏名を国土交通大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
出典・基準日:貨物自動車運送事業法(令和8年5月21日施行時点。e-Gov法令検索で確認)。令和6年法律第23号による改正で条番号が繰り上がっており、改正前は第18条でした。古い解説記事や様式では旧番号のままのものがあります。現行が第16条であることは、貨物自動車運送事業法施行規則第42条が「法第十六条第三項の規定による届出の受理」を委任の対象として掲げていることからも確認できます。
根拠条文を見る(権限の委任/貨物自動車運送事業法施行規則 第42条・第45条)
第四十二条 法に規定する国土交通大臣の権限で次に掲げるものは、地方運輸局長に委任する。
十 法第十六条第三項の規定による届出の受理
2 前項の規定により地方運輸局長に委任された権限で次に掲げるもの(運輸監理部長と運輸支局長又は二以上の運輸支局長の管轄区域にわたるもの及び貨物自動車利用運送に関するものを除く。)及び貨物軽自動車運送事業に関するものは、運輸監理部長又は運輸支局長に委任する。
二 法第十六条第三項の規定による届出の受理
第四十五条 2 法及びこの省令の規定により国土交通大臣又は地方運輸局長に提出すべき申請書又は届出書は、全国実施機関に関するものを除き、それぞれ当該事案の関する土地を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長(当該事案が運輸監理部長と運輸支局長又は二以上の運輸支局長の管轄区域にわたるときは、当該事案の主として関する土地を管轄する運輸監理部長又は運輸支局長)を経由して提出しなければならない。
出典・基準日:貨物自動車運送事業法施行規則/2026年8月時点。
根拠条文を見る(整備管理者の届出/道路運送車両法 第52条)
第五十二条 大型自動車使用者等は、整備管理者を選任したときは、その日から十五日以内に、地方運輸局長にその旨を届け出なければならない。これを変更したときも同様である。
出典・基準日:道路運送車両法/2026年8月時点。
運行管理者は何人選任するのか
運行管理者の人数は、営業所ごとに決まります。その営業所が運行を管理する事業用自動車の数を30で除して、端数を切り捨てた数に1を加えた数以上です。被けん引自動車は数に含めません。
図1:運行管理者の選任必要数(貨物自動車運送事業輸送安全規則第18条第1項および近畿運輸局の様式の記載事項をもとに作成)
5両未満の営業所には例外があります
条文にただし書があります
安全規則第18条第1項には、5両未満の事業用自動車の運行を管理する営業所であって、地方運輸局長が車両の種別・地理的条件その他の事情を勘案して運行の安全の確保に支障を生ずるおそれがないと認めるものについては、この限りでないというただし書が置かれています。
ただし、これは地方運輸局長が個別に認めた場合の例外です。5両未満なら自動的に不要になるわけではありません。該当しそうな場合は、必ず管轄の運輸支局にご確認ください。なお一般貨物の許可自体に5両以上という要件があるため、この例外が問題になる場面は限られます。
根拠条文を見る(貨物自動車運送事業輸送安全規則 第18条第1項)
第十八条 一般貨物自動車運送事業者等は、法第三条の許可を受けた後、速やかに、事業用自動車(被けん引自動車を除く。以下この項において同じ。)の運行を管理する営業所ごとに、当該営業所が運行を管理する事業用自動車の数を三十で除して得た数(その数に一未満の端数があるときは、これを切り捨てるものとする。)に一を加算して得た数以上の運行管理者を選任しなければならない。ただし、五両未満の事業用自動車の運行を管理する営業所であって、地方運輸局長が当該事業用自動車の種別、地理的条件その他の事情を勘案して当該事業用自動車の運行の安全の確保に支障を生ずるおそれがないと認めるものについては、この限りでない。
