運送業の法定帳票一覧|17の帳票の作成者・保存期間・根拠法令を行政書士が整理

運送業で作成・保存が義務づけられている帳票は、点呼記録簿や運転日報のように毎日書くものから、事業報告書のように年に1回のもの、選任届のように事由が生じたときだけ出すものまで幅があります。保存期間も3年・1年・定めのないものが混在していて、どれがどれだったかは意外と思い出せません。この記事では、法令上の義務がある帳票を一覧にして、作成者・保存期間・根拠法令を1枚で見渡せる形に整理しました。巡回指導の通知が届いたときの準備リストとしても、日ごろの確認用としても使える形を目指しています。

この記事の要点(先に結論)

  • 法令により作成・保存が義務づけられている帳票は17あります。作成者は運行管理者・運転者・整備管理者・事業者の4者に分かれます。
  • 保存期間は3年が4つ、1年が5つ、定めのないものが8つです。長さより、どれがどの区分かを覚えておくほうが実務では役に立ちます。
  • 保存期間の定めがないものでも、控えは巡回指導で確認されます。提出して終わりではありません。
  • 運転者台帳の3年は、作成時からではなく運転者を解任した以降からです。起算点が他と違います。
  • 巡回指導で見られるのは、そもそも法令上の義務がある帳票です。日ごろ整っていれば、特別な準備はほとんど要りません。
目次

この一覧の使い方

巡回指導は、各都道府県のトラック協会(適正化事業実施機関)が2年に1回を目標に、会員・非会員を問わずすべての事業所を対象に行う指導です。概ね2週間前に実施通知が届き、そこに自主点検表が同封されます。

そのときに見られる帳票は、巡回指導のために新しく作るものではありません。もともと法令上、作成と保存が義務づけられているものです。裏を返せば、日ごろからこれらが整っていれば、通知が来てから慌てて用意するものはほとんどありません。

帳票が整っていないことは、運輸支局の監査では行政処分の対象になります。しかも、記録が残っていない場合よりも、あとから書き換えた場合のほうが重く扱われます。慌てて取り繕うより、日ごろ書けている状態にしておくほうが確実です。

この記事が扱う範囲

ここでは帳票そのものを扱います。巡回指導という制度の中身、つまり7区分38項目の全文、評価がA〜Eのどれになるかの計算方法、重点指導項目9つ、指摘を受けたあとの改善報告の期限、評価が低いときに実務で何が起きるかは、巡回指導38項目|トラック運送業の評価区分と準備で解説しています。

法令により作成・保存が義務づけられている帳票

条番号は令和6年改正で動いています

下の表の根拠法令は、e-Gov法令検索で確認した現行条文(令和8年5月21日施行時点)の条番号に直してあります。2022年2月版の資料に記載された条番号とは食い違いますのでご注意ください。動いたのは次のとおりです。

  • 輸送の安全(点呼・日報・記録類の根拠):旧第17条 → 第15条
  • 運行管理者の選任・届出:旧第18条 → 第16条
  • 事故の報告:旧第24条 → 第23条
  • 名義の利用等の禁止:旧第27条 → 第28条

一方で、事業計画の変更(第9条)と報告の徴収(第60条)は動いていません。義務の内容そのものにも変更はありません。

なお、安全規則・施行規則などの省令の条番号については、2022年2月版の資料の記載のままとしています。省令についても改正により条番号が変わることがありますので、書面等で引用される場合は最新の条文をご確認ください。

表1:法令により作成・保存が義務づけられている帳票
帳票作成者保存期間根拠法令
点呼記録簿運行管理者1年法第15条/安全規則第7条
乗務記録(運転日報)運転者1年法第15条/安全規則第8条
運行記録計による記録
(車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上の車両に装着義務)
運転者1年法第15条/安全規則第9条
運転者台帳(記入及び転記)運行管理者3年
(運転者解任以降)
法第15条/安全規則第9条の5
日常点検運転者法第15条/安全規則第3条の2/車両法第47条の2
運行指示書運行管理者1年法第15条/安全規則第9条の3
乗務割運行管理者法第15条/安全規則第3条第4項・第20条第3項
指導教育記録簿運行管理者3年法第15条/安全規則第10条第1項/国土交通省告示第1366号
点検整備記録簿(3か月毎、12か月点検)
※写しを営業所に保管
自動車の使用者
(整備管理者等)
1年法第15条/安全規則第3条の2/車両法第49条
事故記録運行管理者3年法第15条/安全規則第9条の2
事業報告書事業者法第60条/報告規則第2条
事業実績報告書事業者法第60条/報告規則第3条
36協定事業者3年
(対象期間内は掲示等)
労働基準法第36条・第109条
事業計画の変更
(認可申請・届出事項)
事業者法第9条/施行規則第5条・第6条・第7条
自動車事故報告書事業者法第23条/事故報告規則第3条
運行管理者選任届出書事業者法第16条/安全規則第19条
整備管理者選任届出書
(変更・廃止のときも届出が必要)
事業者法第15条/安全規則第3条の2/車両法第52条/車両法施行規則第33条

