緑ナンバーの名義貸しはなぜ発覚するのか|罰則・行政処分と2026年4月からの荷主責任

「使っていない緑ナンバーを貸してほしい」「知り合いの会社の名前で運べばいい」——運送業界では、いまも名義貸しの相談があります。しかし名義貸しは貨物自動車運送事業法で明確に禁止されており、貸した側は初回の違反でも30日間の事業停止処分を受けます。刑事罰もあり、実際に逮捕者も出ています。さらに2026年4月からは、違法な運送を依頼した荷主も処罰の対象になりました。この記事では、何が禁止されているのか、どう発覚するのか、どのような処分になるのかを、条文と国土交通省の公示で確認して整理します。

この記事の要点

  • 名義貸しの禁止は貨物自動車運送事業法第28条。法改正で条番号が繰り下がっており、「第27条」と書いている解説は古い
  • 条文が直接禁じているのは貸す側。借りた側は無許可営業(法第3条違反)として問われる。どちらも罰則は同じ
  • 行政処分は日車数の積み上げではなく、初回でも30日間の事業停止+違反点数30点。3年以内に繰り返せば許可取消。
  • 発覚の経路は8つ。巡回指導・社会保険・実運送体制管理簿・書面交付・事故報告・苦情・報告書との整合、そして行政の監査。検査を拒むこと自体が名義貸しと同じ30日間の事業停止の対象。
  • 2026年4月1日から、違法な白トラに運送を委託した荷主等も100万円以下の罰金の対象になった。
目次

名義貸しとは何か|法第28条が禁じていること

貨物自動車運送事業法第28条は、名義の利用等の禁止として次の2つを定めています。

条文が禁じている2つの行為

第1項(名義貸し)
一般貨物自動車運送事業者は、その名義を他人に一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業のため利用させてはならない。

第2項(事業の貸渡し等)
一般貨物自動車運送事業者は、事業の貸渡しその他いかなる方法をもってするかを問わず、一般貨物自動車運送事業又は特定貨物自動車運送事業を他人にその名において経営させてはならない。

第2項の「その他いかなる方法をもってするかを問わず」という書き方に注目してください。契約書の形式や呼び方を変えても、実態として他人に事業を経営させていれば該当します。「業務委託」「協力会社」といった名前を付ければ回避できる、というものではありません。

「第27条」と書いている記事にご注意ください

インターネット上の解説記事の多くが、名義貸しの禁止を「法第27条」と説明しています。これは古い条番号です。

令和6年法律第23号により、利用運送を行うときの委託先への書面交付義務が新たに第24条として設けられ、それ以降の条番号が1つずつ繰り下がりました。名義の利用等の禁止は第27条から第28条に、事業改善の命令は第26条から第27条に移動しています。

国土交通省が公表している行政処分の基準でも、「法第28条第1項 名義貸し」「法第28条第2項 事業の貸渡し等」と記載されています。条文を確認するときは、必ず現行の条番号でご覧ください。

条文が名指ししているのは「貸す側」です

第28条の主語は「一般貨物自動車運送事業」です。つまりこの条文が直接禁じているのは、許可を持っている事業者が名義を貸す行為です。

では借りた側はどうなるかというと、こちらは無許可で運送事業を経営したとして法第3条違反に問われます。根拠となる条文は違いますが、後述するとおり罰則の重さは同じです。

貸した側・借りた側の罰則

罰則は法第70条にまとめられています。同条は、次のいずれかに該当する場合、その違反行為をした者を3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金に処し、またはこれを併科すると定めています。

表1:法第70条が対象とする行為
行為誰が
第3条違反(無許可で一般貨物自動車運送事業を経営)借りた側
第28条第1項違反(名義を他人に利用させた)貸した側
第28条第2項違反(他人にその名において経営させた)貸した側
四・五第35条第6項で準用する第28条第1項・第2項違反特定貨物側

貸した側も借りた側も、同じ第70条で同じ重さの刑罰の対象です。「頼まれて貸しただけ」という言い分は通りません。

会社にも罰金が科されます

法第80条は両罰規定を置いています。法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して第70条などの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科するとされています。