出典・基準日:貨物自動車運送事業輸送安全規則/2026年8月時点。
統括運行管理者|複数選任する営業所では必須です
ひとつの営業所で2人以上の運行管理者を選任する場合、それらの業務を統括する運行管理者(統括運行管理者)を選任しなければなりません。これは「選任することができる」ではなく義務です。
近畿運輸局の届出書にも統括運行管理者の氏名と選任年月日を記載する欄があり、記載事項にも「複数の運行管理者を選任する営業所については、統括運行管理者を選任し、所定の欄に統括運行管理者の氏名及び選任年月日を記載すること」と明記されています。
30両を超えたときに起きやすいこと
車両を増やして30両を超えると、運行管理者が1人から2人になります。このとき、2人目を選任して届け出るだけで終わりにしてしまい、統括運行管理者の欄が空欄のままというケースが起こります。増車の届出と選任届はセットで考えてください。増減車の手続きの区分は認可・事前届出・事後届出をまとめた記事で整理しています。
補助者に選任届は要りません(貨物の場合)
運行管理者の業務を補助させるため、補助者を選任することができます。資格者証を持つ者か、国土交通大臣が告示で定める運行の管理に関する講習(基礎講習)を修了した者から選びます。
ここで押さえておきたいのが、貨物では補助者について選任届を出す必要がないという点です。届出を定めている安全規則第19条は、運行管理者の氏名等の届出しか規定していません。近畿運輸局の貨物の様式にも、補助者を記載する欄はありません。
旅客とは様式が違います
旅客自動車運送事業の様式は「旅客自動車運送事業運行管理者・補助者 選任(解任)届出書」という名称で、届け出る対象を「運行管理者・補助者」から選ぶ欄があります。基礎講習修了番号を記載する欄も設けられています。
インターネットで「運行管理者 補助者 選任届」を調べると旅客の情報が混ざってくるのは、このためです。貨物と旅客で扱いが違うので、様式の名称を必ず確認してください。ただし、補助者の届出が不要であることと、補助者を選任した記録を社内に残さなくてよいことは別の話です。誰をいつ補助者にしたかは、社内で整理しておくことをおすすめします。
根拠条文を見る(補助者の選任/貨物自動車運送事業輸送安全規則 第18条第2項・第3項)
2 一の営業所において複数の運行管理者を選任する一般貨物自動車運送事業者等は、それらの業務を統括する運行管理者(以下「統括運行管理者」という。)を選任しなければならない。
3 一般貨物自動車運送事業者等は、運行管理者資格者証(以下「資格者証」という。)若しくは道路運送法第二十三条の二第一項に規定する運行管理者資格者証を有する者又は国土交通大臣が告示で定める運行の管理に関する講習(以下単に「講習」という。)であって次項において準用する第十二条の三第一項の規定により国土交通大臣の認定を受けたものを修了した者のうちから、運行管理者の業務を補助させるための者(以下「補助者」という。)を選任することができる。
出典・基準日:貨物自動車運送事業輸送安全規則/2026年8月時点。
運行管理者選任届の書き方|欄ごとの記入要領
近畿運輸局の様式は「貨物自動車運送事業運行管理者選任・変更・解任届出書」です。1枚の用紙で選任・変更・解任のいずれにも使い、複数人をまとめて記載できます。
| 欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 宛先 | 近畿運輸局 ○○運輸支局長 殿 |
| ア 営業所の名称 | 選任する営業所の名称(例:寝屋川営業所) |
| イ 営業所の位置 | 営業所の所在地 |
| ウ 事業の種類 | 1.一般(・特別積合・その他)/2.特定 から選び○で囲む |
| エ 届出者の氏名及び名称 | 事業者名。ふりがなも記入(例:こくどこうつうはいそうかぶしきがいしゃ) |
| オ 届出者の住所 | 事業者の住所 |
| 事業用自動車の両数 | その営業所の両数。被けん引自動車は( )内に記載 |