原典から2か所を補っています

1つめは事業報告書と事業実績報告書を分けた点です。原典の表は「事業報告書・事業実績報告書」を1行にまとめて報告規則第2条を挙げたうえで、別の行に「事業実績報告書」と報告規則第3条を挙げています。報告規則第2条は事業報告書を、第3条は事業実績報告書を定めた条文で、提出期限も決算後100日以内と毎年7月10日までで異なるため、当事務所で2行に分けました。

2つめは整備管理者選任届出書の「施行規則第33条」です。原典では「施行規則」とだけ表記されていましたが、貨物自動車運送事業法施行規則第33条は貨物軽自動車運送事業の経営の届出を定めた条文で整備管理者とは無関係のため、道路運送車両法施行規則第33条(整備管理者の選任届の記載事項)と補いました。

保存期間で見る

同じ一覧を保存期間で並べ替えると、覚えるべきことがはっきりします。長い順に3年・1年・定めのないものの3つしかありません。

図1 保存期間で分けた17の帳票 3年 4つ 運転者台帳(運転者の解任以降) 指導教育記録簿 事故記録 36協定(対象期間内は掲示等) 1年 5つ 点呼記録簿 乗務記録(運転日報) 運行記録計による記録 運行指示書 点検整備記録簿 定めなし 8つ 日常点検/乗務割 事業報告書/事業実績報告書 事業計画の変更/自動車事故報告書 運行管理者・整備管理者の選任届出書
表2:保存期間別の内訳
保存期間件数帳票
3年4運転者台帳(運転者の解任以降)/指導教育記録簿/事故記録/36協定(対象期間内は掲示等)
1年5点呼記録簿/乗務記録(運転日報)/運行記録計による記録/運行指示書/点検整備記録簿
定めなし8日常点検/乗務割/事業報告書/事業実績報告書/事業計画の変更/自動車事故報告書/運行管理者選任届出書/整備管理者選任届出書

「定めなし」は「捨ててよい」ではありません

保存期間の欄が空欄になっているものには、性質の違う2種類が混ざっています。提出・届出をするもの(事業報告書、事業実績報告書、事業計画の変更、自動車事故報告書、選任届出書)と、記録の保存期間が表に挙げられていないもの(日常点検、乗務割)です。

前者について、巡回指導のチェックリストは「自動車事故報告書(控)」「事業報告書(控)」「事業実績報告書(控)」「運行管理者選任・解任届(控)」「整備管理者選任・解任届(控)」と、いずれも控えを挙げています。提出して終わりではなく、受付印のある控えが確認されるということです。保存期間の定めがないことと、手元に置かなくてよいことは別です。

運転者台帳だけ、起算点が違います

3年の4つのうち、運転者台帳は作成した時からではなく、その運転者を解任した以降から3年です。在籍中はずっと保存し、辞めてからさらに3年ということになります。記載事項と写真の扱いは運送業の運転者台帳の書き方|記載事項10項目・写真・保存期間を行政書士が整理で解説しています。

誰が作る帳票か

17の帳票は、作成者が4者に分かれています。誰が作るかで、備える場所も、整えるときに動かす人も変わります。

図2 誰が作る帳票か 運行管理者 6つ 点呼記録簿/運転者台帳/運行指示書 乗務割/指導教育記録簿/事故記録 運転者 3つ 乗務記録(運転日報)/運行記録計/日常点検 自動車の使用者(整備管理者等) 1つ 点検整備記録簿(写しを営業所に保管) 事業者 7つ 事業報告書/事業実績報告書/36協定 事業計画の変更/自動車事故報告書/選任届出書2種

作成者が分かれていることの意味

運行管理者が作る6つは、点呼から事故対応まで日々の運行の記録です。運転者が作る3つは車と運行の実態そのもの。事業者が作る7つは官公署へ出すもので、期限が決まっているか、事由が生じたときに動くものです。

運行管理者を補助者に助けてもらえる範囲、整備管理者が不在になったときの扱いは、それぞれ運行管理者の補助者とは|選任できる人・点呼の3分の1ルール・届出の要否を行政書士が解説整備管理者がいない・辞めるとき|外部委託の可否と選任までの段取りを行政書士が解説で整理しています。