社長個人が処罰されるだけでなく、会社にも罰金が科されるということです。

なお、令和7年6月1日施行の刑法改正により、懲役と禁錮は拘禁刑に一本化されました。条文集の古い版や解説記事では「3年以下の懲役」と表記されていることがあります。

行政処分は初回でも30日間の事業停止

刑事罰とは別に、運輸局による行政処分があります。名義貸しの処分は、他の違反とはまったく別の扱いになっています。

日車数ではなく、いきなり事業停止

通常の違反は「20日車」「40日車」といった処分日車数が定められており、これを積み上げて処分内容が決まります。ところが名義貸しについては、国土交通省の別表に日車数が書かれていません。局長通達によるものとされています。

その通達の本文を見ると、次のように定められています。

行政処分等の基準(5(1))

次の①から⑧までのいずれかに該当する場合において、違反営業所等に対して、該当する各号ごとに30日間の事業停止処分を行うものとする。

  • ⑥ 法第28条第1項の規定に違反して、名義を他人に利用させていた場合
  • ⑦ 法第28条第2項の規定に違反して、事業の貸渡し等を行っていた場合

同じ枠に入っているのは、運行管理者が全く不在、整備管理者が全く不在、全運転者に点呼を全く実施していない、全車両の定期点検整備を全く実施していない、検査の拒否や虚偽の陳述といった、事業の根幹に関わる違反だけです。

さらに違反点数30点が付きます

同じ通達の3(2)は、5(1)による事業停止処分を行う事業者には、各号ごとに30点の違反点数を付すと定めています。

違反点数は営業所に対して付され、管轄区域単位で3年間累計されます(一定の要件をすべて満たす場合は2年で消滅します)。累計が81点以上になると許可の取消処分です。名義貸し1件で30点ですから、他の違反と重なれば一気に取消圏内に入ります。

3年以内に繰り返せば許可取消です

行政処分等の基準6(1)④は、5(1)による事業停止処分を受けた事業者が、その処分を受けた日から3年以内に同一の違反をした場合は許可の取消処分を行うと定めています。

しかも、運行管理者不在などの違反については「同一営業所における違反の場合に限る」という限定が付いているのに対し、名義貸し・事業の貸渡しにはその限定がありません。別の営業所で繰り返した場合も対象になる書き方です。

表2:名義貸しをした場合の処分の流れ
段階内容
初回30日間の事業停止処分+違反点数30点
事業停止中対象営業所の全車両の使用停止。自動車検査証の返納と自動車登録番号標の領置
公表事業者名と処分内容が公表される
3年以内の再違反許可の取消処分
点数の累計が81点以上許可の取消処分

事業停止の間は、緑ナンバーを外して運輸局に預けることになります。30日間、1台も動かせません。荷主との取引がその間止まることを考えれば、事業の存続に関わる処分です。

実際に逮捕されています

名義貸しは「よくあること」「見つからない」と考えられがちですが、実際に刑事事件として摘発された例があります。以下はいずれも報道にもとづくもので、逮捕・容疑の段階のものを含みます。有罪が確定したことを示すものではありません。

兵庫県での事例(2025年)

報道によれば、県警は2025年8月、貨物自動車運送事業法違反の疑いで運送会社の社長を逮捕しました。許可を受けていない別の運送会社に対し、自社名義で登録した営業用の大型トラックで有償の運送をさせた疑いとされています。1台あたり月5万円の報酬を得ていたとも報じられました。

注目すべきは、名義を借りた側が先に逮捕されている点です。同年6月、名義を借りて運送を行ったとして、借りた側の関係者2名が同法違反の疑いで逮捕されたと報じられています。貸した側・借りた側の双方が捜査対象になることが、実例として示されています。

もうひとつ、行政処分から刑事事件に至った例もあります。報道によれば、かつて運送会社を経営していた人物が、名義貸しなどの違反が発覚して事業停止処分を受けた後、新たに設立した会社で許可を得ないまま運送を続け、無許可営業の疑いで逮捕されました。行政処分で終わらず、その後の対応次第で刑事事件に発展するという経過です。

なぜ発覚するのか|8つの経路

「口頭のやりとりだから分からない」と考える方がいますが、名義貸しは制度として発見される仕組みになっています。

巡回指導で確認される項目です

貨物自動車運送適正化事業実施機関(各都道府県トラック協会)は、会員・非会員を問わず全事業所を対象に、2年に1回を目標に巡回指導を行っています。概ね2週間前までに実施通知が送られます。