| 運行管理者選任必要数 | 両数÷30(端数切捨)+1 で計算した人数 |
| 統括運行管理者氏名 | 複数選任する場合に氏名と選任年月日 |
| 運行管理者氏名 | ふりがな・生年月日 |
| 資格者証 | 交付年月日と番号(例:近大貨物第○○○○号) |
| 選任年月日 | 実際に選任した日 |
| 兼職の有無 | 該当を○で囲み、有の場合は職名と職務内容(例:職名 営業所長/内容 管理業務) |
| 解任等年月日・理由 | 解任のときに記入(例:退職) |
| No. | 内容 |
|---|---|
| 1 | 事業の種類については、当該記号を○で囲むこと |
| 2 | 事業用自動車の台数については、被けん引自動車は( )に記載すること |
| 3 | 運行管理者選任必要数については、様式の右表により記載すること |
| 4 | 選任年月日等の兼職の有無については、当該事項を○で囲み、有る場合はその職名及び兼職内容を記載すること |
| 5 | 解任年月日等の理由については、転勤、職制変更、法第20条の返納等を記載すること |
| 6 | 変更届にあっては、変更事項を赤で囲むこと |
| 7 | ア〜オの項目に変更があれば届け出ること |
| 8 | 複数の運行管理者を選任する営業所については、統括運行管理者を選任し、所定の欄に統括運行管理者の氏名及び選任年月日を記載すること |
注意事項5の「法第20条」は旧条番号です
様式には解任理由の例として「法第20条の返納」と書かれていますが、現行の貨物自動車運送事業法では、運行管理者資格者証の返納は第18条です(第20条は運行管理者等の義務)。令和6年法律第23号による改正で条番号が2つ繰り上がったため、様式の記載が改正前のままになっています。
記入するうえで実害はありません(返納があった旨を書けば足ります)が、条番号を書面や社内文書に引用される場合は、現行の第18条をご確認ください。同じ理由で、古い解説記事が運行管理者の選任届の根拠を「法第18条」としていることがあります。現行は第16条です。
提出のときに必要なもの
- □ 届出書(近畿運輸局の様式)
- □ 運行管理者資格者証、またはその写しを提示(様式に明記されています)
- □ ふりがなの記入漏れがないか
- □ ア〜オの5項目がすべて埋まっているか
- □ 複数選任の場合、統括運行管理者の欄が埋まっているか
出典・基準日:近畿運輸局「貨物自動車運送事業運行管理者選任・変更・解任届出書」の様式および記入見本/2026年8月時点。必要書類や提示方法は運輸局・運輸支局によって異なる場合があります。
整備管理者選任届の書き方|第1号様式
整備管理者の届出は「整備管理者(選任・変更・廃止)届出」(第1号様式)です。運行管理者の様式と違い、整備管理者1名ごとに1枚提出します。
| 欄 | 記入する内容 |
|---|---|
| 宛先 | 近畿運輸局長 殿 |
| ☆届出者の氏名又は名称 | 事業者名(ふりがなも) |
| ☆届出者の住所及び電話番号 | 事業者の住所・電話番号 |
| ☆事業の種類 | 1.バス/2.ハイ・タク/3.トラック(4以外)/4.貨物軽/5.レンタカー/6.その他の自家用 から選ぶ |
| ☆整備管理者氏名 | ふりがな・生年月日・年齢 |
| 使用の本拠の位置(☆名称・☆住所) | 会社の住所ではなく、自動車の使用の本拠(営業所)を記載 |
| 自動車数 | その使用の本拠に属する車両数(会社全体の数ではない)。車種・業態ごとに記入 |
| 選任年月日 | 実際に選任した日 |
| ☆兼職の有無 | 職名・職務内容 |
| 整備管理者の資格要件 | 1.点検又は整備の経験/2.整備管理者の経験/3.整備士資格/4.整備管理の経験/5.その他 |
| 点検整備等の経験 | 期間・事業場名・位置・業務の大要を時系列で記入 |
| 整備士 | 種類・級・合格年月日・合格証書番号 |
| 整備管理者選任前研修 | 位置・番号・受講年月日 |