巡回指導の区分別チェックリスト

巡回指導の資料に挙げられている「確認する主な帳票類」を、区分ごとのチェックリストにまとめました。印刷して、そろえた順に潰していく使い方を想定しています。事業形態によって不要なものもありますので、該当しない欄は飛ばしてください。

表1の17は法令上の作成・保存義務があるものですが、こちらはそれに加えて、資格者証や台帳など巡回指導の場で示すことになる書類も含みます。数が多いのはそのためです。

Ⅰ 事業計画等

  • □ 登記簿謄本等
  • □ 経営許可申請書
  • □ 役員変更届出書
  • □ 事業計画変更の事前届出書・事後届出書・認可申請書
  • □ 総勘定元帳
  • □ 固定資産台帳
  • □ 経費明細書
  • □ リース契約書
  • □ 保険関係加入台帳
  • □ 現金出納帳

Ⅱ 帳票類の整備、報告等

  • □ 事故記録簿
  • □ 自動車事故報告書(控)
  • □ 運転者台帳
  • □ 車両台帳(自動車検査証の写し等)
  • □ 事業報告書(控)
  • □ 事業実績報告書(控)

Ⅲ 運行管理等

  • □ 運行管理規程
  • □ 運行管理者選任・解任届(控)
  • □ 運行管理者資格者証
  • □ 運行管理者講習手帳
  • □ 乗務記録(運転日報)
  • □ 運行指示書
  • □ 乗務基準(特別積合せ貨物運送を行う場合)
  • □ 運行計画及び勤務割当表
  • □ 運行記録計による記録(タコチャート、グラフ)
  • □ 乗務実績一覧表(拘束時間管理表)
  • □ 点呼記録簿・点呼執行要領
  • □ 運転者への指導教育計画表・同記録簿
  • □ 適性診断受診結果表
  • □ 運転記録証明書
  • □ 無事故無違反証明書

Ⅳ 車両管理等

  • □ 整備(車両)管理規程
  • □ 整備管理者選任・解任届(控)
  • □ 整備管理者資格者証
  • □ 整備管理者研修手帳
  • □ 日常点検基準
  • □ 日常点検表
  • □ 定期点検基準
  • □ 定期点検整備実施計画表
  • □ 点検整備記録簿(12か月、3か月)

Ⅴ 労基法等

  • □ 就業規則
  • □ 36協定
  • □ 出勤簿
  • □ 健康診断結果

Ⅵ 法定福利

  • □ 労災・雇用保険加入台帳
  • □ 健保・厚生年金加入台帳
  • □ 賃金(給与)台帳
  • □ 保険料納入告知書(領収済通知書等)

Ⅶ 運輸安全マネジメント(一定の規模以上の事業者の本社巡回に限る)

  • □ 安全管理規程
  • □ 安全管理規程設定(変更)届出書
  • □ 安全統括管理者選任(解任)届出書
  • □ 運輸安全マネジメントに関する公表資料

共通

  • □ 自主点検表(巡回の通知に同封されます。記入したうえで当日に備えます)

1か所に集めておくと進行が速くなります

資料には、帳票の種類が重複しないように記載しているが、複数の項目にわたって関わりのある帳票はその都度必要になることもある、と注記されています。そのため、これらの帳票類を1か所に揃えておくとスムーズに進行するとされています。実際に求められる帳票は都道府県によって差がありますので、同封される自主点検表もあわせてご確認ください。

帳票のほかに、当日までに確かめておくこと

帳票がそろっていても、書類の中身と事業の実態がずれていると指摘の対象になります。先に洗い出しておくべきものを挙げます。

実態と手続のずれを先に洗い出します

  • □ 自主点検表を先に自分で記入し、「否」になりそうな項目を洗い出した
  • □ 上のチェックリストの帳票を1か所に集めた
  • □ 事業報告書・事業実績報告書の受付印のある控えを年度別に用意した
  • □ 営業所・車庫・休憩睡眠施設の現況が事業計画と一致しているか確認した
  • □ 車両数の増減について、届出または認可の手続が済んでいるか確認した
  • □ 運行管理者・整備管理者の選任届の控えと資格者証・講習手帳を用意した
  • □ 労災・雇用保険、健康保険・厚生年金の加入状況を確認した

営業所や車庫を移した、車両を増やしたといった変更が手続を伴うかどうかは、一般貨物自動車運送事業の事業計画変更|認可・届出の区分と様式・記入例を行政書士が整理【2026年版】で区分ごとに整理しています。