この巡回指導は38項目のチェックで構成されており、そのうち事業計画等の分野に次の2項目があります。

巡回指導38項目のうち、名義貸しに関わるもの

  • 「名義貸し、事業の貸渡し等はないか」
  • 「自家用貨物自動車の違法な営業類似行為(白トラの利用等)はないか」

巡回指導の評価はA〜Eの5段階です(Aは適正な項目が90%以上、Eは60%未満)。なお、この2項目は9つある重点指導項目には含まれていません。重点指導項目が「否」とされると1段階下の評価になりますが、その扱いは運行管理者の選任や点呼など別の項目に対するものです。この2項目は、事業計画等の区分の中の1項目として評価に反映されます。

確認される帳票が具体的に決まっています

この項目で確認される帳票は、事業者向けの資料に明記されています。

表3:名義貸しの項目で確認される主な帳票
帳票何が見えるか
総勘定元帳お金の流れ。運賃収入と支出の実態
固定資産台帳車両を実際に誰が資産として持っているか
経費明細書燃料費・修繕費などを誰が負担しているか
リース契約書車両の契約名義と実際の使用者
保険関係加入台帳ドライバーが社会保険に加入しているか
現金出納帳名義料などの不明な入出金がないか

お金の流れと、人の雇用実態を見れば分かる、という構造です。名義だけを貸して実態が伴わない場合、これらの帳票のどこかに必ず不整合が出ます。運賃が入金されていない、燃料費を負担していない、といった形です。

社会保険の加入状況も確認されます

巡回指導38項目には、法定福利の分野として次の2つが含まれています。

  • 労災保険・雇用保険に加入しているか
  • 健康保険・厚生年金保険に加入しているか

確認される帳票は、労災・雇用保険加入台帳、健保・厚生年金加入台帳、保険料納入告知書(領収済通知書等)、そして賃金(給与)台帳です。

名義貸しの典型的な形は、名義を借りた側が自分でドライバーを集めて運行し、名義を貸した側は関与しないというものです。この場合、ドライバーは名義を貸した会社の給与台帳にも社会保険にも載っていません。車両は自社名義なのに、その車両を運転している人が従業員でない——ここに不整合が出ます。

実運送体制管理簿で、下請け構造が見えるようになりました

2025年4月から、一般貨物自動車運送事業者には実運送体制管理簿の作成義務が課されています(法第24条の5)。真荷主から引き受けた運送について他の事業者の運送を利用したときは、運送ごとに次の事項を記載した管理簿を作成し、運送完了の日から1年間、営業所に備え置かなければなりません。

実運送体制管理簿に記載する事項

  • 実運送を行う貨物自動車運送事業者の商号又は名称
  • その事業者が実運送を行う貨物の内容及び区間
  • その事業者の請負階層(真荷主との運送契約の後に締結された運送契約の数)

さらに法第24条の5第6項により、真荷主は元請事業者に対し、業務取扱時間内はいつでも、この管理簿の閲覧または謄写を請求できます。

つまり、実際に誰が運んだのかが記録として残り、荷主から見えるようになりました。名義だけの事業者を挟んで実態は別の者が運んでいる、という構造は、管理簿の記載と実態の食い違いとして表れます。

2026年4月からは、この義務が元請となる貨物利用運送事業者にも広がりました。

契約が書面で残るようになりました

同じく2025年4月から、運送契約の締結時には書面の交付が義務づけられています。

  • 真荷主と一般貨物自動車運送事業者が運送契約を締結するときは、相互に書面を交付(法第12条)
  • 他の事業者の運送を利用するときは、委託先に書面を交付(法第24条第2項)

記載事項には、運送の役務の内容とその対価、附帯業務の内容と対価、契約の当事者の氏名・名称及び住所などが含まれ、交付した書面の写しは1年間保存しなければなりません。

巡回指導でも、この書面交付が確認対象になります。「口約束だから記録が残らない」という前提が、制度として成り立たなくなりました。

事故が起きたとき

事業用自動車が転覆・火災を起こした場合や、死者・重傷者を生じた場合などは、自動車事故報告規則にもとづく事故報告書の提出義務があります(法第23条)。原則として事故のあった日から30日以内です。

報告書には運転者の氏名を記載します。事故の記録も3年間の保存義務があり、記載事項には乗務員等の氏名が含まれます。

名義貸しの状態で事故を起こすと、ここで破綻します。報告書に記載する運転者が自社の運転者等台帳に載っていない、点呼記録がない、社会保険に入っていない——といった形で、雇用実態がないことが明らかになります。