| 被選任者の同意書 | 本人が要件を満たし、解任命令による解任から一定期間を経過していないことを確認して□にチェック |
| 事業主の確認書 | 経験を積んだ事業場の事業主に、住所・名称・代表者名を記入してもらう |
| 変更・廃止の事由 | 交代・退職・死亡・解任・その他。前管理者名も記入 |
「使用の本拠」と「自動車数」を会社単位で書かない
記入見本に「自動車の使用の本拠の位置を記載してください(会社の住所ではありません)」「営業所の自動車数を記入します(会社全体の車両数ではありません)」とわざわざ注記されています。裏を返せば、ここを会社単位で書いてしまう例が多いということです。営業所が複数ある事業者はとくにご注意ください。
| No. | 内容 |
|---|---|
| 1 | この届出書は整備管理者を選任(変更・廃止)するたびに提出すること |
| 2 | 整備管理者1名ごとに提出すること |
| 3 | 整備士試験に多種目合格している者は、自動車整備士検定規則第2条に規定された上位の者を記入すること |
| 4 | 変更届出の場合は変更事項を朱色で囲むこと |
| 5 | ☆印の届出事項に変更があった場合は、その日から15日以内に届け出ること |
| 6 | 「自動車数」の欄には、選任に係る使用の本拠に属する車両数を記載すること |
☆印が付いた欄は、変更したら15日以内の届出が必要です
第1号様式では、届出者の氏名・住所・事業の種類・整備管理者氏名・使用の本拠の名称と住所・兼職の有無に☆印が付いています。これらが変わったときは、その日から15日以内に変更の届出をすることになります。整備管理者本人が替わったときだけでなく、営業所の名称が変わった、社名が変わった、という場合も対象です。
外部に委託する場合の欄があります
第1号様式には委託の欄があり、整備管理を外部に委託する場合は、自社の整備責任者名と職名を記入し、委託先との距離および委託先事業主の住所・名称・代表者の氏名を、委託先の事業主に記入してもらうとされています。距離を書く欄があるのは、実際に管理が及ぶ範囲かどうかを確認するためと考えられます。
整備管理者の添付書類|経歴書と選任前研修
整備管理者は、資格要件を満たしていることを書面で示す必要があります。ルートは大きく2つです。
| ルート | 示すもの | 添付する書類 |
|---|---|---|
| 実務経験+選任前研修 | 点検・整備等の経験と、整備管理者選任前研修の修了 | 整備管理者経歴書(第3号様式)/選任前研修の修了証の写し |
| 整備士資格 | 自動車整備士の資格 | 合格証書の写し(種類・級・合格年月日・番号を様式に記入) |
整備管理者経歴書(第3号様式)で見落としやすい点
経歴書の注記に、「1ヶ所の事業場で実務経験が2年に満たない場合は、業務を行った事業場毎に証明が必要です」と書かれています。転職を重ねている方の場合、複数の会社に証明をもらう必要があるということです。前職の会社に連絡を取る時間が要りますので、逆算して早めに動いてください。
経歴書に記入するのは、期間(年月から年月まで)、業務を行っていた事業場名、事業場の所在地、職名、業務の大要です。証明は、その事業場の事業者住所・氏名(代表者名)で行います。
「選任前研修」と「選任後研修(一般研修)」は別のものです
ここを取り違えている方が実際におられます。整備管理者に選任されるために必要なのは「整備管理者選任前研修」です。名前のとおり、選任される前に受けておく研修で、実務経験のルートで要件を満たす場合に必要になります。
一方、選任されたあとに定期的に受けるのが「整備管理者研修(選任後研修・一般研修)」です。こちらは、すでに整備管理者である人が知識を新しく保つために受けるもので、これを修了しても整備管理者に選任できるようにはなりません。
- 選任前研修:これから整備管理者になる人が受ける。修了していなければ、実務経験のルートでは選任できません