そのうえで、指摘を受けたときの改善報告の期限や、評価が低いと実務で何が起きるかは、第1章で挙げた巡回指導の記事にまとめています。

よくある質問

Q. 運送業で作成・保存が義務づけられている帳票はいくつありますか。

A. 17です。東京都トラック協会の資料が挙げている一覧をもとに、事業報告書と事業実績報告書を根拠条文の違いから2行に分けて整理しました。作成者は運行管理者6つ、運転者3つ、自動車の使用者1つ、事業者7つに分かれます。

Q. 保存期間がいちばん長い帳票はどれですか。

A. 3年のものが4つあります。運転者台帳、指導教育記録簿、事故記録、36協定です。1年のものが5つ、保存期間の定めが表に挙げられていないものが8つです。

Q. 運転者台帳の3年は、いつから数えますか。

A. 作成した時からではなく、その運転者を解任した以降から3年です。在籍中は保存を続け、辞めたあとにさらに3年ということになります。

Q. 保存期間の定めがない帳票は、提出したら手元に残さなくてよいですか。

A. 控えは残してください。巡回指導のチェックリストは、自動車事故報告書、事業報告書、事業実績報告書、運行管理者選任・解任届、整備管理者選任・解任届について、いずれも控えを確認する帳票として挙げています。保存期間の定めがないことと、手元に置かなくてよいことは別です。

Q. 帳票は電子データで保存してもよいですか。

A. 帳票によります。点呼記録簿については、解釈通達が記録と保存の方法を書面によることも電磁的方法によることも差し支えないとしています。すべての帳票に同じ扱いが認められているわけではありませんので、個別に確認してください。

Q. 巡回指導は帳票以外に何を見られますか。

A. 指導項目は7区分38項目で、帳票類の整備はそのうちの1区分です。事業計画と実態の一致、運行管理、車両管理、労働基準法関係、社会保険の加入、運輸安全マネジメントが対象になります。

Q. 帳票がそろっていないと、どうなりますか。

A. 該当する項目が「否」となり、総合評価に反映されます。重点指導項目に該当する項目が1つでも「否」の場合は、評価が1段階下がります。

Q. 巡回指導の通知はいつ届きますか。

A. 概ね2週間前までに実施通知が送付されます。自主点検表が同封されますので、先に自分で記入して「否」になりそうな項目を洗い出しておくと、当日の進行が速くなります。

参照した資料と基準日

表1の帳票・作成者・保存期間は、東京都トラック協会「トラック運送事業を適正に行うには-業務管理の要点-」(2022年2月版)9ページによります。区分別チェックリストは同資料6〜7ページの「確認する主な帳票類」をもとに作成しました。

凡例は、法=貨物自動車運送事業法、施行規則=貨物自動車運送事業法施行規則、安全規則=貨物自動車運送事業輸送安全規則、車両法=道路運送車両法、車両法施行規則=道路運送車両法施行規則、報告規則=貨物自動車運送事業報告規則、事故報告規則=自動車事故報告規則です。

法の条番号は、e-Gov法令検索で確認した現行条文(令和8年5月21日施行時点)に直しています。省令の条番号は資料の記載のままです。

当事務所で補った2か所(事業報告書と事業実績報告書の分割、整備管理者選任届出書の車両法施行規則第33条)については、本文の該当箇所に理由を記載しています。

実際に確認される帳票は都道府県によって差があります。巡回指導の通知に同封される自主点検表を、あわせてご確認ください。

帳票の整備でお困りの方へ

そら行政書士事務所では、法定帳票の整備、巡回指導に向けた書類の確認、規程の見直しと届出をお受けしています。許可を取ったあとの手続き全般は運送業を経営されている方へをご覧ください。

ご相談はお問い合わせフォームから承っています。

この記事を書いた人

行政書士 田丸浩史(登録番号 26261852)/そら行政書士事務所
〒562-0014 大阪府箕面市萱野2-6-8-203
TEL 070-8556-0921/Email tamaru@sora-gyosei.com

大阪府箕面市を拠点に、一般貨物自動車運送事業の許可申請と、変更届・認可申請・各種報告書といった許可後の手続、役員法令試験対策に取り組んでいます。事業報告書・事業実績報告書の作成と、役員法令試験対策は全国に対応しています。

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この記事を書いた人

田丸 浩史のアバター 田丸 浩史 行政書士

大阪府箕面市を拠点とする行政書士。運送業を専門とし、新規許可から各種変更届出・法令試験対策まで大阪府全域に対応。

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