保険が支払われない可能性もあります

任意保険は、契約時に申告した使用実態を前提としています。名義貸しの状態は申告内容と食い違うため、保険金の支払いをめぐって争いになる可能性があります。具体的な取扱いは契約内容によりますので、保険会社にご確認ください。

事故を起こしたのが実質的に別事業者のドライバーであっても、車両の名義は貸した側です。賠償責任の所在が不明確になることも、この行為が禁じられている理由のひとつです。

苦情や通報から調査が始まることもあります

適正化事業実施機関は、貨物自動車運送事業者や荷主からの苦情を処理する業務を担っています(法第39条第4号)。苦情の申出があったときは、事情を調査し、対象となった事業者に苦情の内容を通知してその処理を求めます。

調査を拒むこと自体が処分の対象です

法第39条の2第2項により、実施機関は苦情の解決に必要があるときは、対象事業者に文書若しくは口頭による説明または資料の提出を求めることができます。同条第3項は、事業者は正当な理由がないのに、これを拒んではならないと定めています。

法第39条の3も、適正化事業の実施に必要な限度で同様の求めができるとしています。

これらの求めを拒んだ場合の行政処分は、初違反で60日車、再違反で120日車と定められています。調査に応じないという選択は、それ自体が重い処分につながります。

また、適正化事業実施機関は街頭パトロールも行っており、白トラの防止に向けた啓発活動を実施しています。2026年4月からは、各都道府県トラック協会のGメン調査員が、荷主等が違法な白トラに関係していると疑うに足りる事実を把握したときの取扱いも定められました。

国土交通省は、荷主等の違反原因行為についての通報窓口も設けています。取引先や元従業員からの情報提供が調査のきっかけになることは、十分にありえます。

毎年の報告書との突き合わせ

一般貨物自動車運送事業者は、毎事業年度の経過後100日以内に事業報告書を、毎年7月10日までに事業実績報告書を提出する義務があります。

事業実績報告書には、車両数・延実働車両数・走行キロ・輸送トン数などを記載します。名義だけを貸して自社では運行していない場合、車両数に対して実績が不自然に少なくなります。逆に、名義を借りた側の運行を自社実績として計上すれば、運転者数や人件費との整合が取れなくなります。

巡回指導でも、事業報告書と事業実績報告書を提出しているかが確認項目に入っています(本社巡回の場合)。報告書の書き方は事業報告書の解説記事にまとめています。

行政の監査・立入検査

ここまでの経路のどこかで疑いが生じた場合、次に来るのが監査です。

法第60条第4項は、国土交通大臣はこの法律の施行に必要な限度において、その職員に貨物自動車運送事業者の事務所その他の事業場に立ち入り、業務若しくは経理の状況若しくは事業の用に供する施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができると定めています。

巡回指導が適正化事業実施機関による指導であるのに対し、こちらは運輸局・運輸支局の職員が行う行政上の検査です。経理の状況まで対象に含まれます。

検査を拒むと、名義貸しと同じ重さの処分になります

法第60条第4項の検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述を行った場合は、行政処分等の基準5(1)⑧に該当します。

この5(1)は、該当する各号ごとに30日間の事業停止処分を行うと定めた規定です。名義貸し(⑥)・事業の貸渡し(⑦)と同じ枠に、検査拒否・虚偽の陳述(⑧)が並んでいます。違反点数30点も同様に付されます。

さらに法第75条第13号により、100万円以下の罰金の対象でもあります。

「監査で答えなければやり過ごせる」という発想は成り立ちません。黙秘や虚偽の陳述それ自体が、名義貸しと同じ重さの処分を招きます。

なお、先に触れた兵庫県での事例では、監査をすり抜けるために書類を改ざんしていたのではないかとも報じられています。虚偽の書類を用意して取り繕う行為は、事態をさらに悪化させる方向にしか働きません。

発覚の経路をまとめると

  1. 巡回指導(2年に1回・帳票の突き合わせ)
  2. 社会保険・労働保険の加入状況
  3. 実運送体制管理簿(2025年4月〜。真荷主が閲覧請求できる)
  4. 運送契約の書面交付と写しの保存
  5. 事故報告
  6. 苦情処理・通報・街頭パトロール
  7. 事業報告書・事業実績報告書との整合
  8. 行政の監査・立入検査

これらは互いに独立しておらず、どこか1つで不整合が出れば、他の資料と突き合わせられます。「バレなければいい」という前提が成り立ちにくい構造になっている、というのが実際のところです。