- 選任後研修(一般研修):すでに整備管理者である人が受ける。巡回指導の「整備管理者に所定の研修を受けさせているか」(Ⅳ-3)で確認される項目です
手帳や修了証が手元にあるからといって、選任できるとは限りません。その研修が「選任前」のものかどうかを、必ず名称でご確認ください。近畿運輸局の第1号様式にも「整備管理者選任前研修」という欄があり、受講した位置・番号・年月日を記入することになっています。選任前研修を受けていない方を選任届に記載しても、要件を満たさないため受理されません。
なお、整備士資格で要件を満たす場合は選任前研修は不要です。この場合は合格証書の写しを添付します。
記入見本に書かれている提出時の注意
- 整備管理者選任前研修の修了証、もしくは整備士の合格証書のコピーを忘れずに添付
- 整備管理規程は提示(添付ではなく提示)
- 被選任者本人が同意する場合は、同意書の□にチェック
- 今回選任される整備管理者が別の会社でも整備管理者をしている場合は、その会社の名称と住所を記入
出典・基準日:近畿運輸局「整備管理者(選任・変更・廃止)届出」第1号様式・記入見本、「整備管理者経歴書」第3号様式/2026年8月時点。添付書類の運用は運輸局によって異なる場合があります。
変更・解任・廃止のときの届出
担当者が替わったときの手続きも、2つで扱いが違います。
| 運行管理者 | 整備管理者 | |
|---|---|---|
| 使う様式 | 同じ届出書(選任・変更・解任の欄で区別) | 選任・変更・廃止は第1号様式/解職は第2号様式(整備管理者解職届) |
| 後任の選任 | 同じ用紙に選任と解任を記載できる | 第1号様式で「変更」として届出(前管理者名を記入) |
| 理由の書き方 | 転勤、職制変更、資格者証の返納 等 | 交代・退職・死亡・解任・その他 |
| 解職届の理由 | ― | 1.退職/2.死亡/3.配置換/4.その他 |
| 変更事項の表示 | 赤で囲む | 朱色で囲む |
後任者を選任できないときは、どうなるのか
先に、はっきりさせておくべきことがあります。運行管理者も整備管理者も、選任していない状態そのものが法令違反です。「後任が見つかるまでの猶予」を認める規定は、当事務所が確認した範囲では見当たりません。事業を続けながら空席にしておいてよい、という制度にはなっていません。
すぐには選任できません
運行管理者は運行管理者資格者証が必要です。資格者証は、運行管理者試験に合格するか、5年以上の実務経験と所定の講習の受講といった要件を満たさなければ交付されません。整備管理者も、実務経験2年+選任前研修の修了か、整備士資格が必要です。いずれも、人が抜けてから探し始めて間に合うものではありません。
とくに整備管理者選任前研修は開催日程が決まっているため、日程が合わなければ数か月空くことがあります。この点は、黒ナンバーの貨物軽自動車安全管理者講習と同じ構造です。
現実的にできる備え
- 有資格者を複数そろえておく。これが唯一の確実な備えです。選任していない有資格者がいても届出は不要なので、コストは受験料や研修費だけです
- 補助者を先に確保しておく。補助者は資格者証を持つ者か基礎講習の修了者から選任でき、届出も要りません。基礎講習の修了者は運行管理者本体にはなれませんが、有資格者を育てる過程として位置づけられます
- 退職の申し出があった時点で動く。最終出社日から動くのでは遅すぎます
- 間に合わないと分かったら、管轄の運輸支局に相談する。黙って空席のままにするのが最も悪い対応です
後任が決まらない場合の取扱いについて、法令上の猶予規定は確認できていません。実際の対応は管轄の運輸支局にご相談ください。
なお、整備管理者については、第1号様式に外部への委託を記載する欄があります。自社の整備責任者名と職名、委託先との距離、委託先事業主の情報を記入する形式です。ただし事業用自動車についてどこまで委託が認められるかは、当事務所では確認できていません。関東運輸局の案内では「自家用自動車であって整備管理者を外部に委託する場合の添付書面」という書式例が示されており、自家用を想定した仕組みである可能性があります。検討される場合は必ず管轄の運輸支局にご確認ください。
巡回指導とGマークでは、どう問われるか
この2つの選任届は、提出して終わりではありません。あとから2つの場面で必ず確認されます。
巡回指導では、どちらも重点指導項目です
適正化事業実施機関が行う巡回指導は7区分38項目で構成され、そのうち9項目が重点指導項目とされています。「運行管理者が選任され、届出されているか」(Ⅲ-2)と「整備管理者が選任され、届出されているか」(Ⅳ-2)は、どちらもこの9項目に入っています。
重点指導項目に1つでも「否」があると、割合で決まった総合評価が1段階引き下げられます。2つとも落とせば、割合の面でも2点分下がったうえで、さらに1段階下がることになります。巡回指導の仕組みは巡回指導38項目と評価の決まり方をまとめた記事で詳しく扱っています。
Gマークでは「不認定」の側に置かれています
さらに重いのがGマーク(安全性優良事業所)です。巡回指導38項目のうち11項目はGマークの認定要件のチェックに使われますが、運行管理者・整備管理者の選任届は、どちらもこの11項目に含まれています。
点数で挽回できない側の項目です
Gマークの評価は100点満点ですが、認定要件のチェックはそれとは別枠です。1つでも満たしていなければ、合計点にかかわらず認定されません。選任届を出していないという理由だけで、ほかがどれだけ整っていても不認定になります。
しかも、認定要件に関わる項目は未改善や改善期限を越えての改善では認定されないとされています。Gマークの申請を考えるなら、選任届の提出状況を最初に確認してください。制度の全体像はGマークの申請条件と評価基準をまとめた記事で整理しています。
図2:選任届が確認される2つの場面(東京都トラック協会の資料およびGマーク申請案内をもとに当事務所が整理)
よくある質問
運行管理者の選任届は、いつまでに出せばよいですか。
貨物自動車運送事業法第16条第3項により「遅滞なく」とされています。整備管理者のように日数が定められてはいませんが、期限がないという意味ではなく、正当な理由なく引き延ばせば違反になります。なお、整備管理者は道路運送車両法第52条により、選任した日から15日以内です。
運行管理者は何人選任すればよいですか。
営業所ごとに、その営業所が運行を管理する事業用自動車の数を30で除して端数を切り捨てた数に1を加えた数以上です。29両までなら1人、30両から59両までなら2人になります。被けん引自動車は数に含めません。
補助者の選任届は必要ですか。
貨物では必要ありません。届出を定めている貨物自動車運送事業輸送安全規則第19条は運行管理者の氏名等の届出しか規定しておらず、近畿運輸局の貨物の様式にも補助者を記載する欄がありません。ただし旅客自動車運送事業の様式には運行管理者と補助者を選ぶ欄があり、扱いが異なります。
運行管理者と整備管理者の届出書は、同じ窓口に出せますか。
近畿運輸局の様式では、運行管理者の届出書は運輸支局長あて、整備管理者の届出は運輸局長あてと宛名が異なります。運行管理者の届出を受理する権限が運輸支局長まで委任されている(貨物自動車運送事業法施行規則第42条第2項第2号)のに対し、整備管理者は道路運送車両法第52条が地方運輸局長と定めているためです。なお地方運輸局長に提出すべき届出書は管轄の運輸支局長を経由して提出するとされていますので、書類を持っていく先が運輸支局であることは変わりません。取扱いは運輸局・運輸支局によって異なる場合がありますので、事前に管轄の窓口にご確認いただくのが確実です。
整備管理者の経歴書は、前の勤務先にも書いてもらう必要がありますか。
1か所の事業場での実務経験が2年に満たない場合は、業務を行った事業場ごとに証明が必要とされています。複数の会社で経験を積んだ方は、それぞれの事業主に証明をもらうことになりますので、時間に余裕をもって準備してください。