巡回指導の結果、法令を遵守していない等の問題があった場合には、行政による監査が実施されることがあります。巡回指導は入口であって、そこで終わりではありません。

2026年4月から、荷主も処罰の対象に

ここが、いま最も大きく変わった点です。

令和7年6月11日に公布されたトラック適正化二法(貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律=令和7年法律第60号、および貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律=令和7年法律第61号)により、令和8年(2026年)4月1日から、違法な白トラを利用した荷主等も処罰の対象となりました。

荷主等の罰則は100万円以下の罰金

許可の取得や届出をすることなく有償で貨物を運送する、いわゆる白トラ行為について、白トラを利用した荷主等も新たに処罰の対象となります。国土交通省の資料では、白トラの「利用」を禁止し、100万円以下の罰金とされています。

あわせて、荷主等が違法な白トラ事業者に運送を委託している等の疑いがある場合には、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象となります。国土交通大臣から要請が行われ、従わない場合には勧告と社名の公表に進む仕組みです。

従来、白トラや名義貸しで処罰されるのは運送する側だけでした。今年4月からは、依頼した側も責任を問われます。「知らなかった」では済まない環境になった、ということです。

委託次数の制限も始まっています

同じく令和8年4月1日から、貨物自動車運送事業者・貨物利用運送事業者に対して、真荷主から引き受けた貨物の運送について他の事業者の運送を利用するときは、委託段階を2次までに制限する努力義務が課されました。

多重下請けの奥で名義貸しや白トラが紛れ込む構造そのものに、規制が入り始めています。

運送を依頼する側が確認すべきこと

  • 委託先が一般貨物自動車運送事業の許可を受けているか(許可書の写しで確認できます)
  • 実際に運んでいる車両が緑ナンバー
  • 再委託が何段階になっているか

なお、自家用自動車による運送であっても、自己の生業と密接不可分でその業務の中に包摂され、独立性を有しないもの(自らの販売・製造・修理等のために行う物品の運送)については、許可が不要となる場合があります。判断に迷う場合は運輸支局にご確認ください。

「協力会社」「庸車」との線引き

運送業界では、他社に運送を依頼すること自体はごく普通に行われています。問題は、それが適法な利用運送なのか、名義貸しなのかです。

表4:適法な形と、名義貸しになる形
項目適法な利用運送名義貸しの疑い
相手方の許可相手も許可を持っている相手が無許可
使用する車両相手の緑ナンバー自社名義の車両を相手に使わせる
運行の指示相手の運行管理者が行う実態がない、または名義側が関与しない
ドライバーの雇用相手が雇用し給与を支払う雇用関係が証明できない
お金の流れ運賃として授受車両1台あたり月額など、名義料的な性質
点呼・記録相手の営業所で実施・保存行われていない

判断の軸になるのは、誰が運行を支配し、誰が事業としての利益と責任を負っているかです。契約書に「業務委託」と書いてあるかどうかではありません。

「1台だけ貸してほしい」が最も危険です

「うちは車が余っている」「相手は知り合いだから」という形で始まるケースが少なくありません。しかし条文は台数や期間で例外を設けていません。1台・1回でも第28条違反です。

報酬を得ていれば、名義料としての性質がお金の流れに残ります。無償であっても、第28条第2項は「その他いかなる方法をもってするかを問わず」と定めており、対象から外れるわけではありません。

自分で許可を取って事業を始めたい場合の要件は、許可要件を人・物・資金・法令遵守に分けて解説した記事にまとめています。1台から始めたい場合は、届出で始められる貨物軽自動車運送事業(黒ナンバー)という選択肢もあります。制度全体の位置づけは運送事業5つの区分を図で整理した記事をご覧ください。

よくある質問

名義貸しの禁止は法第27条ではないのですか。

現行法では第28条です。令和6年法律第23号により新たな第24条(利用運送を行うときの委託先への書面交付)が設けられ、それ以降の条番号が1つずつ繰り下がりました。名義の利用等の禁止は第27条から第28条に移動しています。国土交通省の行政処分の基準でも「法第28条第1項 名義貸し」と記載されています。第27条と説明している解説記事は、改正前の条番号のままです。

名義を借りた側も処罰されますか。

されます。借りた側は無許可で運送事業を経営したとして法第3条違反に問われ、貸した側と同じ法第70条の対象になります。法定刑は3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科です。実際に、名義を借りた側が先に逮捕された事例も報じられています。

1台だけ、1回だけでも違反になりますか。

なります。条文は台数や回数による例外を設けていません。第28条第2項は「事業の貸渡しその他いかなる方法をもってするかを問わず」と定めており、形式を変えても実態として他人に事業を経営させていれば該当します。

名義貸しの行政処分はどの程度ですか。

行政処分等の基準では、法第28条第1項または第2項に違反した場合、初回でも30日間の事業停止処分を行うとされています。あわせて違反点数30点が付されます。さらに、この処分を受けた日から3年以内に同一の違反をした場合は許可の取消処分となります。違反点数の累計が81点以上になった場合も許可取消です。

名義貸しはどうやって発覚するのですか。

経路は複数あります。巡回指導の項目に「名義貸し、事業の貸渡し等はないか」があり、総勘定元帳・固定資産台帳・経費明細書・リース契約書・保険関係加入台帳・現金出納帳が確認されます。社会保険・労働保険の加入状況も確認されます。さらに2025年4月から実運送体制管理簿の作成義務があり、真荷主は元請事業者に対しその閲覧・謄写を請求できます。運送契約の書面交付とその写しの1年間保存も義務づけられました。このほか、事故報告、適正化事業実施機関への苦情や通報、毎年の事業報告書・事業実績報告書との整合からも実態が見えます。最終的には運輸局の監査・立入検査があり、法第60条第4項の検査を拒んだり虚偽の陳述をした場合は、名義貸しと同じく30日間の事業停止処分の対象です。

運送を依頼する荷主側にも責任がありますか。

2026年4月1日からあります。トラック適正化二法により、許可の取得や届出をせずに有償で貨物を運送する、いわゆる白トラを利用した荷主等も新たに処罰の対象となり、100万円以下の罰金とされています。あわせて、疑いがある場合はトラック・物流Gメンによる是正指導の対象となり、要請に従わない場合は勧告と社名の公表に進みます。

参照した根拠・出典を見る

本記事は、2026年8月1日に次の一次情報で確認した内容にもとづいています。制度や運用は改正されることがありますので、実際の判断にあたっては最新の情報をご確認ください。

  • 貨物自動車運送事業法 第3条、第28条、第33条、第70条、第80条(国土交通省「一般貨物自動車運送事業等に係る法令試験条文集」令和8年6月1日更新)
  • 国土交通省「貨物自動車運送事業者に対し行政処分等を行うべき違反行為及び日車数等について 別表」(令和7年2月改正、4月施行)
  • 関東運輸局長公示「貨物自動車運送事業者に対する行政処分等の基準について」(令和7年3月11日一部改正、令和7年4月1日施行)
  • 国土交通省「トラック適正化二法について」
  • 近畿運輸局「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律/貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律 概要」
  • 貨物自動車運送事業法 第12条、第23条、第24条、第24条の5、第39条、第39条の2、第39条の3、第60条第4項、第75条
  • 貨物自動車運送事業報告規則 第2条/自動車事故報告規則
  • 一般社団法人東京都トラック協会 適正化事業部「トラック運送事業を適正に行うには-業務管理の要点-」

摘発事例は報道機関の報道にもとづくものであり、いずれも逮捕・容疑の段階を含みます。有罪判決が確定したことを示すものではありません。個別の企業名・個人名は記載していません。

本記事は制度の一般的な説明であり、個別の事案についての判断を示すものではありません。刑事事件に関するご相談は弁護士にお願いいたします。

名義を借りるのではなく、許可を取るという選択を

そら行政書士事務所は、大阪府箕面市を拠点に一般貨物自動車運送事業の許可申請をお手伝いしています。名義を借りて事業を続けるリスクは、事業停止や許可取消にとどまりません。正規の許可取得についてご相談ください。

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この記事を書いた人

行政書士 田丸浩史(登録番号 26261852)/そら行政書士事務所
〒562-0014 大阪府箕面市萱野2-6-8-203
TEL 070-8556-0921/Email tamaru@sora-gyosei.com

大阪府箕面市を拠点に、一般貨物自動車運送事業の許可申請と役員法令試験対策に取り組んでいます。法令試験対策は全国に対応しています。

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この記事を書いた人

田丸 浩史のアバター 田丸 浩史 行政書士

大阪府箕面市を拠点とする行政書士。運送業を専門とし、新規許可から各種変更届出・法令試験対策まで大阪府全域に対応。

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