整備管理者研修の手帳があれば、整備管理者に選任できますか。
研修の種類によります。整備管理者に選任されるために必要なのは「整備管理者選任前研修」で、実務経験のルートで要件を満たす場合に修了している必要があります。すでに整備管理者である人が定期的に受ける「整備管理者研修(選任後研修・一般研修)」を修了しても、選任できるようにはなりません。手元の修了証が「選任前」のものかどうかを名称でご確認ください。なお、整備士資格で要件を満たす場合は選任前研修は不要です。
後任が見つからないときは、しばらく空席でもよいですか。
選任していない状態そのものが法令違反です。後任が決まるまでの猶予を認める規定は、当事務所が確認した範囲では見当たりません。運行管理者は資格者証、整備管理者は実務経験2年と選任前研修または整備士資格が必要で、いずれもすぐには用意できません。あらかじめ有資格者を複数そろえておくことが現実的な備えです。間に合わない見込みであれば、管轄の運輸支局にご相談ください。
選任届を出していないと、どうなりますか。
選任していない状態そのものが法令違反です。あわせて、巡回指導では運行管理者・整備管理者の選任と届出がどちらも重点指導項目とされており、「否」があると総合評価が1段階引き下げられます。Gマークでは認定要件のチェック項目に含まれるため、1つでも満たしていなければ合計点にかかわらず認定されません。
この記事で参照した根拠・出典を見る
1. 貨物自動車運送事業法(令和8年5月21日施行時点。e-Gov法令検索で確認)。第16条(運行管理者)、第18条(運行管理者資格者証の返納)、第20条(運行管理者等の義務)。令和6年法律第23号による改正で条番号が繰り上がっており、運行管理者は改正前の第18条から現行の第16条になっています。
2. 貨物自動車運送事業輸送安全規則。第18条(運行管理者等の選任・統括運行管理者・補助者)、第19条(運行管理者の氏名等の届出)。
3. 貨物自動車運送事業法施行規則。第42条(権限の委任)、第45条第2項(書類の提出)。
4. 道路運送車両法。第52条(整備管理者の選任届)。道路運送車両法施行規則第31条の4(整備管理者の資格要件)、第33条(整備管理者の選任届の記載事項)。
5. 近畿運輸局の様式・記入見本(2026年8月時点)
「貨物自動車運送事業運行管理者選任・変更・解任届出書」の様式および記入見本/「整備管理者(選任・変更・廃止)届出」第1号様式および記入見本/「整備管理者解職届」第2号様式/「整備管理者経歴書」第3号様式。参考として「旅客自動車運送事業運行管理者・補助者 選任(解任)届出書」の記入例も確認しています。
6. 東京都トラック協会「トラック運送事業を適正に行うには-業務管理の要点-」(2022年2月版)。巡回指導38項目と重点指導項目。
7. Gマーク申請案内(2025年度申請分)。認定要件のチェック項目。
注記:様式、記載事項、添付書類、提出先の運用は運輸局・運輸支局によって異なります。本記事は近畿運輸局が公表している様式をもとに整理したもので、他の運輸局で手続きされる場合は必ず管轄の様式をご確認ください。また様式は改定されることがあります。法令・告示・通達は著作権法13条により権利の目的とならない著作物にあたります。記載内容の正確性には努めていますが、本記事は一般的な情報提供であり、個別の判断を保証するものではありません。
選任届の作成・提出でお困りの方へ
そら行政書士事務所では、運行管理者・整備管理者の選任届の作成と提出、担当者交代にともなう変更・解任の手続き、増車にともなう選任必要数の確認と統括運行管理者の届出をお受けしています。許可後の手続き全般は運送業を営んでいる方向けのページをご覧ください。
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